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日常編

愉快なアニメ

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「え? レルゼーさん。こんなところにいてていいんですか?」

カフェでお茶をしてる時に突然、レルゼー(=カハ=レルゼルブゥア)が現れてユウカは思わずそう問い掛けていた。今日、見に行く筈のライブはレルゼー率いるロックバンド<レルゼリーディヒア>のライブだったからだ。

慌てるユウカに対し、レルゼリーディヒアの大ファンであるメジェレナは、

「こ、こんにちは!」

と別の意味で慌てて、レルゼーとはユウカを巡ってライバルであったガゼは、

「……」

明らかに不機嫌そうな顔になった。ヒロキのことは向こうがそもそもユウカを狙ってないから別によかった。

だが、レルゼーは違う。彼女は今でもユウカを狙っているのだ。単に、元々無限にも等しい時間を持つ邪神である彼女にとっては別に百年や二百年待ったところで一瞬でしかないから、ユウカの気持ちを考えて今のところは身を引いているだけだ。

そういうこともあって、モーションは掛けないにしても会いに来ることなどについては遠慮をするつもりもなかった。だいたい、邪神が遠慮するというのもおかしな話である。

「準備はもうできてる…あとは時間が来るのを待つだけ……」

相変わらず抑揚のない声で淡々としゃべるレルゼーに対しても、ユウカは優しかった。

「そうなんですね。じゃあ、一緒にお茶しますか?」

という訳で結局、レルゼーも合流することになったのだが、当然、ガゼは不服そうなのが見え見えだった。そんなガゼに対してもユウカは、

「ごめんね。だけどせっかくだから」

今はレルゼーのことをどうこうという意識がないからこそユウカは普通に接することにしただけである。同時に、ガゼへの気遣いも忘れない。

レルゼーにとっては食べ物など何でも同じだった。それこそその辺のネズミを捕まえて頭から丸かじりにしても構わなかったものの、さすがにこの場でそれはあれなので、ユウカがパンケーキを注文した。

届いたそれを、レルゼーは、くあっと大きく口を開いて一口で丸呑みにしてしまった。

「も、もうちょっと味わった方がいいんじゃないかな…」

さすがのユウカも苦笑いになる。それでもユウカは、レルゼーがそういう人なのはちゃんと理解していた。理解した上で受け入れていた。

レルゼーにとってもそれが興味をそそられる理由だった。人間は本能的に自分を恐れるというのに。ユウカからももちろん恐れは感じる。ただそれは他の人間に比べると明らかに小さかった。

まあその辺りは、地球で邪神などをモチーフにした愉快なアニメなどを見慣れていたからというのもあるのだろう。

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