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シモーヌ

星歴と銀河歴(信じられないかもだが)

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『非常に申し上げにくいのですが……』

とは前置きしたものの、俺は敢えて変に誤魔化さずにはっきりと告げた。

「まずは、今は星歴二〇八七年。銀河歴で言うとおそらく三二四八年。細かい誤差は計算してないですが大体そのくらいで、コーネリアス号の進宙からは二千二百年以上経ってる。そして貴女は、たぶん、秋嶋あきしまシモーヌのコピー……」

「!?」

俺の言葉に、彼女はビクンっと、椅子から飛び上がりそうなほどに反応した。透明だからよく分からないが、きっと普通の状態だったら血の気が引いた顔色をしていただろう。

「……それは、事実なのですか……?」

震える声で問い掛ける彼女に、俺は、

「残念ながら…」

と応えるしかできなかった。

ちなみに、銀河歴元年は西暦二六七四年。星歴元年は銀河歴一一六二年。西暦で言うと今年は五九二一年ってことになるかな。実はこの辺は諸説あって、総合政府が公式に認めてる暦ではこれということになっている。というのも、銀河歴が始まった頃に一時期地球政府と独自に植民を目指していた各国や各勢力の間でごたごた(戦争まではいかなかったらしいがかなり揉めたようだ)があって、銀河歴が始まった年数が説によって(と言うかそれぞれの自治政府によってか)数百年くらい前後してたりするんだが、まあこれは余談なので置いておく。コーネリアス号を建造したJAPAN-2ジャパンセカンド社は総合政府との関係は良好だった筈なので、総合政府の暦に準拠している。…はず。

とにかく、少なくとも俺の知る限りでは彼女は約二千二百年前の人間で、不定形生物に襲われて命を落としていたってことだ。

彼女にしても突拍子もない話だろうが、何しろ自分の体が透明になってるということで、それがもう有り得ない話であり、俺の言うことを否定しきれないというのが正直なところなんだろう。せめて自分の体が元のままだったら、俺の話なんかデタラメだと突っぱねたいところなんだろうが。

「メイフェア…セシリア……彼の言ってることは本当なの……?」

縋るようにメイフェアとセシリアを交互に見た彼女に、メイフェアは苦しそうな顔をしながら言った。

「はい…私やセシリアの内蔵時計も、数日の誤差は生じていましたが彼の言っていることが正しいということを表しています……確かに今は、銀河歴で言えば三二四八年になります……」

メイフェアの言葉に、セシリアも頷いた。

シモーヌは右手で顔を覆い、肩を震わせていた。泣いているんだろう。

突然、訳の分からない現実を突き付けられて混乱して、しかも自分の体は異様な有様なのだ。正気を失わないだけでも大したものだと思う。

しかも彼女の様子を見る限り、自分が不定形生物に襲われて命を落としたことなどについては覚えていないようだ。

もしかしたら頭が混乱していて思い出せていないだけの可能性もある。時間をおけば記憶がよみがえることもあるかもしれない。今はただ、現状を受け止め整理する時間が必要だろう。

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