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大希
家族が揃って穏やかに
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八日。月曜日。
今日は成人の日ですね。とは言え、現状では私達の中には成人を迎える方はいらっしゃいませんので、単に冬休み最終日ということになりますが。
「正直言うとさ~、そろそろ家でぐうたらするのも飽きてきたんだよね~」
ヒロ坊くんの家のリビングでゲームをしながら、千早が言いました。
確かに。元日からこちら、初詣に行った以外はほとんど家にこもっていましたからね。だからこそ、昨日、山下さんのお宅に行った時にはいつも以上に楽しかったのでしょう。私が山下さんや玲那さんと話していることにも意識が向かないほど、料理に夢中になっていたようでした。
そのおかげか、出来たハンバーグもいつも以上に美味しかった気がします。本当に、一般のレストランのそれにも決して引けはとっていないでしょう。そんな千早の料理を毎日口にできるとは、石生蔵家の方々も幸せですね。
そんなことも口にしつつ、やはり冬休み最終日もヒロ坊くんのいえにこもり、イチコ、フミ、カナ、私は受験や卒業に向けての勉強、千早とヒロ坊くんもいつもどおり予習を済ませた後でゲームやアニメの視聴を楽しんでいる状態でした。
『飽きてきた』
とは言いつつも、だからといって千早は、
『どこか連れて行って!』
などと強くは要求しません。
ここで皆と一緒に過ごすのが一番楽しいからでしょう。
『何かイベントがなければ退屈で仕方ない』
というのは、私は少し寂しいことのような気が、今ではしています。こうして家族が揃って穏やかに過ごせるだけで十分に楽しいということを知ってしまいましたので。
ひっきりなしにイベントを入れなければ間がもたない関係というのは、なんなのでしょう?
私自身で思い返すに、父や母と一緒にいる時にはそれほどのことはあまり覚えがないものの、相手によっては何か共通の話題やイベントをわざわざ用意しなければ苦痛だと感じることも確かにありました。
もし自身の家族に対してそう感じてしまうと想像すると、胸の奥にキリリとした痛みが走るのです。
ましてや、ヒロ坊くんに対してそんなことを思う私を思い浮かべると……
嫌です。そんなこと耐えられません。私は彼の傍にいられるだけで満たされるのです。それが、イベントを用意しなければ間がもたないようになってしまうとか、生きている意味がありません。
胸が締め付けられる感覚にたまらずに見詰めていると、それに気付いた彼が私を見て、ニッと笑いかけてくれました。
瞬間、私は天にも昇る気持ちでした。
この笑顔を守るためなら、私は自らの全身全霊を賭けることができるでしょう。
今日は成人の日ですね。とは言え、現状では私達の中には成人を迎える方はいらっしゃいませんので、単に冬休み最終日ということになりますが。
「正直言うとさ~、そろそろ家でぐうたらするのも飽きてきたんだよね~」
ヒロ坊くんの家のリビングでゲームをしながら、千早が言いました。
確かに。元日からこちら、初詣に行った以外はほとんど家にこもっていましたからね。だからこそ、昨日、山下さんのお宅に行った時にはいつも以上に楽しかったのでしょう。私が山下さんや玲那さんと話していることにも意識が向かないほど、料理に夢中になっていたようでした。
そのおかげか、出来たハンバーグもいつも以上に美味しかった気がします。本当に、一般のレストランのそれにも決して引けはとっていないでしょう。そんな千早の料理を毎日口にできるとは、石生蔵家の方々も幸せですね。
そんなことも口にしつつ、やはり冬休み最終日もヒロ坊くんのいえにこもり、イチコ、フミ、カナ、私は受験や卒業に向けての勉強、千早とヒロ坊くんもいつもどおり予習を済ませた後でゲームやアニメの視聴を楽しんでいる状態でした。
『飽きてきた』
とは言いつつも、だからといって千早は、
『どこか連れて行って!』
などと強くは要求しません。
ここで皆と一緒に過ごすのが一番楽しいからでしょう。
『何かイベントがなければ退屈で仕方ない』
というのは、私は少し寂しいことのような気が、今ではしています。こうして家族が揃って穏やかに過ごせるだけで十分に楽しいということを知ってしまいましたので。
ひっきりなしにイベントを入れなければ間がもたない関係というのは、なんなのでしょう?
私自身で思い返すに、父や母と一緒にいる時にはそれほどのことはあまり覚えがないものの、相手によっては何か共通の話題やイベントをわざわざ用意しなければ苦痛だと感じることも確かにありました。
もし自身の家族に対してそう感じてしまうと想像すると、胸の奥にキリリとした痛みが走るのです。
ましてや、ヒロ坊くんに対してそんなことを思う私を思い浮かべると……
嫌です。そんなこと耐えられません。私は彼の傍にいられるだけで満たされるのです。それが、イベントを用意しなければ間がもたないようになってしまうとか、生きている意味がありません。
胸が締め付けられる感覚にたまらずに見詰めていると、それに気付いた彼が私を見て、ニッと笑いかけてくれました。
瞬間、私は天にも昇る気持ちでした。
この笑顔を守るためなら、私は自らの全身全霊を賭けることができるでしょう。
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