(完)恋なんてのは忌まわしいだけだが必要だよ

川なみな

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「 1ー9 」誰かの代わり

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代表は、お仕事があるので退席。残ったのは、御前様と宿主先生と薫の3人。八畳はある広い部屋に猫足の食卓と椅子。

食卓の上には、3人ぶんのセッティング。この3人で食事しなくてはいけないらしい。緊張して座る薫。

バタンー!(椅子の倒れる音)

慌てて椅子を起こす少年。恥ずかしさに赤面。その後が上手くいくわけが無い。


ポトンー(フォークが落ちる。

スコーン(飛んで行くキャロット)

カコン、カラカラ(転がっていくグラス)


給仕する使用人が笑いをこらえているよなディナーでございました。






疲労困憊状態の薫はティールームのソファーで丸くなる。散々な食事だった。食べた気がしない。

御前様は、とっても不機嫌。真向かいの椅子で苛立ちを押さえている。無表情な宿主に御前様は言った。


「俺は、こんな茶番に付き合ってなんかられないよ。早く済ませよーぜ。」


え、済ませるって何をかな?デザートでもあるの。


「そうですね。お二人は親しくなられたようですし、初めましょうか。」


え、親しくなった?全然、仲良くなんかなってませんけど。

立ち上がった宿主は、薫の椅子の後ろに立ち何かを呟いた。


「さあ、御出(おいで)なさいませ。枕香(まくか)の常代(とこしろ)を御用意いたしましたゆえ。」


え、え、「まくら」?「とうしろ」?それって、何の事ですか。

宿主は頭を上げた薫の肩を背後から片腕を伸ばして押さえると命令した。


「カオルさん、動かないでください。」


その口調は、今まで聞いた事の無い強さだった。何かの鳴き声がした。天井を見上げた薫は、そこにある2つの目に驚く。


「わっ、宿主さんー。」

「どうしました、何か見えますか?」

「目、目が!」

「ああ、おみえになりましまたか。」


宿主は、珍しく笑う。そして、薫の肩から手を離した。すると、薫の上に何かが落ちて来るのだ。

ストーン、パシュッ!

薫は身震いをして笑った。

「ふ、ふふふ。男の子とは、不作であるな。」

宿主は、頭を下げて詫びる。


「申し訳ございません、探しましたが確当者がおりませんでした。留目の者を連れて参りましたので良しなにお願いいたします。」

「仕方のない事だのう。あの女は、こき使ってくれたぞ。」

「申し訳ございません。処分いたしましたので、引き継ぐ者が見つかるまでの間を宜しくお使いください。」


何かに憑依された薫は、ゆっくりと立ち上がった。そして、座っている御前様を見やる。値踏みするよに下から上までを見回した。

御前様は、立ち上がって頭を下げる。恭(うやうや)しく。


「はじめまして、お気に召しましたか?」

「3人の息子の中では、ましな部類か。心して受け取るがいい。」


薫は御前様の前に立った。そして、頭を屈めると美少年の首筋に指を這わせた。


「では、初めよーぞ。授ける!」


御前様の上半身がブルブルと震え出す。髪の毛が逆立ち目が吊り上がった。何かが乗り移ったのだ。

御前様の触れられた首筋に「三日月」の黒い痣が浮かび上がった。付き添った宿主は満足げに微笑む。成功したと。


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