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(2) 捕まったみたいだ

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「痛いっー!」と太は声を上げる。何だ、これ。頭の中に何かが突き込まれた。痛みに身体が痙攣していた。


「悪い、使わせてもらったにゃ。痛むでちゅかあ?」


側から聞こえる声は、言葉のような詫びの色は無い。その瞬間、痛みが引いたので太は責める気力も湧かなかった。



「何だよ、頭にナイフでも入れられたみたいだった。」

「お前の記憶を使わせてもらったんだもにょ。この世界の知識が皆無(かいむ)なんでしゅから。」

「この世界って?何、宇宙人みたいな事を。あれ、床が無い気がしてきた?」

「ああ、浮いてるからもにょ。」



太は頭の痛みに閉じていた目を開いた。ギョッとして、慌てて目を閉じる。ギュッと固く。



「もしかして、死んだ?」

「死ぬ?生きてるでちゅ。魔法だもにょ。」



少女は、町の上に浮いている太の肩を掴んだ。



「行くでしゅ。」

「行くって、何処に?」

「お前の頭にあった馬車を止める場所なのでちゅう。」

「バシャ?バシャッ?」



何だ、その「バシャ」は。意味の分からないまま、2人は空を飛んで行く。太は、目をつむったままだった。怖くて。

これが、変わった女の子との始まりだった。
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