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第一章
一緒に行きたい
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一緒に行きたい
「おかえりなさい菊、今日はカレーにするから着替えたら手伝って―」
「えーめんどくさい。」
「そういわないの。ほらはーやーく」
「はいはいわかりましたよー」
菊はたまに料理を手伝わされている。めんどくさがる割にはちゃんと手伝うので母も結構助かっているのだそうだ。菊自身、料理がうまくなっていく実感があり複雑な気分になっていた。
「始業式どうだった?」
「特に何もー、強いて言うなら麗華と同じクラスになったぐらいだな」
「あらよかったじゃない。去年同じクラスになれなくて落ち込んでたもんねー」
「お、落ち込んでねえよ!どうせ、家となりだから関係ねえし...」
「あらそう?あの時はいつになく元気ないように見えたから」
「いつも通りだったよ!」
(そこまで落ち込んではねえし。まあ少しは思うところはあった...かも。)
麗華のほうがむしろ落ち込んでいた。「きくちゃ~ん!」と半分涙目でくっ付いてきたのを覚えてる。あのときは麗華が寂しがっていたから気づかなかったが、自分も寂しかったのかもしれない。案外、母の目も侮れない。
「カレーこがさないでよー?」
「わあぁ!んー大丈夫かなー?」
このときのカレーはなぜかうまかった。
「恋に焦がれた乙女の味ねー♪」
「少し焦げた中辛だ、誰が恋する乙女だよ...」
恋とかまだよくわかんねぇよ...
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「一緒にお花見に行かな~い?」
「朝からなんだと思えば...あたしはパス」
「えーなんでよ~。せっかくいい天気だし、平日に出かけられるチャンスだよ~!」
今日は金曜日だが学校は休みである。今頃だともうすぐ入学式が始まるあたりだろうか。入学式は2、3年生は休みだ。昨日始業式があり、今日から三連休をはさんで来週から学校がまた始まる。
「花見だったら、他のやつと行けばいいだろ?」
「それはダメ」
麗華は一変して真剣な顔になった。
「きくちゃんとふたりきりじゃないと意味がないの、同じクラスになれた記念なんだから、いいでしょーおねが~いっ」
「わっ、わかったよ...。」
そのうるうるした目で見つめるのはやめてくれ。それには弱いんだよ、たぶんこいつも気づいてるな?
「じゃあ準備するから...中で待ってろ」
「うん、おじゃましま~す♪」
またいつもの麗華に戻った。真剣になったり笑ったり、朝から忙しいひとだ。
(花見かー、そういえば昔...)
菊はふと昔のことを思い出した。麗華の家族と菊の家族とで花見に行ったことがある。麗華と広場を走り回ったり、桜の花びらをふたりで集めたり、みんなで弁当を食べたり———
「花見つってもなにすんだよ?」
「そりゃ~ごはん食べたり、花びら捕まえたり、走り回ったり~」
「いや子どもかよ...。そのごはんは?」
「きくちゃんの腕、期待してるよ~」
「あたしが作るのかよっ!」
朝から面倒なことを頼まれてしまった。だがここまで来たらやるしかないだろう。期待されちゃったしなー。
(えーっと、食パン、レタス、たまご、トマト。サンドイッチ作れそうだな。簡単に済ませちまうか)
「菊おはよう、あら麗華ちゃん、おはよう」
「きくママ!おはようございます」
「今日も朝から元気ねぇ、どうかしたの?」
「花見なんだと、それでなんか食べるもの作ろうとしてたとこ」
「そしたら、昨日の菊カレーの残りとおかず持っていったら?ごはんも残ってたはずよ」
「いや花見にカレーって——」
「きくちゃんが作ったカレー!たべた~い!」
「えぇ...」
おかずはいいにしてもカレーはさすがに風情がないだろ。
「後で分けてやるから今のところは我慢してくれ、サンドイッチ作るから」
「むぅ~仕方ないな~。でも菊サンドか~楽しみだな~」
「はいはい、ちょっと待ってろ」
(菊カレーとか菊サンドとか、作った人の名前つけるの流行ってるのか?)
