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日常編

絡み酒

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ユウカとガゼの部屋に、メジェレナとレルゼーもお邪魔した状態で、四人はテーブルを囲んで座っていた。

そこにまた、

「は~い! 今日はスキヤキにしてみました~」

とマニが入ってくる。

「お~!」

ガゼとメジェレナが声を上げつつ手を叩く。そこに、

「今夜の宴会場はここですか~?」

と、既に出来上がったレンが酒を片手にドアを開ける。相変わらずの酔っぱらいぶりである。これで明日も仕事だというのだから大したものだ。

今夜はクォ=ヨ=ムイは他に飲みに行っているようだ。レルゼーがいるからむしろその方がありがたい。

『二人とも、仲が悪い訳じゃないんだけど、やっぱり邪神だからな~。なにがきっかけでぶつかるか分からないし、ヒヤヒヤものだもんね』

ユウカが考えている通りだった。さすがに邪神達の溜まり場のような場所以外で同席されると周囲が冷や汗もので楽しめない。

「カンパーイ!!」

レンとマニとレルゼーとメジェレナは酒で、ユウカとガゼはオレンジジュースで乾杯をする。

するとレンがさっそくユウカに絡みだした。

「ユウカぁ、あんたほんっとうにあのヒロキって彼とでなくていいのぉ?」

以前は、付き合いの長いガゼとの関係を優先した方がいいんじゃないかと言ったレンだったが、それをきっかけに改めて考えてみたことで、少し考えが変わったらしい。

加えて、あの時はヒロキのことをまずよく知らなかったというのもあるだろう。しかし、アイアンブルーム亭などで何度か顔を合わし言葉を交わすうちに、ガゼよりは頼りになると思ったのだ。

さらには、いくらヒロキが故郷に残してきた恋人に心残りがあろうともそれはもう決して報われることがないのだから、しかも相手は既に余命幾ばくもない高齢者なのだから、実年齢はともかく見た目には若くてピチピチしたユウカに圧倒的なアドバンテージがある筈だとしか思えないのだ。

それは、レン自身の経験からでの話でもある。

「私もさあ、向こうにいた時にさ、憧れてる男性ひとがいたんだよ、でもさ、その人は亡くなった彼女のことをずっと想い続けててさ、私はその想いを大事にしてあげたいと思って一歩引いて見守ってたんだよ。でもさ、そしたらさ、そんなことお構いなしにグイグイ彼にアプローチしてきた女がいてさ、彼、結局その女と結婚しちゃったんだよ~!

ヒドくない? ね? ヒドくない!? その女、私より年上でしかもバツイチだったんだよ!? 私の方が若くて綺麗なのに、なんでそんなオバサンを選ぶんだよ! チクショーっ!!

だから連休中ずっと飲み明かしたよ…っ!」

その話を聞いたユウカとガゼとメジェレナは、

『いや、連休中ずっとヤケ酒に溺れてクダ巻いてるような人と一緒になるとそれはそれで大変じゃないかな』

などと、口には出さずに思ったりしたのだった。

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