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税金が高いからお父さんのお小遣い減らすって
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「税金が高いからお父さんのお小遣い減らすってお母さんが言い出して、またケンカになったのよ。だから家出してきちゃった」
日曜日の朝。いつもよりずっと早い時間にうちにやってきた真理恵《まりえ》ちゃんが、美智果と一緒に部屋に入るなりそう言い出したのが聞こえてきた。
「家出? まあ別にいいけど」
もし家出したらうちに来てくれていいっていつも言ってるから僕も今回はもしかしてと思ったけど、昼過ぎ、真理恵ちゃんの携帯に電話が掛かってきて結局は今回の家出も数時間で終わることになったみたいだった。
「ねえ、パパ。税金ってそんなに高いの?」
真理恵ちゃんが帰ってから美智果がそんなことを訊いてきた。だから僕もそれに応える。
「まあ、安くはないけど、お父さんは基本的に納得して払ってるよ」
「へぇ~」
「税金が高いと愚痴る人は確かに多いね。でもお父さんは必ずしもそうは思わない」
「なんで?」
「自分が払ってる税金の額と、自分が受けてる恩恵とを考えたら、圧倒的に受けてる恩恵の方が大きいからだよ」
「そうなの?」
「そうだよ。例えば、自分が一生の間に払う税金の額を一億円と仮定しても、自分が今、日本で暮らしてることで受けられる恩恵は、一億円より遥かに大きい筈だから」
「よく分かんない」
「う~ん、そうだなあ、じゃあまず、美智果が学校に行くまでの道路で考えてみよう。
アスファルトで舗装されて側溝も整備されて信号もついてて歩きやすくてまずまず安全なこの道路、いくらで作れるでしょうか?」
「え~? ぜんぜん分かんないよ」
「あはは。実はお父さんも正確には分からない。だけど、たぶん、一億円では作れないよ。それだけでもう、払った税金以上の恩恵を受けてるってことになるんだよな」
「…? ……?」
「美智果にはまだ難しかったかな。でも、道路をはじめとしたライフラインがこれだけしっかり整備されてて、それを気軽に利用できるっていうだけで一億円どころじゃない恩恵を受けてるのは事実なんだ。だからお父さんは納得して税金を払ってる。
確かに安くはないかもしれなくてもそれ以上の恩恵を受けてるんだから『払いたくない』なんてのは甘えだとお父さんは思ってる。日本国民としての三大義務を知ってるかな?」
「え、と、…なんだっけ?」
「納税の義務。勤労の義務。子供に教育を受けさせる義務。の三つだよ。これは大事なことだから、覚えておいた方がいいな」
「難しいなあ」
「まあ、今は難しく感じるかもしれないけど、そのうち分かるよ」
僕はそう言って美智果に微笑みかけたのだった。
日曜日の朝。いつもよりずっと早い時間にうちにやってきた真理恵《まりえ》ちゃんが、美智果と一緒に部屋に入るなりそう言い出したのが聞こえてきた。
「家出? まあ別にいいけど」
もし家出したらうちに来てくれていいっていつも言ってるから僕も今回はもしかしてと思ったけど、昼過ぎ、真理恵ちゃんの携帯に電話が掛かってきて結局は今回の家出も数時間で終わることになったみたいだった。
「ねえ、パパ。税金ってそんなに高いの?」
真理恵ちゃんが帰ってから美智果がそんなことを訊いてきた。だから僕もそれに応える。
「まあ、安くはないけど、お父さんは基本的に納得して払ってるよ」
「へぇ~」
「税金が高いと愚痴る人は確かに多いね。でもお父さんは必ずしもそうは思わない」
「なんで?」
「自分が払ってる税金の額と、自分が受けてる恩恵とを考えたら、圧倒的に受けてる恩恵の方が大きいからだよ」
「そうなの?」
「そうだよ。例えば、自分が一生の間に払う税金の額を一億円と仮定しても、自分が今、日本で暮らしてることで受けられる恩恵は、一億円より遥かに大きい筈だから」
「よく分かんない」
「う~ん、そうだなあ、じゃあまず、美智果が学校に行くまでの道路で考えてみよう。
アスファルトで舗装されて側溝も整備されて信号もついてて歩きやすくてまずまず安全なこの道路、いくらで作れるでしょうか?」
「え~? ぜんぜん分かんないよ」
「あはは。実はお父さんも正確には分からない。だけど、たぶん、一億円では作れないよ。それだけでもう、払った税金以上の恩恵を受けてるってことになるんだよな」
「…? ……?」
「美智果にはまだ難しかったかな。でも、道路をはじめとしたライフラインがこれだけしっかり整備されてて、それを気軽に利用できるっていうだけで一億円どころじゃない恩恵を受けてるのは事実なんだ。だからお父さんは納得して税金を払ってる。
確かに安くはないかもしれなくてもそれ以上の恩恵を受けてるんだから『払いたくない』なんてのは甘えだとお父さんは思ってる。日本国民としての三大義務を知ってるかな?」
「え、と、…なんだっけ?」
「納税の義務。勤労の義務。子供に教育を受けさせる義務。の三つだよ。これは大事なことだから、覚えておいた方がいいな」
「難しいなあ」
「まあ、今は難しく感じるかもしれないけど、そのうち分かるよ」
僕はそう言って美智果に微笑みかけたのだった。
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