コグマと大虎 ~捨てられたおっさんと拾われた女子高生~

京衛武百十

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<まともな親>なのかねえ……

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 このクルマに乗ってると、笑われるのなんざしょっちゅうだ。だから笑われること自体は別に構わねえ。それは覚悟の上だしよ。ただ、自分の子供が、誰かが大事にしてるものをバカにするような人間に育って平気なツラしてられる親ってのが<まともな親>なのかねえ……とは思う。
 まあ俺自身、自分がまともな親とは思わねえから離婚にも応じたし、長女から冷たい目を向けられても別に気にならなかった。
 ただ、前妻も、
『口先じゃ謝ってる風なことは言ってても腹ん中じゃ』
 ってタイプでもあったから、長女もそう育つんだろうなと思うと、複雑な気分にはなる。もっとも、だからって俺が育てたらまともに育つかと言うと、そもそも長女に対する愛情が欠片も湧いてこねえから、それはそれで歪な人間に育ちそうだって予感はある。親の愛に飢えて依存心が強かったり承認欲求を拗らせたりした厄介なのに育ちそうだな。っていう。
 ま、俺と前妻の間に生まれちまったのが不幸ってこった。申し訳ない。
 でもなあ、親の影響があるってのは、俺自身が仮にも親だったからそれは間違いなくあるとは感じるんだが、『親の所為にするな!』みてえなことを口にする奴らも多いけどよ、じゃあ、『口先じゃ謝ってる風なことは言ってても腹ん中じゃ』ってえ親に育てられたからって自分もそういう人間でいることを良しとするってのは、『親の所為にしてる』としか思わねえな。『親の所為にするな!』とか言いながら他所様を口汚く罵ってる奴なんざ、
『そうやって他所様を口汚く罵る自分を改めることもできない』
 ってだけじゃねえか。それが親の影響だったんなら、『親の所為にしてる』以外の何だってんだ。親がどうだろうが自分は他所様を口汚く罵るような礼儀知らずのままでいるのはやめたらどうなんだ? 『親の所為にするな!』って言うんならよ。

 なんてことを考えながら俺は、荷物を後席に積んで、それをシートベルトで固定する。ドアらしいドアがねえから、しっかり固定してねえと吹っ飛んじまったりするからな。
 そうして荷物がしっかり固定できてるのを確認して、俺は運転席に座って大虎を待つ。たぶん、多目的トイレってところで着替えてるはずだ。ついでに用足しもしながらな。
 ションベンしたそうにしてたし。
 ちなみに俺は、当然のこととしてがっちり防寒対策をしてある。
 と、店の出入り口に、ダウンコートを着てマフラーを巻いた大虎の姿が見えたところで、俺はエンジンを掛けた。
「おまたへ~」
 言いながら乗り込んでくる大虎に、キャップヘルとゴーグルと使い捨てカイロを渡しつつ、
「カイロは腹と腰と首の根元の背中側にでも貼っとけ。それでだいぶマシになると思う」
 って告げたのだった。

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