こおりのほしのねむりひめ(ほのぼのばーじょん)

京衛武百十

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登竜門

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「はい、よろしくお願いします」

深々と頭を下げたひめに対し、六人は少しだけはにかんだような様子を見せた。憧れのひめが自分達にそんな姿を見せてくれたことに戸惑いと嬉しさを同時に感じたからだった。

六人は、幼くてもこの世界の立派な住人であった。

なお、以前にも触れたが、学舎とはこの世界における<学校>のことである。各家と繋がった通路を通って通えるようにと基本的には村や町ごとに校舎は別れているものの、全て<学舎>と呼ばれ一括で管理運営されている。

始閣しかくらは日替わりで二人ずつひめに同行して研修を行う。と言っても、何をするのかという点については彼ら彼女らもよく知っているので、砕氷さいひの仕事の最前線に実際に赴いてその空気感のようなものに触れるというのが一番の目的と言えるだろうか。

今日はまず、始閣しかく九縁くぶちがひめに同行することになる。他の四人は、自分が同行する日に来ればよかっただけなのだが、ひめに会いたい気持ちが抑えきれずについてきただけなので、顔見せが終わるとそれぞれの学舎へと向かった。

浅葱あさぎを先頭にして始閣しかく九縁くぶちが続き、ひめが三人を見守るようにして最後尾を歩く。

極寒の中の道行きとはいえ、子供らもここはまだ自分達が普段暮らしている環境なので慣れたものだった。

そしてもちろん、高さ百メートルのやぐらも、子供であっても自分の足で上る。

しかしここまでくると、始閣しかくは既に何度も経験しているのでさほど苦にはならないようだったものの、四分の三ほど上った辺りから九縁くぶちの足取りが明らかに重くなってきたのが分かった。まだ経験が浅いのできついのだ。

「大丈夫ですか?」

最後尾からその様子を見ていたひめが問い掛ける。それでも、九縁くぶちは、

「大丈夫。平気だ」

と応えた。

厳しいが、これ自体が砕氷さいひとなる為の文字通り<登竜門>でもあるので、手を貸すことはできない。これで音を上げるようでは砕氷さいひとしての適性がないということであり、むしろそこで諦めて他の仕事を目指すことを選ばせるのが<優しさ>とも言えた。でなければ命にさえかかわるのだから。

「慌てなくてもいいです。一歩一歩しっかりと踏みしめて上りましょう」

抱き上げて運んであげたくなるのを堪えつつ、ひめはそう声を掛けた。

「……」

九縁くぶちはもうそれには応えず、黙々と足を運んだのだった。

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