異世界と剣と魔法とダルマな彼女

ユタポンヌ

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異世界と哀れな少年

第12話 レビ

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  レビ・バルナ・ドゥドッィヒ視点


  (チッ、相変わらず乳でけぇな)

  エマの大きな胸を見て思わずイラッとした。

  「んで、どうすんのよ?」

  エルムガルドの国王より、エルムガルドに二人勇者を送って欲しいという要望が有ったと伝えに来たのだが。

  「無理よ」

  そうエマは答えた。
  だよね。そんな気はしてた。

  一人だけ勇者が現れるという話だったけど。実際に現れた勇者は30人。そんな話だけを聞けば『二人ぐらい勇者をくれよ』そう思うのも無理の無い話だけど、

  私があの異世界からの転移者をみて、『あんな使い物にならねぇ勇者を貰ってどうすんの?』そう思うのも無理の無い話だ。

  「そりゃ貰ってあんな奴等貰った所で誰も嬉しくなんて無いけどさ、欲しいって言ってんだからあげれば?」

  「そんな簡単には行いませんよ」エマは少し疲れた様な顔で言った。

  「なんで?」

  「あの転移者を見て本当にあの者達が転移者だと信じて貰えるか私には自信がありません」

  「ははぁ、成る程」

  確かに今回の転移者達は、以前の転移者比べて遥かに弱い。
  以前の転移者のスキルは『五神の寵愛』という地水火風を統べるそれぞれの神様と創造神様の加護の五つの加護を持っていたり、
  『神竜ゲヴェルツトゥラニネェール』の加護持って現れた異世界人は『竜化闘気』とかいうスキルを駆使して魔物の大群を腕の一振りでなぎ払ったという。

  それに比べて今回の転移者は『ヒツジさんの加護』とかいう訳の分からない物(ヒツジさんというものがそもそも何なのか分からない)だったり、
  『売春ガール』とかいう下世話なスキルだったりと、

  今までの転移者と様子が違った。

  ヒツジさんの加護を持った彼を故郷のエルムガルドに連れてって『勇者』ですなんて紹介したら殺されるんじゃないだろうか。そもそも今回勇者の称号を持っているのはクウジョウとかいう男ただ一人だ。

  「クウジョウは?クウジョウをくれよ?」

  「クウジョウはダメよ!」

  そう大きな声でエマは言った。
  頬は赤く、プっくりと膨れている。

  その反応にほくそ笑みながら、「へぇ~、どえしてぇ?」と意地悪を言うと、

  「もう!意地悪しないで!」

  と言った。
  エマはクウジョウに恋心を抱いているようで、こうしてからかうのが私の日課になっていた。

  「でも、あんな男の何処が良いんだか」

  ろくな男じゃ無いのはこの世界に転移した時を見てれば分かると思うのだけど、

  「だってツルギは勇者なのよ?」

  「顔も良いし?」

   と私が言うとエマは頬を赤くして軽く頷いた。

  「顔なんてなんでも良いじゃない?」

  エルフの私からしたら顔なんてオマケだ。

  でも、人間からしたらそうでも無いらしい。
  人間は色んな顔をしている。
  鼻が大きい人、目が大きくパッチリしてる人、口が小さくおちょぼ口の人。
  でもエルフはそうでは無い。
  エルフが顔が整っていると言われるが、それは少し違う。
  顔の形に特徴が無いんだ。
  鼻も高過ぎず低すぎず、目も大き過ぎず小さすぎない。
  ちなみに、胸も皆Aカップだ。
  ここも普通にBカップで良いんじゃあないかって思うけど、ここは控え目なのがエルフ基準だ。

  皆似たり寄ったりの顔をしていたら大切なのは心になってくる。
  エルフの寿命は300年と長く、結婚した相手と連れ添う月日も長い。
  そうなると外見よりも内面を重視する様になるのは決まりきった事だった。