それから簡単に準備を済ませ出発する。
「二人とも気を付けていってらっしゃーい」
「「行ってきまーす」」
二人の姿を見送っていく。少し懐かしさがこみ上げてきた。
(なんだかんだ仲良しなのよね)
「あっ牡丹さん、おはよう~」
「菫さん、おはよう」
「うちの麗華知らない?朝からいないみたいで~」
「麗華ちゃんだったら菊と一緒にお花見に行くって。たぶんあの広場よ、ほら二人が小さいころ一緒に行った」
「あー綾目広場、懐かしい~、私たちも二人でよく行ったもんね~」
「ね~」
菊の母牡丹と、麗華の母菫は高校時代からの友人なのだがそれはまた別のお話。
————————————
菊と麗華は綾目広場に着いた。
「きくちゃん覚えてる?昔ここでお花見したよね~」
「あぁ、覚えてるよ」
というよりかはさっき思い出したことである。
「きくちゃん、すごくはしゃいでたもんね~」
「それは麗華もだろ」
あのときはまだ小さかったから桜に感動して走り回ったり、もはや桜そっちのけで遊んでたりしたものだ。
この綾目広場はこの辺りでは一番大きな広場で、この時期になるとお花見に来る人も結構多い。だが、平日の朝というのもあって人もほとんどいない貸し切り状態である。二人は桜の下の良いスペースに荷物を置き一息ついた。麗華の荷物を置くとき、どかっ、と重い音がした。
「麗華のバッグ、何が入ってんだ?」
「ん~?えっとね、フリスビーに、なわとびに、バドミントンでしょ~それから~...」
「いや多すぎだろっ!」
バッグからなにか飛び出してるなと思ったらバドミントンのラケットだった。遊ぶ気満々である。
「さすがにそこまで遊ぶほど子どもじゃねえよ...」
「ねぇ一緒に遊ぼうよ~?周りに人いないしさ~」
だからその目はやめてくれって...
「はぁ...わかったよ」
「やった~☆」
それから菊と麗華はバドミントン、フリスビー、キャッチボールで遊び、なわとびではどっちのほうが難しい技が出来るかという勝負をした。結果は菊のぼろ負けだった。久しぶりのなわとびで疲れているところ、「もう終わり~?」と麗華に煽られ、菊もこのままじゃ終われないとむきになり追いかけっこが始まった。結果これでも麗華を捕まえられず惨敗した。恐るべし陸上部の期待のエース...
「もう無理、さすがに疲れたっての...」
「私も~...」
二人は桜の下で休憩していた。
「たくさん動いたからお腹すいてきちゃった~」
「もうちょっとだけ休ませてくれ...はぁ...」
これだけ動いたのはいつぶりなのだろうか。こんなに体力がなかったのかと、菊は一人体力をつけようと決心した。
ひときしり休んだ後、作った弁当を広げてごはんにした。結構遊んだ割には、今でちょうどお昼時だった。
「菊サンドおいしそ~」
「その菊サンドっていうのやめてくれ...」
(なんか照れくさいな...)
「いただきま~す。はむっ、んっ、ふふっ」
笑顔で頬張る麗華の顔を見て、作ったかいがあったなと嬉しくなった。
「きくちゃんの菊サンド、すごくおいしい!」
「そうかい、そいつはよかったよ」
真正面から感想を言われるとやっぱり恥ずかしいなと麗華から顔をそむけると、
「照れてるの~?かわいい~」
「かわいいゆうな」
「ふふっ。...今日はありがとね」
と、急にお礼を言われた。麗華の顔を見ると笑ってはいるがいつもとは違う雰囲気だった。
「どうした、そんなに改まって?」
「だって久しぶりでしょ、こうやって二人きりでどこかに出かけるの」
「そうだなー、たしかに朝学校行ったりとかはしてたけどこうやって遊ぶのは最近はなかったな」
去年は違うクラスだったというだけでそんなに会う機会が減ったわけではないが、一緒に遊びに行くというのはそこまで多くはなかった。菊は暇であったが、麗華のほうが大変そうだったからだ。半分は麗華の自業自得だったが今はふせておこう。
「こうやって二人で遊んで、勝負して、疲れて寝転んで、笑い合えてすごくうれしいの、だから今日はありがとね。付き合ってくれて」
風が吹いて桜が舞い、麗華の笑顔を見事に装飾していた。まるできれいな絵画を見ているようだった。
「うん、あたしも久しぶりに麗華と遊べて楽しかったよ、...麗華が良ければまた一緒に...」
「ん~?なんて言ったの~?」
「なっ何でもないっ!」
これ以上は言うと恥ずかしいので、気を紛らわせるために風で舞っている桜の花びらを見た。花びらが近くまで落ちてきたので捕まえてみた。小さいころもこんなことをしていたが、あのときは捕まえるのが難しかったような気がする。
「んーほぃっ、やったー!つ~かま~えた♪」
