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ツェザリ・カレンバハの章
二度と人としての生を歩むことは
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なお、アラベルは、ツェザリと再会するまでの間にも、実は二人の子供を産んでいる。しかもいずれも、父親さえ誰かも分からない子供だった。いや、ツェザリが手に掛けた男児も、果たして彼女が一緒に暮らしていた男との間の子であったのかどうかすら定かではない。
さらにアラベルは、二人とも自ら首を絞めて殺害している。邪魔だったからだ。なので、最後の男児にしても、果たして育てる気があったのかどうか……
彼女が産み捨てた子供の一人は、隣家の娘に引き取られ育てられた。そちらの娘には、自分が産んだ子ではない赤ん坊に対してさえ、強い母性が目覚めた。にも拘らず、アラベルには、微塵もそれが生じなかったということだろう。
『子供さえ生めば必ず母性は目覚める』
などというのは嘘であるとよく分かる。アラベルは本当にただの人間だった。それでも、そんな<ただの人間>にさえ、そういう者がいるということだろう。
ゆえに、アラベルがツェザリを産んだのは、ある意味では必然だったのかもしれない。
完全に人間ではなくなったツェザリは、ボリスに対する関心さえ失い、その日の夜にはもう、次の犠牲者を生み出していた。
もっとも、積極的に探し出して妊婦を殺していくという犯行ではなく、たまたま出くわした被害者を容赦なく殺害していくというものだったので、殺された者達は本当に『運が悪かった』としか言いようのないものだった。
なお、ボリスの方は、多数の証言があり、加えてアラベルとその子供が、よりにもよって役所の一室でむごたらしく殺されるというとんでもない事件が起こったことも手伝って、
「邪魔だ! どこへなりと行くがいい!!」
と吐き捨てられただけで三日後には釈放された。アラベルとその子の件については、ボリスが拘束されている真っ最中だったこともあり当然のごとく疑いすらかけられず、捨て置かれた形となった。
「ツェザリ……」
状況的にツェザリは異常な殺人者により連れ去られて殺されたものと考えられていて、ボリスもそう受け止めていたようだ。彼はその後も身寄りのない子供を保護しては育てるということを行っていたが、生涯、ツェザリと直接再会することはなかった。そのため、彼についても今後は詳細に触れることはない。
また、彼の身の回りで異様な怪異が生じることも、二度となかった。
それらはやはり、ツェザリに引き寄せられる形で起こっていたと言えるのだろうか。
こうしてツェザリは、二度と人としての生を歩むことはなかったのである。
さらにアラベルは、二人とも自ら首を絞めて殺害している。邪魔だったからだ。なので、最後の男児にしても、果たして育てる気があったのかどうか……
彼女が産み捨てた子供の一人は、隣家の娘に引き取られ育てられた。そちらの娘には、自分が産んだ子ではない赤ん坊に対してさえ、強い母性が目覚めた。にも拘らず、アラベルには、微塵もそれが生じなかったということだろう。
『子供さえ生めば必ず母性は目覚める』
などというのは嘘であるとよく分かる。アラベルは本当にただの人間だった。それでも、そんな<ただの人間>にさえ、そういう者がいるということだろう。
ゆえに、アラベルがツェザリを産んだのは、ある意味では必然だったのかもしれない。
完全に人間ではなくなったツェザリは、ボリスに対する関心さえ失い、その日の夜にはもう、次の犠牲者を生み出していた。
もっとも、積極的に探し出して妊婦を殺していくという犯行ではなく、たまたま出くわした被害者を容赦なく殺害していくというものだったので、殺された者達は本当に『運が悪かった』としか言いようのないものだった。
なお、ボリスの方は、多数の証言があり、加えてアラベルとその子供が、よりにもよって役所の一室でむごたらしく殺されるというとんでもない事件が起こったことも手伝って、
「邪魔だ! どこへなりと行くがいい!!」
と吐き捨てられただけで三日後には釈放された。アラベルとその子の件については、ボリスが拘束されている真っ最中だったこともあり当然のごとく疑いすらかけられず、捨て置かれた形となった。
「ツェザリ……」
状況的にツェザリは異常な殺人者により連れ去られて殺されたものと考えられていて、ボリスもそう受け止めていたようだ。彼はその後も身寄りのない子供を保護しては育てるということを行っていたが、生涯、ツェザリと直接再会することはなかった。そのため、彼についても今後は詳細に触れることはない。
また、彼の身の回りで異様な怪異が生じることも、二度となかった。
それらはやはり、ツェザリに引き寄せられる形で起こっていたと言えるのだろうか。
こうしてツェザリは、二度と人としての生を歩むことはなかったのである。
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