ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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こんちわ~

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「じゃあ、行ってくるね」

そう言って、大きな旅行かばんを持ったセルゲイと共に笑顔で出掛けていったミハエルと悠里ユーリ安和アンナを、

「いってらっしゃ~い♡」

アオと椿つばきもやはり笑顔で見送った。戻ってくるのは半年後を予定している。

ただ、吸血鬼の形質を色濃く受け継いだダンピールである悠里と安和はともかく、椿つばきが寂しがると思うかもしれないけれど、先にも言ったビデオ通話で顔を合わせて話をできることに加え、彼女にはすごく大切にしてくれる姉兄のような存在もいたので、実はそれほど寂しくもなかった。

「こんちわ~、アオ~♡」

ミハエル達と入れ替わる形で来たのは、二十代半ばくらいという印象のある、すごく爽やかで整った顔立ちのすらりとした青年と、青年にどこか似た面差しで、同時にミハエルのそれにも通ずる、やはり整った顔立ちの、高校生くらいの男女だった。

あきら恵莉花えりか秋生あきお。いらっしゃい♡」

アオが嬉しそうに三人を迎え入れると、

「いらっしゃ~い♡」

椿もニコニコ笑顔で洸に駆け寄った。その椿を、洸が、

「椿~♡」

相貌を崩しきって抱き上げる。実は椿は、セルゲイ以上にこの洸のことが好きだった。生まれた時からすごく可愛がってもらって、いっぱい遊んでもらって、しかも優しい彼のことを、父親のミハエルと同等以上に慕っていた。

「椿はホントにあきぃのことが好きだなあ」

その光景を見た高校生くらいの少女、恵莉花がやや苦笑いで声を上げる。そんな恵莉花に、秋生が、

「兄さんは優しいから……」

控えめな感じで言った。

三人は、アオの担当編集、月城つきしろさくらの子供達だった。

臨床検査会社の営業として勤める洸。三十二歳。

高校一年生で十六歳の恵莉花。

同じく高校一年生で十六歳の秋生。

明らかに洸の年齢が高すぎるのは、彼がさくらの実子ではないからである。海外で生を受けて、常に忙しく海外を飛び回っている実の母親の元では好ましい育成環境を得られないとして十五の時にさくらの養子として引き取られ、以来、さくらの長男、恵莉花と秋生の兄として暮らしてきたのである。

……という<設定>で。

と言うのも、実は洸は、<ウェアウルフ>なのだ。つまり<狼男>であると。

吸血鬼やダンピールとは逆に、生後一年ほどで外見上は十代半ばくらいにまで育つことから、ミハエルが身分を用意した上でさくらが引き取ったという形で育ててきたのだ。

今では人間の姿でいることが多いものの、元々は、狼の姿で、捨て犬のように捨てられていたのが洸だった。実年齢は十八歳。書類上の『三十二歳』という年齢は当然、作られた身分のそれだった。

対して、恵莉花と秋生は、さくらの実子なのだった。

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