124 / 205
日常編
小さな成長
しおりを挟む
『メジェレナさん……』
メジェレナの恋は残念な結果に終わったが、これは決してネガティブなばかりではなかった。見かけによらず引っ込み思案だった彼女が一歩成長するきっかけにはなったはずだ。
今は小さな変化でも、いずれは大きく彼女を変えていく可能性がある。他人とまともに会話もできなかったユウカが普通に会話できるようになったように。
そうやって人は少しずつ変わっていくのだ。極端には変わらなくても、それまではできなかったことが一つだけできるようになるとかの些細なことではあっても。
それはユウカも感じていた。
『メジェレナさん、また表情が柔らかくなったのかな……』
と。
元々種族の特徴としてきつい印象のある彼女だったが、それがまた和らいだように感じた。やはり表情一つで随分と雰囲気が変わる。
しかも、
「シュークリーム食べる? ガゼ」
と、笑顔でガゼに話し掛けてきたリするようにもなった。
「な、何よ。甘いもので懐柔しようったってそうはいかないからね!」
それまでのケンカ腰の態度からうって変わったその様子に、ガゼは戸惑わずにはいられなかった。
フられたという点ではガゼのかつての経験とメジェレナのそれは同じだったかもしれないが、真っ向から告白してきちんと聞いてもらえた上で納得できる理由があって断られたメジェレナと、どろどろに拗れてその上で策謀を巡らせても結局ダメだったガゼの差なのかもしれない。
もしくは、仮にも二千年以上年上だからということで、下地はできていたということなのだろうか。
その辺りは本人にしか分からないだろうし、だからメジェレナの方が立派だというものでもないだろう。ただ、より早く気持ちの整理がつけられたというだけのことだ。
それに、ガゼも口ではああ言っているが、メジェレナの変化については決して不快に感じている訳ではなかった。
『なによ…すっきりした顔しちゃって…!』
単に、それまでの経緯もあって素直に受け入れられなかっただけだった。
とは言え、メジェレナの態度が柔和になったことで、ガゼも必要以上に噛み付く必要がなくなったのもまた事実ではある。
『なんか調子狂うなあ……こんなんで突っかかったら私の方がバカみたいじゃん…!』
このことを一番喜んだのは、ユウカだった。ガゼとメジェレナのいがみ合いは、この二人なりのレクリエーションだと思っていても何十年にもわたって心を痛めてきた懸案だったからだ。それが収まってくれるのなら、こんなありがたいこともない。それでも、
「あ、ガゼ! それ私の分!」
「べーっ! 早い者勝ちですぅ~っ!」
などと、お菓子を巡ってやっぱりケンカになってしまっていたりするが。
「ホントよく飽きないね」
呆れながらそう声を掛けるユウカの顔にも、笑顔がこぼれていたのだった。
メジェレナの恋は残念な結果に終わったが、これは決してネガティブなばかりではなかった。見かけによらず引っ込み思案だった彼女が一歩成長するきっかけにはなったはずだ。
今は小さな変化でも、いずれは大きく彼女を変えていく可能性がある。他人とまともに会話もできなかったユウカが普通に会話できるようになったように。
そうやって人は少しずつ変わっていくのだ。極端には変わらなくても、それまではできなかったことが一つだけできるようになるとかの些細なことではあっても。
それはユウカも感じていた。
『メジェレナさん、また表情が柔らかくなったのかな……』
と。
元々種族の特徴としてきつい印象のある彼女だったが、それがまた和らいだように感じた。やはり表情一つで随分と雰囲気が変わる。
しかも、
「シュークリーム食べる? ガゼ」
と、笑顔でガゼに話し掛けてきたリするようにもなった。
「な、何よ。甘いもので懐柔しようったってそうはいかないからね!」
それまでのケンカ腰の態度からうって変わったその様子に、ガゼは戸惑わずにはいられなかった。
フられたという点ではガゼのかつての経験とメジェレナのそれは同じだったかもしれないが、真っ向から告白してきちんと聞いてもらえた上で納得できる理由があって断られたメジェレナと、どろどろに拗れてその上で策謀を巡らせても結局ダメだったガゼの差なのかもしれない。
もしくは、仮にも二千年以上年上だからということで、下地はできていたということなのだろうか。
その辺りは本人にしか分からないだろうし、だからメジェレナの方が立派だというものでもないだろう。ただ、より早く気持ちの整理がつけられたというだけのことだ。
それに、ガゼも口ではああ言っているが、メジェレナの変化については決して不快に感じている訳ではなかった。
『なによ…すっきりした顔しちゃって…!』
単に、それまでの経緯もあって素直に受け入れられなかっただけだった。
とは言え、メジェレナの態度が柔和になったことで、ガゼも必要以上に噛み付く必要がなくなったのもまた事実ではある。
『なんか調子狂うなあ……こんなんで突っかかったら私の方がバカみたいじゃん…!』
このことを一番喜んだのは、ユウカだった。ガゼとメジェレナのいがみ合いは、この二人なりのレクリエーションだと思っていても何十年にもわたって心を痛めてきた懸案だったからだ。それが収まってくれるのなら、こんなありがたいこともない。それでも、
「あ、ガゼ! それ私の分!」
「べーっ! 早い者勝ちですぅ~っ!」
などと、お菓子を巡ってやっぱりケンカになってしまっていたりするが。
「ホントよく飽きないね」
呆れながらそう声を掛けるユウカの顔にも、笑顔がこぼれていたのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる