こおりのほしのねむりひめ(ほのぼのばーじょん)

京衛武百十

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ライバル心

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角泉かくせん釈侍しゃくじは、よく似た姉妹だった。顔つきも目つきも、僅かに身長が異なるというくらいで、ほとんど変わらない。そしてそれは、釈侍しゃくじの姉に対する感情から生じているものだということが、彼女の視線や表情から窺い知ることができた。

バディは人間の視線の動きや表情や声のトーンや発汗や鼓動や筋肉に緊張度合いなどから感情や心理状態を読み取ることができる。

角泉かくせんがひめに対して挨拶をした時、僅かに姉の方に視線を向けた後、それを追うようにして頭を下げたことからも分かった。姉を常に意識し、姉の真似をし、姉に負けまいとしているのが伝わってくる。

始閣しかく九縁くぶちの場合は、兄と妹という違いもあってか、ここまでではなかった。あちらは、順調に砕氷さいひへの道を突き進む兄への強い憧れは見て取れたが、対してこちらの場合は憧れと同時に対抗心も込められているようだ。

要するに<ライバル心>を燃やしているということかもしれない。

ただ、だからといって無理に背伸びをしているというのとも違うのが、やぐらを上る時の足取りからも伝わってくる。

『無理をしている人の足の運びは独特の危うさがありますが、釈侍しゃくじ様にはそれがありません。実に丁寧に確実に一歩一歩踏みしめています。既に砕氷さいひとしての心得を身に付けてるということなんでしょうね』

ここまでの四人と同等以上の資質を秘め、確実に伸ばしているというのが分かった。

普通ならここで<落ちこぼれ>と呼ばれるような者の一人や二人はいてもおかしくない筈が、六人が六人とも並々ならぬものを秘めているのが伝わってくる。

これは、先にも述べたとおり、砕氷さいひの仕事が非常に危険であるといういうことに加え、適性のない者は早い段階から振り落とされる為であろう。誰も『頑張れ頑張れ』と尻を叩いてくれない。『まだ諦めんな! お前ならできる!』と励ましてもくれない。『できない奴、自分を信じられない奴は今すぐ去れ』という形で、実際に現場に出る時点で厳選された者達だということか。

だから、ライバル心を燃やしていようとも、それで浮足立って自分を見失うような、他人の足を引っ張るような者はそもそも現場に出してもらえないということだった。

そう、自分の能力を伸ばすのではなく、ライバルの足を引っ張ることで上に立とうとするような人間は、そもそもここには来られないのだ。

そんな人間に現場をかき乱されては、命に係わるからである。

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