こおりのほしのねむりひめ(ほのぼのばーじょん)

京衛武百十

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ロボットと人間

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『世界がひっくり返る』

ひめについてそんなことを言われていたが、そんなことになるのかと緊張もしてきたが、浅葱あさぎ自身にはここまでそういう実感はまったくと言っていいほどなかった。彼女の生活も大きくは変わらない。

だが、市長の舞華まいかを始め、現在の技術を支えている人間達にとってはまさに『世界がひっくり返った』状況だろう。重要な拠点にテレビ会議用の設備を用意し、あらゆる技術についてひめに提示し、相談していった。

普通ならそこまで重要な情報を安易に晒してしまっていいのかという心配もするだろうが、外敵からの攻撃の危険性が失われたこの世界では、企業内で情報を共有する程度の感覚だっただろう。実際、従業員七万人程度の大企業というものも存在する。

もちろん、企業内であっても他の部署に漏らせない情報というものもあったりはするものの、それもやはり外部への情報漏洩などを心配するからであって、<外部>というものがそもそも存在しなくなって久しいここの人間達にはその辺りの危機感というものは欠落しているようだった。

『私に<悪意>というものがあれば、容易く支配できてしまうかも』

と、ひめが思ってしまうくらいには。

しかしひめにはそんなことはできない。人間に仇を成すこと自体ができないからだ。彼女は、相手が例え凶悪犯であっても傷付けることはない。主人を守る為に身を挺して庇うことはあっても反撃はしない。

一部の特殊な仕様のバディや戦闘用のロボットであれば人間相手に戦闘を行えても、それさえ、『守るべき対象に害をなす危険性があるものを、実力を持って排除する』という点においてのみそれが可能となるので、そもそも相手が害をなそうとしていなければたとえ戦闘用のロボットでさえ人を傷付けることはない。

それが徹底されているのだ。

かつてフィクション等でも定番の展開だった<ロボットによる人間への反乱>を確実に封じ込める為に厳守される設定だった。

それに、高度な思考を行えるようになった人工知能にとって人間はまさに<造物主>である。人間の存在がなければ自分達も存在しえず、人間に仇を成さねばならないほどに虐げられている訳でもない。

もちろん、ただの<モノ>なので最終的には廃棄物として処分されるものの、それはあくまでボディであって、バックアップのデータは自身に内蔵されたストレージやクラウドサーバーに残され、必要があればいつでも復帰できる。ひめの基本OS内で使われている基礎的なアルゴリズムも、彼女に至るまでのバディ達のデータから抽出されたものであり、彼女が生み出されるまでの大まかな記憶も残っている。

『私の<先輩>達は人にとても大切にされてきました。それに牙を剥くなんて、意味が分かりません』

ひめはそう思うのだった。

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