麗華も花びらを捕まえていた。
(ほんとに、麗華は子どもみたいだな)
「きくちゃん知ってる?桜の花びらを地面に落ちる前に捕まえるとどうなるか」
「ど、どうなるんだよ」
「んふふ~、ひみつ~」
「えー、教えろよ」
「だからひみつ、調べてもいいけど、一人になったタイミングで調べてね~」
そんなにやばいことでもあるのだろうか。ただ花びらをとっただけで。
などと話しているうちに日が傾き始めてきた。
「そろそろ帰るか、それともまだ遊ぶか?」
「ん-もう満足したから帰ろっか~」
その後二人で帰り支度を済ませたが、麗華のバッグはやはりパンパンだった。
それから帰り道。
「きくちゃん家帰ったらなにするの~?」
「ん-普通に勉強」
「んもー真面目だな~。まだ授業始まってないのに~」
「何言ってんだよ、始業式明けの月曜日に確認テストするって言ってたろ?」
「...えっ?いつ?」
「春休みに入る前、宿題配られたときに学年全体で宿題の確認テストするぞって...麗華もしかして...」
「すぅー、無かったことにしよう」
「するな」
「どうしよう~宿題もやってない。たしか始業式には回収しないっていうのを聞いて安心してたのは覚えてるんだけど~」
「そこで安心するなよ!んもーわかった手伝うよ...」
「ありがと~!きくちゃん大好き~!」
「こんなとこで抱きつくなよー!」
どうやら土日も忙しくなりそうだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「そういえば...」
家に帰った後一息ついて思い出した。
『調べてもいいけど、一人になったタイミングで調べてね~』
調べてみるかとスマホに
「桜の花びら 落ちる前に捕まえる」
と検索するとおまじないがいくつか出てきた。その内容をみるなり菊の顔がみるみる赤くなった。
(あたしなにしてんだよっ!)
確かにこんなとこ麗華には見せられない。麗華のやつ、こうなるって見抜いてたなぁ...。
(って恥ずかしくなることないだろ、別に麗華のことなんてあまり気にしてないし。麗華はこれを知ってて捕まえたんだよな...。あれってことは...ってそんなわけないか)
「菊―、ごはん手伝ってー?」
「えー、はぁわかったよちょっと待って」
菊は麗華の思いにはまだ気づくことはなかった。
続く
「おかえりなさい菊、今日はカレーにするから着替えたら手伝って―」
「えーめんどくさい。」
「そういわないの。ほらはーやーく」
「はいはいわかりましたよー」
菊はたまに料理を手伝わされている。めんどくさがる割にはちゃんと手伝うので母も結構助かっているのだそうだ。菊自身、料理がうまくなっていく実感があり複雑な気分になっていた。
「始業式どうだった?」
「特に何もー、強いて言うなら麗華と同じクラスになったぐらいだな」
「あらよかったじゃない。去年同じクラスになれなくて落ち込んでたもんねー」
「お、落ち込んでねえよ!どうせ、家となりだから関係ねえし...」
「あらそう?あの時はいつになく元気ないように見えたから」
「いつも通りだったよ!」
(そこまで落ち込んではねえし。まあ少しは思うところはあった...かも。)
麗華のほうがむしろ落ち込んでいた。「きくちゃ~ん!」と半分涙目でくっ付いてきたのを覚えてる。あのときは麗華が寂しがっていたから気づかなかったが、自分も寂しかったのかもしれない。案外、母の目も侮れない。
「カレーこがさないでよー?」
「わあぁ!んー大丈夫かなー?」
このときのカレーはなぜかうまかった。
「恋に焦がれた乙女の味ねー♪」
「少し焦げた中辛だ、誰が恋する乙女だよ...」
恋とかまだよくわかんねぇよ...
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「一緒にお花見に行かな~い?」
「朝からなんだと思えば...あたしはパス」
「えーなんでよ~。せっかくいい天気だし、平日に出かけられるチャンスだよ~!」
今日は金曜日だが学校は休みである。今頃だともうすぐ入学式が始まるあたりだろうか。入学式は2、3年生は休みだ。昨日始業式があり、今日から三連休をはさんで来週から学校がまた始まる。
「花見だったら、他のやつと行けばいいだろ?」
「それはダメ」
麗華は一変して真剣な顔になった。
「きくちゃんとふたりきりじゃないと意味がないの、同じクラスになれた記念なんだから、いいでしょーおねが~いっ」
「わっ、わかったよ...。」
そのうるうるした目で見つめるのはやめてくれ。それには弱いんだよ、たぶんこいつも気づいてるな?
