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愛してるぜ
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でもなあ、<終わり>ってヤツは必ずあるんだよなあ。
どれほど心は折れなかろうが、気力を振り絞ろうが、動かねえものは動かねえんだよ。
そしたらよ、行道が俺の首筋に噛み付いてきてよ、ブジブジと肉を喰いちぎったんだよ。
なのによお、ぜんぜん痛くねえんだよ。不思議なことによ。それどころか、これまで感じたことのねえ気持ちよさだったんだ。それこそ絶頂するくれえによ。実際、果てちまってた気もする。
気持ちよすぎて脳がバグったか、
「ぎゃあああああーっっ!!」
ってえ悲鳴をあげちまってた。
……いや、違うな。逆か。とんでもねえ痛みのせいで脳がバグって、痛みを快感にすり替えちまってるのかもしれねえ。
なるほどこれなら苦痛を感じねえで死んでいけるってえ寸法か。生き物ってなあよくできてやがる。
もう自分じゃ動かせねえ体が勝手にビクビクと痙攣してるのを感じながら、俺は空を見上げてた。青い、どこまでも青い、それこそ上下の感覚がなくなっちまいそうなほどに青い空だった。
けどよ、そこにポツンとなんか点みたいなものが。いやそうじゃねえな。何か飛んでやがるんだ。鳥じゃねえ。それどころか生き物ですらねえ。気付いた瞬間、ピンとくる。理解する。
『ドローン……?』
ああ、間違いねえ、ありゃドローンだ。よく見りゃ妙に古くせえ形をしてやがるが、確かにドローンだぜ。
はは……なんだ……ここにも人間がいたってのかよ……
そういうことだよなあ。獣がドローンを作って飛ばすわけねえよなあ。けどまあいい。今さらだ。それに、人間と一緒に暮らしてたところで、こんな幸せな気分になれた保証もねえしな。
ドローンを確認してすぐ、目が霞んできた。頭も働かねえ。意識が遠のく。視界が暗くなっていく。自分の体も認識できねえ。自分が今、どこにいるのか、何をしてるのか、それも分からなくなっていきやがる。なのに、見えるんだよ。
蟷姫……麻沙美……ようやく俺の番が来たな……
ああ、蟷姫と麻沙美の姿だ。これが、<お迎え>ってヤツか……?
まあそれもどうでもいい。行道に食われながら蟷姫と麻沙美に会えたんだ。それでいいじゃねえか……
いいな……すげえいい気分だ……愛してるぜ、蟷姫、麻沙美、行道……
こうして相堂幸正はその命を終えた。
「……」
完全に動かなくなった<父親>の体を、行道は興味が失せたとばかりにその場に放り出す。彼自身の種族としての習性に従って。そして密林に溶け込むようにしてどこへともなく去っていく。
力なく地面に伏し、光を失った目でただ虚空を見つめる相堂幸正の貌は、それでもどこか満足気にも見えたのだった。
どれほど心は折れなかろうが、気力を振り絞ろうが、動かねえものは動かねえんだよ。
そしたらよ、行道が俺の首筋に噛み付いてきてよ、ブジブジと肉を喰いちぎったんだよ。
なのによお、ぜんぜん痛くねえんだよ。不思議なことによ。それどころか、これまで感じたことのねえ気持ちよさだったんだ。それこそ絶頂するくれえによ。実際、果てちまってた気もする。
気持ちよすぎて脳がバグったか、
「ぎゃあああああーっっ!!」
ってえ悲鳴をあげちまってた。
……いや、違うな。逆か。とんでもねえ痛みのせいで脳がバグって、痛みを快感にすり替えちまってるのかもしれねえ。
なるほどこれなら苦痛を感じねえで死んでいけるってえ寸法か。生き物ってなあよくできてやがる。
もう自分じゃ動かせねえ体が勝手にビクビクと痙攣してるのを感じながら、俺は空を見上げてた。青い、どこまでも青い、それこそ上下の感覚がなくなっちまいそうなほどに青い空だった。
けどよ、そこにポツンとなんか点みたいなものが。いやそうじゃねえな。何か飛んでやがるんだ。鳥じゃねえ。それどころか生き物ですらねえ。気付いた瞬間、ピンとくる。理解する。
『ドローン……?』
ああ、間違いねえ、ありゃドローンだ。よく見りゃ妙に古くせえ形をしてやがるが、確かにドローンだぜ。
はは……なんだ……ここにも人間がいたってのかよ……
そういうことだよなあ。獣がドローンを作って飛ばすわけねえよなあ。けどまあいい。今さらだ。それに、人間と一緒に暮らしてたところで、こんな幸せな気分になれた保証もねえしな。
ドローンを確認してすぐ、目が霞んできた。頭も働かねえ。意識が遠のく。視界が暗くなっていく。自分の体も認識できねえ。自分が今、どこにいるのか、何をしてるのか、それも分からなくなっていきやがる。なのに、見えるんだよ。
蟷姫……麻沙美……ようやく俺の番が来たな……
ああ、蟷姫と麻沙美の姿だ。これが、<お迎え>ってヤツか……?
まあそれもどうでもいい。行道に食われながら蟷姫と麻沙美に会えたんだ。それでいいじゃねえか……
いいな……すげえいい気分だ……愛してるぜ、蟷姫、麻沙美、行道……
こうして相堂幸正はその命を終えた。
「……」
完全に動かなくなった<父親>の体を、行道は興味が失せたとばかりにその場に放り出す。彼自身の種族としての習性に従って。そして密林に溶け込むようにしてどこへともなく去っていく。
力なく地面に伏し、光を失った目でただ虚空を見つめる相堂幸正の貌は、それでもどこか満足気にも見えたのだった。
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