  「私にとっても顔なんてオマケよ?」そうエマは言うのだが信憑性は低い。「顔なんてオマケだけれど、あのタナカという男は明らかに無いわよ?」

  「はぁ、何で彼の良さが分からないかなぁ」

  と私は言う。

  でも、「だっていくらなんだってオークみたいな顔をしてるのよ?」いつもエマは私がクウジョウの事をからかうと、こうして私を逆にからかって来るのだ。
 
  そして私はきまってこう返すのだ。

  「タナカは絶対に良い男よ?」

  そう言って私はタナカがこの世界に現れた時を思い出した。

  タナカはこの世界に来たときにクウジョウの事を責めたのだ。

  『クウジョウの言葉は軽率だと』

  確かにこの世界に来た時のクウジョウの発言は軽率だった。異世界転移者を代表して勝手に色々進めようとしたのだから。
  その時から彼の事が何となく気になっていた。

  そしてさっきクロードという国王様の近衛兵士よりタナカの近況を知ることが出来た。
  そしてそのタナカと会えるというのだが、実は私はそれを伝えにエマに会いに来ていた。

  「今度タナカに神聖魔法を教授する」

  「え?タナカがいたの?」

  「みたいね、国王様が探してくれた。彼は冒険者をしてたみたいよ?」

  「そんなっ、冒険者ギルドは一番最初に探したわよ?」

  「ギルドの受付嬢が小細工してたみたい」コップに注がれている紅茶に口を少しつけて、「でもこれでやっとタナカに会える」と私は言った。

  「えぇ?そんなに?そんなに会いたかったの?」

  驚いているエマに思わず苦笑してしまう。

  「そうよ?クロードが言ってたんだけど、クロードはタナカの神聖魔法の適正を確認するために左手をわざとオークに切らせて骨にまで届く傷を作って、それをタナカに治させたんだって」

  そして私が手の中の紅茶のカップから伝わる熱を楽しんでいると、急かす様に「それで?どうだったのよ?」と言った。

  「私が治し直してあげる必要は無いって、『腕は完璧に治ってる』って、クロードが言ってたわ」

  「嘘でしょ?」

  「本当みたいよ?痺れが残ったり、手が動き難いって事は全然無いみたいよ?」エマは絶句している。「そしてタナカは今度お城に来て、国王様より賠償金を受け取って、そして私に合うわ」

  エマはここまで言われてやっと気付いた様で、

  「え?何で?何でお父様が、国王様が出てくるの?」

  と言った。

  (貴方が不甲斐ないからよ?)

  そう言うべきなのか悩むけど、「まぁ、とにかく私はタナカに合うわ!顔はオマケって思いはするけど、実は彼の顔が結構好きなのよね」というと、エマは驚いた顔をした。

  「嘘でしょ?」

  「嘘を言ってどうするのよ?素敵だったなー。クウジョウに『お前が勝手に決めて良いことじゃあない!』そう言った時のタナカ。凛々しくってさ、あの時のタナカの目は本当にオークみたいでカッコ良かったんだよねぇ」

  「えぇえ!嘘でしょ?」

  「それが嘘じゃないんだな。私はもっとドキドキしたいの!私はもっとメチャメチャにされたいの!エルムガルドの聖者なん言われて小さい頃からずっと大事にされてきたけど、私はもっとメチャメチャにされたいのよ!私だって女なんだから!ちゃんと性欲だってあるんだからね!」

  私はそう言いながら彼の顔を思い出す。

  「嫌がる私!それを無理矢理押さえつけるタナカ!私は抵抗をするんだけどそれも虚しく私は彼に体を蹂躙されちゃうの!」想像するだけでアソコが締まる感じがする。「そして嫌がっていたはずの私のアソコはもう、、、」

  妄想を爆発させていたら、

  「ちょっと、『エルムガルドの聖者』から『エルムガルドの性者』にクラスチェンジしないでね?」

  そう心配されてしまった。
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