「じゃあ準備するから...中で待ってろ」
「うん、おじゃましま~す♪」
またいつもの麗華に戻った。真剣になったり笑ったり、朝から忙しいひとだ。
(花見かー、そういえば昔...)
菊はふと昔のことを思い出した。麗華の家族と菊の家族とで花見に行ったことがある。麗華と広場を走り回ったり、桜の花びらをふたりで集めたり、みんなで弁当を食べたり———
「花見つってもなにすんだよ?」
「そりゃ~ごはん食べたり、花びら捕まえたり、走り回ったり~」
「いや子どもかよ...。そのごはんは?」
「きくちゃんの腕、期待してるよ~」
「あたしが作るのかよっ!」
朝から面倒なことを頼まれてしまった。だがここまで来たらやるしかないだろう。期待されちゃったしなー。
(えーっと、食パン、レタス、たまご、トマト。サンドイッチ作れそうだな。簡単に済ませちまうか)
「菊おはよう、あら麗華ちゃん、おはよう」
「きくママ!おはようございます」
「今日も朝から元気ねぇ、どうかしたの?」
「花見なんだと、それでなんか食べるもの作ろうとしてたとこ」
「そしたら、昨日の菊カレーの残りとおかず持っていったら?ごはんも残ってたはずよ」
「いや花見にカレーって——」
「きくちゃんが作ったカレー!たべた~い!」
「えぇ...」
おかずはいいにしてもカレーはさすがに風情がないだろ。
「後で分けてやるから今のところは我慢してくれ、サンドイッチ作るから」
「むぅ~仕方ないな~。でも菊サンドか~楽しみだな~」
「はいはい、ちょっと待ってろ」
(菊カレーとか菊サンドとか、作った人の名前つけるの流行ってるのか?)
それから簡単に準備を済ませ出発する。
「二人とも気を付けていってらっしゃーい」
「「行ってきまーす」」
二人の姿を見送っていく。少し懐かしさがこみ上げてきた。
(なんだかんだ仲良しなのよね)
「あっ牡丹さん、おはよう~」
「菫さん、おはよう」
「うちの麗華知らない?朝からいないみたいで~」
「麗華ちゃんだったら菊と一緒にお花見に行くって。たぶんあの広場よ、ほら二人が小さいころ一緒に行った」
「あー綾目広場、懐かしい~、私たちも二人でよく行ったもんね~」
「ね~」
菊の母牡丹と、麗華の母菫は高校時代からの友人なのだがそれはまた別のお話。
————————————
菊と麗華は綾目広場に着いた。
「きくちゃん覚えてる?昔ここでお花見したよね~」
「あぁ、覚えてるよ」
というよりかはさっき思い出したことである。
「きくちゃん、すごくはしゃいでたもんね~」
「それは麗華もだろ」
あのときはまだ小さかったから桜に感動して走り回ったり、もはや桜そっちのけで遊んでたりしたものだ。
この綾目広場はこの辺りでは一番大きな広場で、この時期になるとお花見に来る人も結構多い。だが、平日の朝というのもあって人もほとんどいない貸し切り状態である。二人は桜の下の良いスペースに荷物を置き一息ついた。麗華の荷物を置くとき、どかっ、と重い音がした。
「麗華のバッグ、何が入ってんだ?」
「ん~?えっとね、フリスビーに、なわとびに、バドミントンでしょ~それから~...」
「いや多すぎだろっ!」
バッグからなにか飛び出してるなと思ったらバドミントンのラケットだった。遊ぶ気満々である。
「さすがにそこまで遊ぶほど子どもじゃねえよ...」
「ねぇ一緒に遊ぼうよ~?周りに人いないしさ~」
だからその目はやめてくれって...
「はぁ...わかったよ」
「やった~☆」
それから菊と麗華はバドミントン、フリスビー、キャッチボールで遊び、なわとびではどっちのほうが難しい技が出来るかという勝負をした。結果は菊のぼろ負けだった。久しぶりのなわとびで疲れているところ、「もう終わり~?」と麗華に煽られ、菊もこのままじゃ終われないとむきになり追いかけっこが始まった。結果これでも麗華を捕まえられず惨敗した。恐るべし陸上部の期待のエース...
