27 / 2,362
ハーレム
鳥人間(マジで少女じゃねーか)
しおりを挟む
エレクシアがローバーのドアを開けて体を外に出した瞬間、屋根の上にいた鳥人間はこの時を待っていたとばかりに鉤爪のついた足で彼女の頭を捉えた。
と思ったら、捉えたのはエレクシアの方だった。鳥人間の足首をがっちりと掴み、離さない。
「ギャイッ!! ギアッッ!!」」
切り裂くような高い声が耳に届いてくる。鳥人間が叫んでるようだ。サルの後ろ脚に鉤爪を付けたようなそれをガチガチと鳴らしながらエレクシアの頭を引っ掻こうとする。
が、無駄な抵抗だった。危険を感じれば出力のリミッターを外して自動車さえ持ち上げるほどの力を発揮するエレクシアに掛かれば、幼児が悪戯しようとしてるようなものでしかない。
「危機対応モード。なるべく傷付けずに対処しろ」
俺がそう命じると、「承知しました」とエレクシアは冷静に応えた。
足首を掴んだまま地面に降り立ったエレクシアに、鳥人間はローバーに掴まりながら両脚をばたつかせて必死に抵抗する。その姿は、無断で高いところに上って母親に叱られて引きずりおろされそうになってる子供にも見えなくはなかった。思ったよりも体が小さい。ローティーンくらいの大きさしかなさそうだ。昨日見た時には羽も含めた印象だったから大きく感じただけだったようだな。それでもこの羽で羽ばたいて飛ぶには無理がある大きさだが。
「ギッ! ギャッ! ギャイィッ!!」
霧雨みたいな細かい雨が降る中、五分くらいそうやって暴れた鳥人間はさすがに疲れたのかハアハアと肩で息をしながら動きが止まってしまった。そこでエレクシアが足首を掴んでいた手をそっと離すと、するするとローバーをよじ登ってまた屋根の上に戻ったようだった。
ドローンカメラで見るとエレクシアの方を睨み付けたままルーフキャリアの上にしゃがみ込み、やはりハアハアと荒い息をしながら佇んでいた。
ここまでされても逃げるんじゃなくてそこにいようとするとか、どんだけ気に入ったんだか。
だが取り敢えず諦めたようなので、エレクシアには刃の為の食料の確保に向かってもらった。その間に俺は、密の食事の用意をする。今回はエレクシアが用意してくれてあったサンドイッチだ。密用にはプレーンな玉子サンドと野菜サンドを与える。
刃はサンドイッチには全く興味すら示さないのでエレクシアが生きた小動物を取ってきてくれるのを待つとして、サンドイッチをもりもりと食べる密の横で、俺は自分用のサンドイッチを口にしながら、鳥人間が映し出されたモニターを眺めた。
そこには、まるで拗ねた子供が雨の中でしゃがみこんでるように見える姿が映し出されていた。その姿が何だか可哀想にも思えてきてしまう。だからつい、ちょうど大型のネズミのような小動物を捕まえて戻ってきたエレクシアに命じてしまった。
「ルーフキャリアにパラソルを立てて雨よけを作ってやれないか?」
食事の為に外に出た刃に小動物を渡しつつ、エレクシアは俺の無茶振りにも冷静に「やってみます」と応じ、リアゲートを開けて積み込んであった休息用のビーチパラソルと、補修用の針金を取り出し、リアゲートに取り付けられた梯子を上って屋根に上がった。
カメラの画面に入ってきたエレクシアの腰には、刃に渡したのと同じような小動物が吊り下げられているのが見えた。動かないのでどうやら既に死んでるらしい。捕まえる時に誤って死なせてしまったのだろうか。彼女にしては珍しいミスだと思っていると、屋根の上にパラソルを置いたエレクシアがその小動物を手に取り、しゃがみ込んだ鳥人間の前へと放り投げた。ああ、なるほど、そっち用にも捕まえてきたということか。
ビクッと体を震わせ羽を広げて臨戦態勢を取った鳥人間、いや、鳥少女だったが、エレクシアがルーフキャリアにパラソルを針金で固定し始めるとその様子を警戒しつつ眺め、しかし自分の方には向かってこないことが確認できたのか、今度は足元に転がった小動物をそっと手に取り、ふんふんと匂いを嗅ぎ始めた。そしてがぶりとかじりつく。
キャビンの中で密がサンドイッチを、外では刃が雨に打たれながら小動物を、ローバーの屋根の上では鳥少女が同じく小動物を黙々と食べているという、ややシュールな光景が繰り広げられていたのだった。
鳥少女の食事が終わる前にエレクシアによるパラソルの設置も終わり、刃は先に食事を終えてちょうど降っていた雨で体を洗い、密はシートで昼寝を始め、俺も食事を終えてタオルを用意していた。それをエレクシアに渡すと、彼女は刃の体を拭いてキャビンに上がらせ、次に自分の体を拭いてキャビンへと上がってきた。
さらに彼女が新しいタオルで刃の体と自分の体を仕上げ拭きすると、キャビンの中にホッとした空気が広がった。
俺はそれを感じながらまたモニターを見る。とそこには、いつの間にか食事を終えてパラソルの下で雨を除けながら毛繕いをする鳥少女の姿があったのだった。
と思ったら、捉えたのはエレクシアの方だった。鳥人間の足首をがっちりと掴み、離さない。
「ギャイッ!! ギアッッ!!」」
切り裂くような高い声が耳に届いてくる。鳥人間が叫んでるようだ。サルの後ろ脚に鉤爪を付けたようなそれをガチガチと鳴らしながらエレクシアの頭を引っ掻こうとする。
が、無駄な抵抗だった。危険を感じれば出力のリミッターを外して自動車さえ持ち上げるほどの力を発揮するエレクシアに掛かれば、幼児が悪戯しようとしてるようなものでしかない。
「危機対応モード。なるべく傷付けずに対処しろ」
俺がそう命じると、「承知しました」とエレクシアは冷静に応えた。
足首を掴んだまま地面に降り立ったエレクシアに、鳥人間はローバーに掴まりながら両脚をばたつかせて必死に抵抗する。その姿は、無断で高いところに上って母親に叱られて引きずりおろされそうになってる子供にも見えなくはなかった。思ったよりも体が小さい。ローティーンくらいの大きさしかなさそうだ。昨日見た時には羽も含めた印象だったから大きく感じただけだったようだな。それでもこの羽で羽ばたいて飛ぶには無理がある大きさだが。
「ギッ! ギャッ! ギャイィッ!!」
霧雨みたいな細かい雨が降る中、五分くらいそうやって暴れた鳥人間はさすがに疲れたのかハアハアと肩で息をしながら動きが止まってしまった。そこでエレクシアが足首を掴んでいた手をそっと離すと、するするとローバーをよじ登ってまた屋根の上に戻ったようだった。
ドローンカメラで見るとエレクシアの方を睨み付けたままルーフキャリアの上にしゃがみ込み、やはりハアハアと荒い息をしながら佇んでいた。
ここまでされても逃げるんじゃなくてそこにいようとするとか、どんだけ気に入ったんだか。
だが取り敢えず諦めたようなので、エレクシアには刃の為の食料の確保に向かってもらった。その間に俺は、密の食事の用意をする。今回はエレクシアが用意してくれてあったサンドイッチだ。密用にはプレーンな玉子サンドと野菜サンドを与える。
刃はサンドイッチには全く興味すら示さないのでエレクシアが生きた小動物を取ってきてくれるのを待つとして、サンドイッチをもりもりと食べる密の横で、俺は自分用のサンドイッチを口にしながら、鳥人間が映し出されたモニターを眺めた。
そこには、まるで拗ねた子供が雨の中でしゃがみこんでるように見える姿が映し出されていた。その姿が何だか可哀想にも思えてきてしまう。だからつい、ちょうど大型のネズミのような小動物を捕まえて戻ってきたエレクシアに命じてしまった。
「ルーフキャリアにパラソルを立てて雨よけを作ってやれないか?」
食事の為に外に出た刃に小動物を渡しつつ、エレクシアは俺の無茶振りにも冷静に「やってみます」と応じ、リアゲートを開けて積み込んであった休息用のビーチパラソルと、補修用の針金を取り出し、リアゲートに取り付けられた梯子を上って屋根に上がった。
カメラの画面に入ってきたエレクシアの腰には、刃に渡したのと同じような小動物が吊り下げられているのが見えた。動かないのでどうやら既に死んでるらしい。捕まえる時に誤って死なせてしまったのだろうか。彼女にしては珍しいミスだと思っていると、屋根の上にパラソルを置いたエレクシアがその小動物を手に取り、しゃがみ込んだ鳥人間の前へと放り投げた。ああ、なるほど、そっち用にも捕まえてきたということか。
ビクッと体を震わせ羽を広げて臨戦態勢を取った鳥人間、いや、鳥少女だったが、エレクシアがルーフキャリアにパラソルを針金で固定し始めるとその様子を警戒しつつ眺め、しかし自分の方には向かってこないことが確認できたのか、今度は足元に転がった小動物をそっと手に取り、ふんふんと匂いを嗅ぎ始めた。そしてがぶりとかじりつく。
キャビンの中で密がサンドイッチを、外では刃が雨に打たれながら小動物を、ローバーの屋根の上では鳥少女が同じく小動物を黙々と食べているという、ややシュールな光景が繰り広げられていたのだった。
鳥少女の食事が終わる前にエレクシアによるパラソルの設置も終わり、刃は先に食事を終えてちょうど降っていた雨で体を洗い、密はシートで昼寝を始め、俺も食事を終えてタオルを用意していた。それをエレクシアに渡すと、彼女は刃の体を拭いてキャビンに上がらせ、次に自分の体を拭いてキャビンへと上がってきた。
さらに彼女が新しいタオルで刃の体と自分の体を仕上げ拭きすると、キャビンの中にホッとした空気が広がった。
俺はそれを感じながらまたモニターを見る。とそこには、いつの間にか食事を終えてパラソルの下で雨を除けながら毛繕いをする鳥少女の姿があったのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
162
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる