(完)恋なんてのは忌まわしいだけだが必要だよ

川なみな

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「 1・26 」君だけなんだ

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そんな騒ぎも知らずにいるのが、薫だった。美味しそうに食事をしている。なんと、寮の自分の部屋に戻っていたのだ。

寮の社員の吉田さんが、部屋まで夕食を運んで来てくれた。


「留目さんは身体が弱いから無理しないでくださいね。」


心配してくれて、申し訳なく思う薫であった。午後の授業を欠席して部屋で休んでいる事になっている。吉田が出て行くと薫は心配な気持ちを口に出した。


「いいのかなあ、部屋に戻ってて。僕は、宿主先生に処分されたんだよ。学園は退学じゃないの?」


ヒョコッと現れた鼠下駄。机の上で胸を自慢気に反らす。


「退学届けは、無しに致しました。そんな事は、私には容易い事なのです!」

「でも、でもさ。宿主先生は、僕を殺そうとしたんだよ。また、殺されるかも。怖いよー!」

「宿主の殺意も、無しに致しました。そんな事は、私には容易い事なのです!」

「ええー、無しになんて出来るの?」

「簡単な事なのです!忘れさせれば良いのですから。」


そんな簡単な事だとは思わないが、お腹が減ってるので夕食に手をつける。その時、ドアが叩かれた。そして、薫の名を呼ぶのだ。あの声は、御前様ではないか。


「馨、馨、開けてくれ。開けろ、馨!君が必要なんだ!」


必要と言われても、分からない。何なの?叩かれるドアがミシミシいってるし。鍵をかけたドアノブが、もぎ取られたじゃないか。


(ひーー、神さま。助けてええーー!)


僕は、恐怖に動けない。助けて欲しい、誰か!

穴の空いたドアが蹴り飛ばされて、飛び込んで来る見覚えのある生徒は上級生。見覚えのあるというのは、外見が変わっているから。


「どうして、冷たくするんだ?」


大きな口は耳まで裂けて、牙が出ている。真っ赤に充血した目は、人じゃ無かった。あんなに美しい人が、こんな姿になるなんて。呪われてる。


「あの、あの、御前(ごぜん)様。冷たくなんかしてません。」

「だったら、どうしてだ?俺が、こんなに苦しんでいるというのに!」

「ごめんなさい、ごめんなさい。許して!」

「カケオリル、頼む。お前が、欲しい!」


右手が捕まれて、手の甲が舐められた。背筋がゾゾッーとする。


(ぎゃあああ。誰か、助けてえええええーー!)


僕に、いったい何を求めてるのか分からない。人間じゃないような顔になってる御前様が怖くてたまらない。どうした、いいの?


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