82 / 571
子は鎹
しおりを挟む
というわけで、さくらもエンディミオンもお互いに自身の責任を承知した上で
今の関係を続けているわけだけれど、しかしだからと言って何もかもをしっかりと割り切れるほど人間(吸血鬼やダンピールも含めて)というのは単純でもない。
彼のことは今でももちろん愛しているし大切には想っているけれど、まったく会話がなかったことについては、正直、寂しい気持ちもあった。
「ただの我儘なのは分かっているんですけど……」
愚痴を聞いてくれたアオに感謝しつつ、さくらは寂しそうに笑った。
それに対し、アオは、
「私もミハエルと話ができないとなったら、たぶん、耐えられない気がする。だから、さくらの気持ちも理解したい。
ただ同時に、エンディミオンの性格を考えると、ここで本人を責めると、十中八九間違いなく機嫌を損ねるよなあ」
腕を組みながらうんうんと頷きつつ応える。
「そうですね。私もそれが分かってるから彼に直接は言えないんです。彼が花の世話に集中してるのを邪魔もしたくないし……」
「うむ。その気遣いは大事だと想う。ここで一方的に被害者面すると関係が拗れる元だ。
こういう場合、ヘタに二人きりで話をしようとするよりも、間に入ってくれる人が必要なのかもしれんという気はする」
「確かに。でも、それについては恵莉花が頑張ってくれてます」
そのさくらの言葉に、アオはニッと笑みを浮かべて、
「なら、心配は要らないな」
悪戯っぽくさくらを見た。
アオは知っていた。エンディミオンは子供達には非常に寛大だ。甘いと言ってもいい。自分が辛い幼少期を過ごしたことから、恵莉花や秋生達にはそんな思いをさせたくないというのが、普段、さくらが語る彼の様子からも伝わってくる。
子供達こそがさくらとエンディミオンの間を取り持っているというのが分かる。
これこそが、
『子は鎹』
というものなのだろうと思った。
しかし同時に、
「ただ、<子は鎹>とは言うものの、ただこれも、よく聞く話ではあるものの、よく言われることではあるものの、過信すると思わぬしっぺ返しを食うのだろうな」
とも口にする。
するとさくらも。
「はい。それは私も気を付けています。それに頼ってしまって努力を怠ると、かえって関係を拗れさせるんでしょうね」
「おう。まさにそれだ。親の尻拭いを子供にさせるというのは、本来は恥ずべきことなんだろう。
私も気を付けないといけないと思ってる。
子供は、親の道具じゃない。いいように利用して親が手を抜くために存在するわけじゃない。そんなことをしていたら容易く子供から見捨てられることもある。
ゆめゆめそれを忘れないようにと思うよ」
「まったく同感です」
今の関係を続けているわけだけれど、しかしだからと言って何もかもをしっかりと割り切れるほど人間(吸血鬼やダンピールも含めて)というのは単純でもない。
彼のことは今でももちろん愛しているし大切には想っているけれど、まったく会話がなかったことについては、正直、寂しい気持ちもあった。
「ただの我儘なのは分かっているんですけど……」
愚痴を聞いてくれたアオに感謝しつつ、さくらは寂しそうに笑った。
それに対し、アオは、
「私もミハエルと話ができないとなったら、たぶん、耐えられない気がする。だから、さくらの気持ちも理解したい。
ただ同時に、エンディミオンの性格を考えると、ここで本人を責めると、十中八九間違いなく機嫌を損ねるよなあ」
腕を組みながらうんうんと頷きつつ応える。
「そうですね。私もそれが分かってるから彼に直接は言えないんです。彼が花の世話に集中してるのを邪魔もしたくないし……」
「うむ。その気遣いは大事だと想う。ここで一方的に被害者面すると関係が拗れる元だ。
こういう場合、ヘタに二人きりで話をしようとするよりも、間に入ってくれる人が必要なのかもしれんという気はする」
「確かに。でも、それについては恵莉花が頑張ってくれてます」
そのさくらの言葉に、アオはニッと笑みを浮かべて、
「なら、心配は要らないな」
悪戯っぽくさくらを見た。
アオは知っていた。エンディミオンは子供達には非常に寛大だ。甘いと言ってもいい。自分が辛い幼少期を過ごしたことから、恵莉花や秋生達にはそんな思いをさせたくないというのが、普段、さくらが語る彼の様子からも伝わってくる。
子供達こそがさくらとエンディミオンの間を取り持っているというのが分かる。
これこそが、
『子は鎹』
というものなのだろうと思った。
しかし同時に、
「ただ、<子は鎹>とは言うものの、ただこれも、よく聞く話ではあるものの、よく言われることではあるものの、過信すると思わぬしっぺ返しを食うのだろうな」
とも口にする。
するとさくらも。
「はい。それは私も気を付けています。それに頼ってしまって努力を怠ると、かえって関係を拗れさせるんでしょうね」
「おう。まさにそれだ。親の尻拭いを子供にさせるというのは、本来は恥ずべきことなんだろう。
私も気を付けないといけないと思ってる。
子供は、親の道具じゃない。いいように利用して親が手を抜くために存在するわけじゃない。そんなことをしていたら容易く子供から見捨てられることもある。
ゆめゆめそれを忘れないようにと思うよ」
「まったく同感です」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる