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大家族
バカ息子(せめて見送りくらいさせろってんだ)
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「こちらですね」
嗅覚センサーの感度を最高にまで上げて犬のように匂いで追跡するエレクシアが、俺を誘導する。しかしもう、十キロほど歩いている。本当に子供の足でこんなところまできたのか?と思ってしまう。と言っても人間のそれとは比較するだけ無駄か。
「!?」
その時、頬に何かが当たった感触に、俺は空を見上げてしまった。
「雨ですね……急ぎましょう。匂いが消えてしまいます」
そう言うエレクシアに対し、俺は命じた。
「先に行ってくれ。お前一人ならすぐに見付けられるだろ」
だが、やっぱり彼女は真っ直ぐに俺を見詰めて言った。
「ここが安全な人間社会であればその命令も聞けますが、そうではありません。事実、今もマスターを狙っている獣がいます。私が離れればすぐにでも襲い掛かってくるでしょう。
何度も申し上げますが、私はマスターを守る為に存在するのです。元よりこの世界に適応した生物として生まれた誉(ほまれ)よりもマスターの方が遥かに脆弱で命の危険に曝されているのです。冷静にリスクを比較すれば、その命令には従えません」
分かっていた筈の返答に、俺は苦笑いしか浮かばなかった。
「やれやれ…お前は本当にお前だな。分かった。急ごう」
痛む足に鞭を入れ、俺は歩を進めた。思うに任せない自分の不甲斐無さに唇を噛みながら、誉の無事を祈る。
そうだ。エレクシアの言ったとおり、誉はこの世界で生きる能力を持って生まれてきた。下手に人間として育てずに、あいつの能力を伸ばす形で成長できるようにしてきたつもりだ。それが活かされてることを信じよう。
人間の子供が親が目を離した隙に勝手に遊びに行くのとは違う。親の下を離れて冒険に出られるということは、もう、その力を持っているということの筈なんだ。こうやって親とはぐれる形で巣立つ個体もいるんだろう。もしこのまま見付からなくても、それはあいつが巣立っていったということなんだ……
けど……
けど、せめて見送りくらいさせろよ、バカ息子が……!
それが人間である俺の勝手な感傷だっていうことも分かってる。でもな、やっぱり納得できないんだよ。少なくとも俺が生きてる間は、俺の人間としての我儘も多少は言わせてもらうぞ。
と、何気なくエレクシアを見た時、枝にぶら下がったまま、彼女は遠くを見詰めていた。
「…どうした…?」
問い掛ける俺に、エレクシアは思いもかけない返事をする。
「ロボットの…おそらくメイトギアの信号です…。微弱ですが、間違いありません」
「…なに…!?」
思わず声を上げる俺に、さらに信じられない言葉が掛けられる。
「子供を一人、保護していると発信しています。映像も受信しました。誉です」
嗅覚センサーの感度を最高にまで上げて犬のように匂いで追跡するエレクシアが、俺を誘導する。しかしもう、十キロほど歩いている。本当に子供の足でこんなところまできたのか?と思ってしまう。と言っても人間のそれとは比較するだけ無駄か。
「!?」
その時、頬に何かが当たった感触に、俺は空を見上げてしまった。
「雨ですね……急ぎましょう。匂いが消えてしまいます」
そう言うエレクシアに対し、俺は命じた。
「先に行ってくれ。お前一人ならすぐに見付けられるだろ」
だが、やっぱり彼女は真っ直ぐに俺を見詰めて言った。
「ここが安全な人間社会であればその命令も聞けますが、そうではありません。事実、今もマスターを狙っている獣がいます。私が離れればすぐにでも襲い掛かってくるでしょう。
何度も申し上げますが、私はマスターを守る為に存在するのです。元よりこの世界に適応した生物として生まれた誉(ほまれ)よりもマスターの方が遥かに脆弱で命の危険に曝されているのです。冷静にリスクを比較すれば、その命令には従えません」
分かっていた筈の返答に、俺は苦笑いしか浮かばなかった。
「やれやれ…お前は本当にお前だな。分かった。急ごう」
痛む足に鞭を入れ、俺は歩を進めた。思うに任せない自分の不甲斐無さに唇を噛みながら、誉の無事を祈る。
そうだ。エレクシアの言ったとおり、誉はこの世界で生きる能力を持って生まれてきた。下手に人間として育てずに、あいつの能力を伸ばす形で成長できるようにしてきたつもりだ。それが活かされてることを信じよう。
人間の子供が親が目を離した隙に勝手に遊びに行くのとは違う。親の下を離れて冒険に出られるということは、もう、その力を持っているということの筈なんだ。こうやって親とはぐれる形で巣立つ個体もいるんだろう。もしこのまま見付からなくても、それはあいつが巣立っていったということなんだ……
けど……
けど、せめて見送りくらいさせろよ、バカ息子が……!
それが人間である俺の勝手な感傷だっていうことも分かってる。でもな、やっぱり納得できないんだよ。少なくとも俺が生きてる間は、俺の人間としての我儘も多少は言わせてもらうぞ。
と、何気なくエレクシアを見た時、枝にぶら下がったまま、彼女は遠くを見詰めていた。
「…どうした…?」
問い掛ける俺に、エレクシアは思いもかけない返事をする。
「ロボットの…おそらくメイトギアの信号です…。微弱ですが、間違いありません」
「…なに…!?」
思わず声を上げる俺に、さらに信じられない言葉が掛けられる。
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