コグマと大虎 ~捨てられたおっさんと拾われた女子高生~

京衛武百十

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お前、ロックだな……

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 で、俺が幌を付けようとすると、
「え? なんでカバー付けんの? ドライブ行かないの?」
 大虎が慌てて訊いてくる。それに対して俺は、
「なに言ってんだ。今の時期、幌付けなきゃ凍死するわ」
 と返す。そうだ。こいつは、屋根もドアも幌だからな。ただし、ドアとして幌を付けると乗り降りがかなり面倒なんだ。すると大虎は、
「いいじゃんいいじゃん。こういうクルマなんだろ? バイクだって屋根なんかないじゃん。でも、バイクで走ってんのもいるじゃん。このままで行こうよ!」
 とか言い出した。
「お前、ロックだな……」
 確かに俺も、真冬でも幌を付けずに普段は走ってる。それこそがこいつの醍醐味だと思うしな。しかも、大虎の言う通り、バイクに乗るつもりでしっかりと防寒すれば、フロントウインドウが正面からの風を遮ってくれるだけ、たぶん、バイクよりマシだと思う。
 排気量三六〇CC。車両重量五百キロちょい。四〇〇CCの中型バイクよりも排気量は少ないが、最近の軽自動車の約半分という軽量ボディのおかげで、まあ、ターボなしの普通の軽自動車程度には走ってくれる。
 とにかく、最高にハイになれてバカになれる、イカれたクルマだな。
「そうまで言うなら幌なしで行ってもいいが、文句言うなよ」
 そう念を押して、俺は、ガードバーを上げて運転席に乗り込んだ。そう。このただの鉄パイプみたいのがドア代わりだ。それを見た大虎がまた、
「ギャハハ! なにこれなにこれ!! クルマから放り出されて死んじゃうじゃん!」
 大爆笑。でも、嬉しそうに俺の真似してガードバーを上げて助手席に乗り込んできた。と言っても、いわゆる<ベンチシート>だから、運転席と助手席がそのまま繋がってる。
「変な椅子~! 足伸ばせね~! しかもクセ~! こりゃ普通の女の子は絶対嫌がるわ~!」
 言いたい放題だが、本当にその通りだから仕方ない。『臭い』というのは、排ガスの臭いがそのまま届くからな。臭くて当然。
 まあとにかく気休めみたいなシートベルトを着けて暖気を終えて、発進する。
 昔の軽自動車だからエンジン音も「ベーン」って感じのいささか情けない音だが、俺は嫌いじゃない。
 一方、大虎は、後ろを振り返って、
「なにこれ? 後ろのもひょっとして椅子? これ人乗れんの? 荷物置くとこじゃなくて?」
 前席と同じくベンチシートになってる後席を見てまた驚く。一応、乗車定員は四人だが、確かに後席は荷物置きみたいなもんだ。子供だって嫌がる狭さだし。普通は人を乗せるもんじゃない。
『非常時には後ろにも二人乗せて走っても違法じゃありませんよ』
 ってだけのシロモノだ。もっとも、こいつの後席よりも狭い後席を持つクルマは他にもいくつもあるけどな。

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