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(20) 後始末②

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ドミニク・スペンサー伯爵は、領地の見回りをしていた。そして、カーター家の葡萄園に寄る。

これも、仕事のうちだ。個人の感情など入ってはいない(大いに入っているのだが)


「これは、伯爵様。いらっしゃいませ。」


笑顔で迎えてくれるのは、当主のエレンだ。


「近くまで来ましたので、葡萄園を見せて頂こうと参りました。」


確かに葡萄園は見たかった。だが、急ぐ事でも無い事で。本当は、話をつけたかったのだ。



「そうだ、これを。ダンジョンの代金です。」
「ダンジョンのですか?」
「私が後を片付けました。参加者には受け取る権利があります。どうぞ、遠慮なく。」



思慮深いエレンは、伯爵の態度に考えた。あまり、角は立てない方がいいと。相手は、ここの領主なのだから。



「お詫びしようと思っておりました。伯爵様には、失礼な事をしまして申し訳ありません。」
「いえ、私も分別が足りず反省しました。皆さんを食事に招待したいのですが。」



食事に招待とは、困った。ガブリエルが応じてくれるか分からない。でも、エレンは不安を隠して礼を言った。

伯爵が帰ると、葡萄畑へ走るエレン。勿論、ガブリエルに話にだ。何と、パトリシアが居るではないか。嬉しい出来事だ。


「パトリシアさん、いらしてたんですか。」


そして、伯爵家へ食事に招待されたという話をしパトリシアも行く事になった。ガブリエルは、アッサリと承知したのだ。










伯爵家の夕食会。伯爵家の家政婦は、葡萄園の主以外は平民の客と考えて準備していた。だが、貴族のようにマナーが出来ていたので驚かされる。伯爵も同じだ。


「皆さん、どこで教育を受けられたのですか。 教養もある。」


皆が顔を見合せて笑う。当たり前だ、貴族の生まれだから。エドワードなどは、元王子である。

初めて会うパトリシアは、男爵家の令嬢だったが。彼女が亡くなった王子の婚約者だったと、後から伯爵は知らされるのだ。

これで、「茹で玉子」はギルドから追放されずに済んだのでした。

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