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新世代

誉編 メイフェアの日常 その3

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「おはようございます。ほまれ様。本日はこれまでのところ異常ありません」

というような意味の<言葉>でほまれに状況報告を行ったメイフェアは、

「分かった」

というような意味の返事をもらい、すっと彼の視界から消えた。まるで<しのび>である。

まあ、実際に、彼女はほまれを影ながら守る護衛役でもあるので、あながち間違ってはいないのだが。

メイフェアは、正式名称を<メイフェアXN12A>と言い、メイトギアと呼ばれる、人間の身の回りの世話をする為に人間そっくりの外見とメイド(男性型の場合は執事)を思わせる意匠のデザインを施されたロボットの中でも、<要人警護仕様>と称されるタイプのロボットだった。

<要人警護仕様>とは、読んで字のごとく要人を警護する為に、非常に高い対刃・対弾・対爆性能を与えられ、必要とあらばその場で攻撃者を撃退しうる戦闘力も付与されていた。

まさに<現代の忍者>と言っても的外れではないのだろう。

そんな訳で、メイフェアは、常に一歩引いた形でほまれに仕えていた。ほまれの方も、それが普通だと認識しているらしい。

で、全員の無事を確認したところで、餌の確保である。

と言っても、この密林は、パパニアンの餌となる果実が非常に豊富で、餌に困ることはそれほどない。ただ、多少は<好み>もあるので、好きな果実が多く生っている場所を縄張りとする為に、他の群れと争いになることはある。

そういう意味では、ほまれの群れが縄張りにしている辺りはその果実が多く生っていて、他の群れから狙われてはいた。

今の縄張りを確保したのは二代前のボスで、強いだけでなく利口だったことから、この辺りでは最大の勢力を誇っている。

もっとも、そこまで拡大できたのにはある偶然も影響しているのだが。

それは、かつて縄張りを接していたパパニアンの群れが、大量発生した凶暴な肉食獣に襲われて壊滅し、ある種の<漁夫の利>的な形でその縄張りを併合することができたというのが経緯でもある。

その時に、<斥候>として状況を確認する為に派遣されたのが、この群れに加わってまだそう経っていなかったほまれであり、実はメイフェア自身もこの<事件>については少なからず関わっていたりもしていたのだ。

これにより、俺は、『ロボットに感情を持たせる』という発想の功罪を目の当たりにすることになったりもしたな。

まあそれについては今は割愛するが、いずれにせよ、彼女がさらにほまれを主人として強く意識するきっかけになったのであろうことも、事実かもしれない。

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