ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第三幕

椿と紫音 その14

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基本的に怪我はない紫音しおんだけど、婦人警官に名前を訊かれても口を開こうとはしなかった。救急車に乗ることまでは承諾したものの、乗ってからまた、不安になったみたいだね。

だけど婦人警官も心得たもので、

「ごめんね、写真を撮らせてね」

そう言って装備していたカメラで彼の写真を撮って、

「少年の身元照合をお願いします。年齢は十歳前後。男児。身長は……」

紫音しおんの身体的特徴を無線で告げるとともに、写真を送信。彼の様子から、これまでにも保護されたりということがあって記録が残っているかもしれないと思ったみたいだ。

そしてそれは見事に当たり、

「一件の該当者有り。氏名は九戸辺くとべ紫音しおん。年齢は現在九歳。一年前にも校区外を一人で徘徊中に保護された前歴」

との返信が。

顔認証で検索を掛けたみたいだね。そのための写真ということか。それで、保護された時の前歴がヒットした。

どうやら警察としても、要注意案件として記録してるらしい。

ただ、今のところは、万が一何らかの事件があった時に迅速に対応できるようにという程度のものなんだろうけどね。

警察は、事件が起こってからでないと家庭内の問題には介入できないから。

それでも、紫音しおんの家に警察官を派遣して事情を説明するくらいのことはできるみたいで、すぐに手配したようだ。

こうして彼は病院に搬送され、どこも怪我はないことが確認されたものの、警察から連絡を受けた母親が駆け付けると、

「あんた! 何してんの!? こんなに他人様に迷惑かけて!!」

彼を叱責、右手を振り上げた。

だけどそれについては、スッと間に入った警官の体に阻まれて、紫音しおんには届かなかったのだった。

警官が自分の体で母親の殴打を受け止めたのは、叩くのをやめさせるために手を掴むだけでも問題になることがあるからだろうな。

<特別公務員暴行陵虐>等で訴えられる事例が実際にあるんだと思う。

だから、怪我したり命に係わるようなものでない限り、わざと自分の体で受け止めるというわけか。

なにしろ、そうしておけば逆に<公務執行妨害>や<暴行>として対処できる可能性も出るし。

一般市民が拳銃とかを所持している前提がない日本ならではの対応ではあるけど、利口だと思った。

「まあまあ、お母さん、落ち着いてください。今回の件は彼に何の落ち度もありませんでしたから。ちゃんと青信号の横断歩道を渡ってて、信号を見落とした自動車にぶつけられそうになったというだけです」

三十代後半くらいから四十代前半くらいのその警官は、すごく手慣れた感じで母親に応対したんだ。

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