コグマと大虎 ~捨てられたおっさんと拾われた女子高生~

京衛武百十

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食の好みは合致しても

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 玄関の鍵を開けてドアを開けて、
「ただいま」
 と口にすると、
「おかえり~♡」
 今日はご機嫌で大虎が俺を見た。すっぴんで。それがまたなんか可愛くてな。思わず俺も顔が緩む。
「今日はシチューだよ♡」
 また嬉しそうに言ってきて。
「そうか。それは楽しみだ」
 早速、夕食にする。
学校ガッコ帰ってから作り始めてさ。オッサンが帰ってきた時に丁度いい感じになるようにって」
 が、大虎は、俺には皿にシチューを盛ってくれたが、自分には、丼に白飯をよそい、そこにシチューをぶっかけて。
『シチュー丼だ……!』
 唖然とした感じで見てた俺に気付いたのか、
「あ、ごめん。オッサンもこれ、ダメな人?」
 気まずそうに訊いてくる。そうだ白飯にシチューをぶっかけて食う<シチュー丼>は、ダメな奴はとことんダメらしい。見てて気分が悪いそうだ。が、俺は、
「いや、俺以外にシチュー丼食う奴って、初めて見たから……」
 と返す。すると大虎が、これまた一層、嬉しそうな表情になって、
「マジ!? オッサンもこれ食うの!? やったあ♡ これね、ウチのホントのお父さんが好きだったんだ! でもみんな『気持ち悪い!』って言うから。だけどオッサンならなんか許してくれそうな予感があってさ! そっかー、やっぱ、オッサン、ウチと相性いいんだあ♡」
 とか言いやがって。
 でも、悪くない。悪くないな、こういうの……
 実は前妻も、<シチュー丼がダメな人>だった。
「やめてよ! 気持ち悪い! この子が真似したらどうすんの!?」
 って言われて、俺はそれ以来、前妻と長女が見てる前ではシチュー丼にしては食わないようにしてた。けど、
「せっかくだし俺もシチュー丼にして食おう!」
 言いつつ飯をよそうために立ち上がろうとしたら、
「あ、いいよいいよ座ってて! ウチがよそうから!」
 大虎が跳ねるように立ち上がってキッチンに飛んで行った。そして丼に白飯をよそってくれて、
「はい♡」
 満面の笑顔で渡してくれる。
 そんでもって俺も、いったん皿に盛られたシチューの一部を白飯にかけて、シチュー丼にする。
 本当に久しぶりだ。自分じゃわざわざシチューを作ってまでしようとは思わなかったが、なんか、俺も嬉しい。
「いっただっきま~す♡」
 ニッコニコでシチュー丼をスプーンでかっこむ大虎に対し、俺は、ペン立てに突っ込んであった、コンビニでもらった割り箸で食べ始める。
「え? オッサン、それを箸で食べる人? やっぱいるんだ!?」
 とか言い出して。
「ははは。食の好みは合致しても、そういう細かいところで違いはあるもんなんだな」
 なんか妙に感心してしまったのだった。

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