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第二幕
恵莉花の日常 その5
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『男らしくない!』という体育教師の物言いには思うところもありつつ、けれど恵莉花は、
「すいません。私、家の用事がありますから、もう行っていいですか?」
と教師に尋ねた。そんな彼女に対して、田上の襟首を掴んで子猫を掴み上げるようにしていた教師は、
「おう! 気をつけて帰れよ」
実にあっさりと告げた。これに対しても田上は不満そうな表情をしている。
それにはもう構うことなく園芸部の部室に戻った恵莉花は帰宅の準備をした。
その後で、教室に忘れ物をしたことに気付いてそちらに向かうと、校舎の影で、数人の男子生徒がたむろしているのが見えた。
「ギャハハ! キョウのヤツ、フられてやんの! ダッセェ!!」
「けど、これでオレの勝ちね。ホレホレ、出せ出せ」
「ムカつくわ~、月城のヤツ。おとなしくキョウに食われとけよ」
「あ~、でも、キョウのヤツも物好きだよな。あんなイモ女のどこがいいんだよ」
「言っても月城、モノはいいぜ。たぶん。いい体してるしよ」
などというやり取りが、聞くとはなしに聞こえてしまった。
『やっぱり、そういうことか……』
どうやら、田上が恵莉花をモノにできるかどうかで賭けをしていたようだ。
恵莉花は、そういう<ノリ>も嫌いだった。他人の<気持ち>を軽々しく賭けの対象にするなど。
同じ価値観の者同士でつるんでその中だけでやっているだけなら別に好きにしてくれていいにしても、巻き込まないでもらいたいと思っていた。
なんてことがあって滅入った気分を抱えた状態で家に帰ると、玄関前で紫外線遮断ジャケットのフードを頭から被って手袋をして花の手入れをしていたエンディミオンの姿に気付いた。
「ただいま」
「……おかえり……」
相変わらず愛想のない、見た目には子供にも見える父親だけれど、そうして挨拶を交わしただけでも恵莉花は自分がホッとするのが分かった。
しかも、
「…何かあったか……?」
後ろを通り過ぎようとした、自分より遥かに大きな体の<娘>に、エンディミオンは問い掛けた。
「あ…うん、大丈夫……」
不意の問い掛けに意表を突かれながらも、恵莉花の表情が柔らかくなる。父親がちゃんと自分のことを見てくれているのを改めて実感できて、嬉しかったのだろう。
自分をこの世に送り出した張本人である父親が、しっかりと気に掛けてくれている。
しかも子供が反抗的な態度を見せ始めてから慌てて気を遣ってるフリをするのではなく、物心がつく以前から、決して器用でも愛想よくもないが常に見てくれているのはちゃんと伝わっていたのだった。
「すいません。私、家の用事がありますから、もう行っていいですか?」
と教師に尋ねた。そんな彼女に対して、田上の襟首を掴んで子猫を掴み上げるようにしていた教師は、
「おう! 気をつけて帰れよ」
実にあっさりと告げた。これに対しても田上は不満そうな表情をしている。
それにはもう構うことなく園芸部の部室に戻った恵莉花は帰宅の準備をした。
その後で、教室に忘れ物をしたことに気付いてそちらに向かうと、校舎の影で、数人の男子生徒がたむろしているのが見えた。
「ギャハハ! キョウのヤツ、フられてやんの! ダッセェ!!」
「けど、これでオレの勝ちね。ホレホレ、出せ出せ」
「ムカつくわ~、月城のヤツ。おとなしくキョウに食われとけよ」
「あ~、でも、キョウのヤツも物好きだよな。あんなイモ女のどこがいいんだよ」
「言っても月城、モノはいいぜ。たぶん。いい体してるしよ」
などというやり取りが、聞くとはなしに聞こえてしまった。
『やっぱり、そういうことか……』
どうやら、田上が恵莉花をモノにできるかどうかで賭けをしていたようだ。
恵莉花は、そういう<ノリ>も嫌いだった。他人の<気持ち>を軽々しく賭けの対象にするなど。
同じ価値観の者同士でつるんでその中だけでやっているだけなら別に好きにしてくれていいにしても、巻き込まないでもらいたいと思っていた。
なんてことがあって滅入った気分を抱えた状態で家に帰ると、玄関前で紫外線遮断ジャケットのフードを頭から被って手袋をして花の手入れをしていたエンディミオンの姿に気付いた。
「ただいま」
「……おかえり……」
相変わらず愛想のない、見た目には子供にも見える父親だけれど、そうして挨拶を交わしただけでも恵莉花は自分がホッとするのが分かった。
しかも、
「…何かあったか……?」
後ろを通り過ぎようとした、自分より遥かに大きな体の<娘>に、エンディミオンは問い掛けた。
「あ…うん、大丈夫……」
不意の問い掛けに意表を突かれながらも、恵莉花の表情が柔らかくなる。父親がちゃんと自分のことを見てくれているのを改めて実感できて、嬉しかったのだろう。
自分をこの世に送り出した張本人である父親が、しっかりと気に掛けてくれている。
しかも子供が反抗的な態度を見せ始めてから慌てて気を遣ってるフリをするのではなく、物心がつく以前から、決して器用でも愛想よくもないが常に見てくれているのはちゃんと伝わっていたのだった。
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