(完)簡単に覚えられる呪文ですよ

(３) 従者てのをやらされてる

着いてみると分かる物。「バシャ」は、駐車場だった。

なんだよう、ふざけてたな。僕を、からかったな。小さな女の子のくせに、酷いよ。親の顔が見たい。

いや、見たくない。なんか、魔王とか出て来そうだし。アニメで、パパは魔王なんてのがあったし。


「おい、飲み物と食べ物を手に入れろ。」


広いショッピングセンターの駐車場の隅に座っている少女は、命令してくるんだ。今さっきだよ、初対面は。それに、男詞になってるし。詐欺だ。何、芝居てんだよ！



「あの、なー。君、おかしいよ！」

「何が、だ？」

「僕の事、お前って。」

「お前だから、お前だ。それが、おかしいのか。お前が、おかしいんだ。」



うー、と言えなくなる優柔不断の少年。分かってしまった。口では、勝てそうに無い。



「あのさ、舌っ足らずの話し方。もう、止めたのかよ。」

「失礼な奴だ。私はお前より歳上だぞ。」

「歳上って？」

「お前はガキで、私は32歳の大人だ。敬意を払え！」



太は目を丸くして、目の前の相手を見た。女の子だ、年増の女の人だ、自分より年下だ。どう、見ても。



「あのう、そのう、えーと。」

「何だ、ハッキリと言え。」

「整形した？」

「セイケイ？何の事か、分からないな。」

「顔とか、身体とか、イジル事だよ。原型から好きに変えられるんだ。若返りやったの？」

「変えるとは、魔法が存在するのだな。この世界も。」



うーん、「魔法」と来た。この「若返りオバサン」は、自分には手に負えない。どうしたものか。あ、いい事を思い付いた。


ピッピピピピッピッーー。


携帯を取り出して家族グループの１つに繋ぐ。直ぐに出た相手。


「もしもし、芙蓉(ふよう)兄さん。今、話せる？困ってんだけど、助けて！」


電話の相手は、お母ちゃんの弟だった。芙蓉にいさんて呼んでるけど、30歳になってなくて若い。

甥の頼みは、聞いてくれる優しい親類だ。