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ツェザリ・カレンバハの章
止まぬ妊婦殺害
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その後もツェザリは、ただただ各地をさ迷い歩いて、目に付いた妊婦を次々と殺害していった。最初に彼が母親のアラベルを惨殺してから実に二十年以上の時間が経過していた。
止まぬ妊婦殺害に、人々は、一人の人間が起こしているのではなく、複数の狂人、もしくは何らかの悪魔的儀式として<悪魔崇拝者>らが起こしているのではと考えてさえいたそうだ。
実際、同じように妊婦を殺害した(とされている)者が捕らえられて、その場でリンチによって殺されたりという事件さえ起こっている。もっとも、そうやって<連続妊婦殺害犯>が死んだと思って安心してもすぐまた事件は起こるので、複数犯説が説得力を持ってしまったのだろう。
加えて、犯人像には様々な憶測が入り乱れ、<単なる狂人>説や<悪魔崇拝者>説は元より、ホームレスによる犯行という見方がされたりもしたゆえに、
<ホームレス狩り>
が一時期横行したことさえあった。その凶行がまかり通ってしまった背景には、少年らによる<掃除>と称したホームレスへの集団リンチが横行していたのも影響しただろう。
<掃除>については、町を徘徊する若者の取り締まりやパトロールの強化などにより下火にこそなったものの、<妊婦殺害>と並んでまるで社会そのものの病巣のように完全には止むことはなかった。
もっとも、妊婦殺害の主たる実行犯であるはずのツェザリ自身は、実は犯行の発覚を恐れたり、自身が実行犯であるとして逮捕されることを恐れてはいなかった。邪魔をするものがいれば、
<悪魔に与する者>
として一緒に殺せばいいと考えていたし、実際、その場に居合わせただけの人間や邪魔をしようとした人間も容赦なく殺害している。なのに、捕まらない。
なお、彼がまだ青年だった頃に殺害した<ブリギッテ・シェーンベルク>の夫については、たまたま深い眠りについていたことで犯行に気付くことなく、そのままにされている。
が、朝、目覚めた夫が見たものは、腹を切り裂かれて血塗れで冷たくなった妻と、その腹の上に並べられた<肉片と化した我が子>であり、彼の精神は破綻。妻と子を殺した犯人を捜して家を飛び出し、そのまま消息不明となってしまったそうだ。
ただ、誰にも知られることなく終わってしまったことなので敢えて触れておくが、実は夫は、復讐を誓い犯人を捜し歩いているその途中に<ホームレス狩り>に遭い、命を落としている。身元を示すようなものを何一つ持っていなかったことで、本当に身元不明のホームレスの一人として処理されてしまったのである。
そう。愛する妻と子の復讐を誓い犯人の姿を求めた夫は、『ホームレスこそが犯人だ!』とあらぬ疑いを抱いた者達により、<疑わしきホームレス>として殺されるという、皮肉と言えばあまりにも皮肉な最後を迎えたのであった。
止まぬ妊婦殺害に、人々は、一人の人間が起こしているのではなく、複数の狂人、もしくは何らかの悪魔的儀式として<悪魔崇拝者>らが起こしているのではと考えてさえいたそうだ。
実際、同じように妊婦を殺害した(とされている)者が捕らえられて、その場でリンチによって殺されたりという事件さえ起こっている。もっとも、そうやって<連続妊婦殺害犯>が死んだと思って安心してもすぐまた事件は起こるので、複数犯説が説得力を持ってしまったのだろう。
加えて、犯人像には様々な憶測が入り乱れ、<単なる狂人>説や<悪魔崇拝者>説は元より、ホームレスによる犯行という見方がされたりもしたゆえに、
<ホームレス狩り>
が一時期横行したことさえあった。その凶行がまかり通ってしまった背景には、少年らによる<掃除>と称したホームレスへの集団リンチが横行していたのも影響しただろう。
<掃除>については、町を徘徊する若者の取り締まりやパトロールの強化などにより下火にこそなったものの、<妊婦殺害>と並んでまるで社会そのものの病巣のように完全には止むことはなかった。
もっとも、妊婦殺害の主たる実行犯であるはずのツェザリ自身は、実は犯行の発覚を恐れたり、自身が実行犯であるとして逮捕されることを恐れてはいなかった。邪魔をするものがいれば、
<悪魔に与する者>
として一緒に殺せばいいと考えていたし、実際、その場に居合わせただけの人間や邪魔をしようとした人間も容赦なく殺害している。なのに、捕まらない。
なお、彼がまだ青年だった頃に殺害した<ブリギッテ・シェーンベルク>の夫については、たまたま深い眠りについていたことで犯行に気付くことなく、そのままにされている。
が、朝、目覚めた夫が見たものは、腹を切り裂かれて血塗れで冷たくなった妻と、その腹の上に並べられた<肉片と化した我が子>であり、彼の精神は破綻。妻と子を殺した犯人を捜して家を飛び出し、そのまま消息不明となってしまったそうだ。
ただ、誰にも知られることなく終わってしまったことなので敢えて触れておくが、実は夫は、復讐を誓い犯人を捜し歩いているその途中に<ホームレス狩り>に遭い、命を落としている。身元を示すようなものを何一つ持っていなかったことで、本当に身元不明のホームレスの一人として処理されてしまったのである。
そう。愛する妻と子の復讐を誓い犯人の姿を求めた夫は、『ホームレスこそが犯人だ!』とあらぬ疑いを抱いた者達により、<疑わしきホームレス>として殺されるという、皮肉と言えばあまりにも皮肉な最後を迎えたのであった。
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