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転生編
夜道にご注意。痛い目に遭いますから。余計なことをすると
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メジェレナとガゼのいがみ合いはあっても、三人でこうして一緒にアニメを見てられるのは楽しかった。
が、夜も更けてそろそろお開きにという頃になると今度はまた、
『こいつ、先に帰んねーかな…』
と、お互いに相手に意識を向けつつどっちが先に帰るかということでメジェレナとガゼは妙な緊張感を漂わせるのだ。
で、いたたまれなくなったユウカが、
「もう、いい加減にして!」
などと声を上げて二人を同時に追い出すというのもいつものパターンだった。
『でも、前はこんな風に人に向かって大声出すなんてできなかったな…』
そう、地球にいた頃の彼女では想像もつかないことであった。でも、
『なんか楽しい』
そんな風にも思えてしまう。
ちなみに、このアパートはボロい安普請に見えるがそれは見た目だけで、作りもしっかりしているし防音もほぼ完璧だった。部屋で爆発でも起こさない限りは他の部屋には伝わらない。大声を上げたくらいでは聞こえないように<設定>できた。住人の好みに合わせて外の音をどれだけ通すか選べるのである。だから安心して人を呼んでアニメ三昧ということもできた。
なお、マニやシェルミはそういうのが気にならないので見た目通りの安普請と言った風情で外の音が聞こえるようにしていて、キリオやメジェレナも、気配程度は分かるくらいにはしていた。
逆にヘルミとポルネリッカは一切外の音を拾わないようにしているが、これも個人の好みなので他人がとやかく言うことではない。
また、外見上は幼いガゼが夜更けに一人で家に帰っても心配する必要もない。元よりそんな不埒な人間はまずいないし、いたとしてもガゼなら問題ない。なにしろ彼女は徒手格闘術のエキスパートなのだから。以前も言ったがここでは武器はその威力をほとんど発揮しない。ダメージを与えるためには素手での攻撃が必要になる。その素手での攻撃力が彼女は並外れているのだ。
だが、一人で家に帰ろうとしていたガゼの前に、男が立ちはだかった。見ればかなり酒に酔っている風だった。
「お嬢ちゃん、オジサンと遊ばな~い?」
「……!」
酔っぱらいの戯言に、ガゼは右手の指をこめかみの辺りに当ててあからさまにイラついた表情を見せた。
『人が楽しい余韻に浸ってる時に、このクソボケが~…!』
せっかくユウカの部屋でアニメを堪能していい気分で家に帰ろうとしているというのにこれでは台無しだと怒っているのだ。しかし酔っぱらいはそんな彼女にお構いなしで手を伸ばしてきた。大きな事件は少ないが、この手の無礼者はまあそれほど珍しくもなかった。
では、どうするか?
『とりあえずぶちのめす』
それが答えだった。
どうせ痛いだけで大した怪我もしないのだから、自分の体を痛めない程度に加減すれば、当然、相手のダメージも致命的にはならない。万一怪我をしても必ず元の状態まで治る。だからガゼは掴みかかってきた男の手を取り引き寄せてバランスを崩させた上で懐に入り込み、股間と腹と鼻っ柱にそれぞれ蹴りと肘と掌底をくらわせた。見事なコンビネーションだった。
悶絶する酔っぱらいを、
「ふん!」
と鼻であしらい、どっかどっかと大股で夜道を歩いて帰るガゼなのだった。
が、夜も更けてそろそろお開きにという頃になると今度はまた、
『こいつ、先に帰んねーかな…』
と、お互いに相手に意識を向けつつどっちが先に帰るかということでメジェレナとガゼは妙な緊張感を漂わせるのだ。
で、いたたまれなくなったユウカが、
「もう、いい加減にして!」
などと声を上げて二人を同時に追い出すというのもいつものパターンだった。
『でも、前はこんな風に人に向かって大声出すなんてできなかったな…』
そう、地球にいた頃の彼女では想像もつかないことであった。でも、
『なんか楽しい』
そんな風にも思えてしまう。
ちなみに、このアパートはボロい安普請に見えるがそれは見た目だけで、作りもしっかりしているし防音もほぼ完璧だった。部屋で爆発でも起こさない限りは他の部屋には伝わらない。大声を上げたくらいでは聞こえないように<設定>できた。住人の好みに合わせて外の音をどれだけ通すか選べるのである。だから安心して人を呼んでアニメ三昧ということもできた。
なお、マニやシェルミはそういうのが気にならないので見た目通りの安普請と言った風情で外の音が聞こえるようにしていて、キリオやメジェレナも、気配程度は分かるくらいにはしていた。
逆にヘルミとポルネリッカは一切外の音を拾わないようにしているが、これも個人の好みなので他人がとやかく言うことではない。
また、外見上は幼いガゼが夜更けに一人で家に帰っても心配する必要もない。元よりそんな不埒な人間はまずいないし、いたとしてもガゼなら問題ない。なにしろ彼女は徒手格闘術のエキスパートなのだから。以前も言ったがここでは武器はその威力をほとんど発揮しない。ダメージを与えるためには素手での攻撃が必要になる。その素手での攻撃力が彼女は並外れているのだ。
だが、一人で家に帰ろうとしていたガゼの前に、男が立ちはだかった。見ればかなり酒に酔っている風だった。
「お嬢ちゃん、オジサンと遊ばな~い?」
「……!」
酔っぱらいの戯言に、ガゼは右手の指をこめかみの辺りに当ててあからさまにイラついた表情を見せた。
『人が楽しい余韻に浸ってる時に、このクソボケが~…!』
せっかくユウカの部屋でアニメを堪能していい気分で家に帰ろうとしているというのにこれでは台無しだと怒っているのだ。しかし酔っぱらいはそんな彼女にお構いなしで手を伸ばしてきた。大きな事件は少ないが、この手の無礼者はまあそれほど珍しくもなかった。
では、どうするか?
『とりあえずぶちのめす』
それが答えだった。
どうせ痛いだけで大した怪我もしないのだから、自分の体を痛めない程度に加減すれば、当然、相手のダメージも致命的にはならない。万一怪我をしても必ず元の状態まで治る。だからガゼは掴みかかってきた男の手を取り引き寄せてバランスを崩させた上で懐に入り込み、股間と腹と鼻っ柱にそれぞれ蹴りと肘と掌底をくらわせた。見事なコンビネーションだった。
悶絶する酔っぱらいを、
「ふん!」
と鼻であしらい、どっかどっかと大股で夜道を歩いて帰るガゼなのだった。
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