「もう無理、さすがに疲れたっての...」
「私も~...」
二人は桜の下で休憩していた。
「たくさん動いたからお腹すいてきちゃった~」
「もうちょっとだけ休ませてくれ...はぁ...」
これだけ動いたのはいつぶりなのだろうか。こんなに体力がなかったのかと、菊は一人体力をつけようと決心した。
ひときしり休んだ後、作った弁当を広げてごはんにした。結構遊んだ割には、今でちょうどお昼時だった。
「菊サンドおいしそ~」
「その菊サンドっていうのやめてくれ...」
(なんか照れくさいな...)
「いただきま~す。はむっ、んっ、ふふっ」
笑顔で頬張る麗華の顔を見て、作ったかいがあったなと嬉しくなった。
「きくちゃんの菊サンド、すごくおいしい!」
「そうかい、そいつはよかったよ」
真正面から感想を言われるとやっぱり恥ずかしいなと麗華から顔をそむけると、
「照れてるの~?かわいい~」
「かわいいゆうな」
「ふふっ。...今日はありがとね」
と、急にお礼を言われた。麗華の顔を見ると笑ってはいるがいつもとは違う雰囲気だった。
「どうした、そんなに改まって?」
「だって久しぶりでしょ、こうやって二人きりでどこかに出かけるの」
「そうだなー、たしかに朝学校行ったりとかはしてたけどこうやって遊ぶのは最近はなかったな」
去年は違うクラスだったというだけでそんなに会う機会が減ったわけではないが、一緒に遊びに行くというのはそこまで多くはなかった。菊は暇であったが、麗華のほうが大変そうだったからだ。半分は麗華の自業自得だったが今はふせておこう。
「こうやって二人で遊んで、勝負して、疲れて寝転んで、笑い合えてすごくうれしいの、だから今日はありがとね。付き合ってくれて」
風が吹いて桜が舞い、麗華の笑顔を見事に装飾していた。まるできれいな絵画を見ているようだった。
「うん、あたしも久しぶりに麗華と遊べて楽しかったよ、...麗華が良ければまた一緒に...」
「ん~?なんて言ったの~?」
「なっ何でもないっ!」
これ以上は言うと恥ずかしいので、気を紛らわせるために風で舞っている桜の花びらを見た。花びらが近くまで落ちてきたので捕まえてみた。小さいころもこんなことをしていたが、あのときは捕まえるのが難しかったような気がする。
「んーほぃっ、やったー!つ~かま~えた♪」
麗華も花びらを捕まえていた。
(ほんとに、麗華は子どもみたいだな)
「きくちゃん知ってる?桜の花びらを地面に落ちる前に捕まえるとどうなるか」
「ど、どうなるんだよ」
「んふふ~、ひみつ~」
「えー、教えろよ」
「だからひみつ、調べてもいいけど、一人になったタイミングで調べてね~」
そんなにやばいことでもあるのだろうか。ただ花びらをとっただけで。
などと話しているうちに日が傾き始めてきた。
「そろそろ帰るか、それともまだ遊ぶか?」
「ん-もう満足したから帰ろっか~」
その後二人で帰り支度を済ませたが、麗華のバッグはやはりパンパンだった。
それから帰り道。
「きくちゃん家帰ったらなにするの~?」
「ん-普通に勉強」
「んもー真面目だな~。まだ授業始まってないのに~」
「何言ってんだよ、始業式明けの月曜日に確認テストするって言ってたろ?」
「...えっ?いつ?」
「春休みに入る前、宿題配られたときに学年全体で宿題の確認テストするぞって...麗華もしかして...」
「すぅー、無かったことにしよう」
「するな」
「どうしよう~宿題もやってない。たしか始業式には回収しないっていうのを聞いて安心してたのは覚えてるんだけど~」
「そこで安心するなよ!んもーわかった手伝うよ...」
「ありがと~!きくちゃん大好き~!」
「こんなとこで抱きつくなよー!」
どうやら土日も忙しくなりそうだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「そういえば...」
家に帰った後一息ついて思い出した。
『調べてもいいけど、一人になったタイミングで調べてね~』
調べてみるかとスマホに
「桜の花びら 落ちる前に捕まえる」
と検索するとおまじないがいくつか出てきた。その内容をみるなり菊の顔がみるみる赤くなった。
(あたしなにしてんだよっ!)
確かにこんなとこ麗華には見せられない。麗華のやつ、こうなるって見抜いてたなぁ...。
(って恥ずかしくなることないだろ、別に麗華のことなんてあまり気にしてないし。麗華はこれを知ってて捕まえたんだよな...。あれってことは...ってそんなわけないか)
「菊―、ごはん手伝ってー?」
「えー、はぁわかったよちょっと待って」
菊は麗華の思いにはまだ気づくことはなかった。
続く
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