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第五話 逮捕

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私が脱衣室の奥にある洗面台の前に座りヘアアレンジをしていると、大浴場から裸の女性が出てきてしまった。

大浴場から出てきた女性は、一人は私が予想した通りの年配の女性だったが、もう一人は若い女性だった。

若い女性は女装を見破る能力が高いので、私は緊張した。

しかし、私の後ろ姿を見た女性たちは、私を本物の女だと認識したようで、特に騒ぎ出す様子はなかった。

人は、ほんの数秒の第一印象で他人の性別を判断する。

一度判断した性別が覆ることは滅多にないが、至近距離でじっくりと観察されると、その判断が覆ることがある。

脱衣室を出るには彼女たちの横を通過する必要があった為、私は彼女たちに背を向けたまま、暫く洗面台の前に座り続けることにした。

脱衣室に男がいるとは思っていない女性たちはリラックスしていて、彼女たちの会話から、二人がお婆ちゃんと孫の関係であることや、孫の方が17歳の高校2年生であることが分かった。



私はなるべく気配を消し、彼女たちが出て行くのを気長に待つことにした。

お風呂上がりの女性には、することが多くあったからだ。

すると、お婆ちゃんが裸の上から直接浴衣を着る姿が洗面台の鏡に映った。

浴衣が寝巻だった時代は、素肌に直接浴衣を着ることもあったが、最近ではショーツは勿論、ブラも付けることが当たり前になっている。

お婆ちゃんは慣れた手つきで浴衣を着終えると、孫の着付けを始めたが、何と孫にも直接浴衣を着せていた。

ブラはともかく、ショーツなしの浴衣は危険だ。

前がはだけて、最悪の場合は女性器を公衆の面前に晒すことになる。

私は高校2年の女の子が女性器を晒す姿を想像し、股の下に折り畳んでいたアソコが勃起してしまい股間に痛みが走った。

それは女子高生の裸に興奮したからではなく、男たちに女性器を晒す女子高生に感情移入したからだった。



私は男に性的な目で見られることに興奮を覚える精神構造になっていた。

既にウィッグのヘアアレンジを終えていた私は、メイク直しをしている振りをして、彼女たちが脱衣室から出て行くのを待った。

しかし、彼女たちは揉めている様子で、私の方を見ながら口論を始めた。

私は緊張した。

もし、私が男だとバレれば、京都府警のお世話になり、会社はクビ、家庭も崩壊するだろう。

私は自分の軽率な行動を後悔した。

私は女装が誰にもバレなかったことで、調子に乗っていた。

すると、お婆ちゃんが脱衣室を出て、先程、私に声を掛けてきた女性従業員さんを呼んできてしまった。

三人に増えた女性たちは、私の方を見ながら話をしていた。

終わった…どう考えても逃げ切れない…。

すると、女性従業員さんがお婆ちゃんを引き連れて私のもとにやってきた。

「お客様、ちょっとよろしいでしょうか?」

女性従業員さんが私に声を掛けてきた。

万事休すだ…私は頭から血の気が引き、足がガクガクと震えた…。

私は、せめて実名報道されないように祈った…。

「良かったら、あちらのお嬢さんの帯を結んで頂けませんでしょうか?」
「すみませんねえ、孫がどうしても貴方がしている帯をしたいと言うので…」

どうやら、彼女たちが揉めていた原因は、私がしている「マリーゴールド結び」を、お婆ちゃんも女性従業員さんも出来ないことが原因だったようだ。

「はい、私で良ければ」

私の返事を聞いた女性従業員さんとお婆ちゃんに私を不審がる素振りはなかった。

声でバレることもなかったようだ。

しかし、私が洗面台の前から立ち上がると、お婆ちゃんの方が驚きの表情を浮かべた。

身長でバレたかも…。

「最近の若い人は背が高いねえw お姉さんは大学生?」

セーフ…バレてない。しかも私のことを女子大生だと思っている。

「いえ、社会人です」

私はお婆ちゃんと一緒に孫の前まで行くと、女子高生は人見知りをしているのか、強張った表情で私を見ていた。

「ほら~!やっぱり~!」

私を間近で見た女子高生は、私の正体に気付いたようだ…。

孫の帯を結んで欲しいと言うのは口実で、私を間近で見るための罠だったようだ。

「お姉さんも下着を付けてるよ!」

女子高生は私を見ながらそう言った。

レーヨン製の薄い浴衣生地は、私のブラやショーツのラインを隠すことが出来ず、女子高生は私が浴衣の下にTバックを穿いていることに気付いたようだ。



良かった…女子高生も私が男だと気付いていない。

「本当は下着なしで着るものですけど、恥ずかしいのでw」

私は女子高生に話を合わせた。

「最近は下着を着けたまま浴衣を着られる方が多いですねw」

女性従業員さんも話を合わせてくれた。

「ですよね!由香も下に着よう!」

女子高生はそう言うと、お婆ちゃんに「貝の口結び」の帯を解いてもらっていた。

「それでは、後はお願いします」

女性従業員さんは私に一礼すると脱衣室を出て行った。

私は自分が男だとバレずに済んで安心していると、女子高生が浴衣を脱いで私の目の前で全裸になってしまった。



私は目の前に女子高生の裸があるのに、性的に興奮することはなく、同性として彼女の体と自分の体を比較していた。

やはり、偽物の女とは違い、本物の女子高生の肌には張りがあり、綺麗なピンク色の乳首が印象的な乳房は全く垂れることはなく、薄い陰毛は深い割れ目を隠すことはなかった。

妻のアソコとは全然違う…割れ目付近の肌が少し変色してるけど、それでも綺麗だ。

私は他人に着付けをしたことがなかったが、直接背中側に帯を結ぶことが出来るので、自分で結ぶより簡単だった。

私は着付けをする関係上、女子高生を背中から抱き締める状態になってしまった。

女子高生は見知らぬ男に背中から抱きつかれていたが、全く気にしていない様子だった。

「あっ、髪の毛のゴムを使うのね」

お婆ちゃんは、帯にヘアゴムを使うことを知らなかったようで、私の着付けを真剣な目で見ていた。

「はい!ここがお花のめしべになるんですよw」
「へえ…でも、いいの?」
「はい!安いものなので、気にしないでくださいw」
「良かったね!由香ちゃん!お姉さんが髪の毛のゴムを下さるって!」
「本当ですか!ありがとうございます!」

スワロフスキーの付いたヘアゴムは、決して安い物ではなかったが、この場から早く逃げる為には仕方のないことだった。

「可愛い!ありがとうございます!」

着付けの終わった女子高生は私にお礼を言うと、鏡の前で自分の背中を見ることに必死になっていた。

「いえw それでは…」
「わざわざありがとうございます」

私は、おばあちゃんにもお礼を言われ、無事、大浴場から脱出することが出来た。
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