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(16) 訪ねてきたお客様

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マンションの部屋のチャイムが鳴った。チャイムが鳴って応対するのは、芙蓉と決まっている。

異世界の人達は、出ない方がいいからだ。ここ部屋の住人は芙蓉という事もある。



「芙蓉さん、チャイムが鳴っています。」
「はーい、何でしょ?」
「花田 芙蓉さんは、居ますか?「勇者」の事で話したい。」 



芙蓉は、固まる。家を教えてないのに、押し掛けられたらしい。あの金貨の話とは何だろう。どうするか迷う。

すると、パトリシアが隣に来て指示した。


「来てしまったのなら、話をするしかないですね。入れて下さい。」


そうだ、そうするしかないだろう。家を調べるくらいだから。

ドアの外には、黒いコートに黒いパンツとシューズという黒ずくめの若い男が立っていた。


「私は、黒厳(くろいわ)です。祖父から話を聞いて伺いました。」


金貨を2枚、売り渡した老人は祖父だという。凄い 美形だった。目鼻立ちが良いという以前の人を魅了する人間だ。

その人が、何で来たのだろうか。金貨は渡している。用は、無いはずだ。でも、とりあえずは部屋に入れた。


「いらっしゃいませでしゅうー。」


パトリシアがトコトコと歩いてお茶を出す。それは、客を観察する為だ。パッと見て引っ込んで行った。



「あのお嬢さんは?」
「え?僕、僕の親類です!(何か気がついたのか?)」
「金貨に付いていた物と同じ匂いがします。関わりが?」
「匂いですか?いや、その、触ってましたけど。それですかねー(知らんぞ)」
「では、お嬢さんとお話がしたい。いいですか?」
「えっ、パト・・、羽鳥とですか?」
「羽鳥?先日、ご一緒だった方に縁のある人ですか?」



これは、小心者の芙蓉には対応できない。パトリシアは、自分から出て来た。黒厳にペコリと頭を下げる。


「自己紹介しまっす。私は、羽鳥の娘のパトリシアてちゅー。」


ジーーーっと、見られた。無言で穴の開きそうなほどに。そして、お願いされた。


「分かりました。お願いがあります、僕とお付き合いして下さい。結婚を前提で!」


芙蓉もパトリシアも固まる。いったい、何なのだ。何をしたいのか、この男は?


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