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子供達

ほったて小屋(それでも気に入ってくれたようだ)

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新暦〇〇一〇年一月二十七日。



こうかんを連れて出戻ってきたしんは、長らく野生で暮らしてたからか、家の中じゃなく敢えて軒下を自分の居場所と決めたようだった。まあ、家の中は既にひそかほむらあらたじんじょうふくさいりん達が占領していて居場所が無いというのもあるのかもだが。

という訳で、簡易ながら新たにしん親子の為の部屋を増設することとなった。

まあ、本当に簡易な部屋なんだけどな。

しんが居場所と決めた軒下の屋根を延長して、更に簡単な壁と床も作る。予備の材料の寄せ集めだから見た目には<ほったて小屋>もいいところだったものの、当のしんは気に入ってくれたようだ。

野生の状態でいきなりこんなことをされても警戒するだけだとしても、彼女は元々ここで育ったからその点では慣れているんだろう。

でも、その姿はやっぱり、『たまたま見つけた人間の建てた小屋が良い感じだったので勝手に住み着いた』感あふれるものだったのも事実ではある。

とは言え、

「子供達も健康そうで、本当に良かったです」

三人の様子を見て、シモーヌが嬉しそうにそう言った。その気持ちが俺にも分かる気がする。れんのことがあったから余計に。

我が子を食ったしんをそうやって普通に受け入れることを『信じられない』と言う人間もいるかもしれない。『自分の子供を食うような奴と一緒に住める訳がない』と言う人間もいるかもしれない。

だが、野生の獣、しかも肉食獣と一緒に暮らすとなれば、そんなことをいちいち気にしてたら一緒になんて暮らせないと俺は思うんだ。

野生の獣は残酷で冷酷で容赦ない。でも、それが<普通>なんだよ。人間の思う<普通>とは違う。

ペットに服を着せたりしてまるで人間のように扱う者には分からないかもしれないが。

それや、人間の感覚を当てはめて分かった気になってる者にもな。

そのこと自体が悪いとは言わないにしても、少なくとも今の俺達が暮らしてる環境とは相容れないものだとも思うんだ。

可愛い可愛いだけしていればいい世界じゃない。可愛いと思いつつその可愛さの陰にあるものも認めなくちゃいけない世界なんだろうな。

俺が実際にどこまでそれができてるのかは心許ないものの、少なくともしんが背負ってる現実を認めた上でそれを受け入れることができてるとは思うんだ。

<子殺し>も当たり前のようにあるここで、少なくともしんは自ら我が子に手を掛けた訳じゃない。

ただ彼女の持つ習性や本能に従って、彼女にとっては当たり前のことをしただけなんだよ。

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