292 / 571
第二幕
安和の日常 その6
しおりを挟む
実はここまで、蒼井家では、
<子供達だけで留守番>
ということを行ってこなかった。アオは家にいることが多いとはいえ、『彼女が寝ている時に子供達だけが起きている』というのも極力避けてきた。
しかしこれは決して、
<過保護>
だからではない。
『責任の所在を明確にする』
という、大人としての当然のことをしているだけだ。
管理監督者である大人が家にいない状態で何らかの<事故>が発生した時、果たして誰が責任を負うのか?
親が見ていないところで子供が拳銃で遊んで暴発し、本人や兄弟が亡くなるという事例は現に発生している。
拳銃とまではいかなくても、刃物で遊んだり火遊びをしたり水を張った浴槽で遊んで溺れたということが実際に起こっているのだ。
子供だけで留守番をさせていてそういう事故が起こった時、果たして誰が責任を負うのか?
子供か? 親か?
子供に責任を負わせてしまえるのなら、何のために<親>がいるのか。
ミハエルもアオもそう考えるからこそ、子供特有の<視野狭窄>が十分に解消されたことを確信できるまでは、子供達だけで留守番はさせなかった。
親として大人として、自分に責任があるということを明確にするために。
子供はどうしても、自分が興味のあることに意識が集中してしまい、それ以外のことについては疎かになる傾向がある。刃物や火といった扱いに注意が必要な危険なものであっても、
『触ってみたい! 使ってみたい! 遊んでみたい!』
と意識が集中してしまうと、それが危険なものであるという部分に考えが至らない、見えない、という状態になってしまうことがあるのだ。
これは、注意力が散漫とか真面目不真面目とかそういう問題ではない。
『子供の好奇心と集中力というのは元来そういうもの』
というだけの話なのだ。
それがあらかじめ分かっているのに親や大人の方がその事実を軽んじて疎かにして、結果、事故が起こる。
<子供というものに対する理解と具体的な対処を怠った大人の責任>
以外の何者でもない。
この事実から目を背けて自分の責任と向き合うことのできない親の姿を見て育った子供が、果たして、
<自分の責任と向き合える人間>
に育つだろうか?
『過保護だから子供に留守番をさせない』
のではない。
『大人として当たり前の責任と向き合っている』
からこそ、現実を見て対処してきただけだ。
それが今、アオは家にいるとはいえ就寝中で、事実上、十四歳の悠里と十三歳の安和の二人きりでの留守番。
けれど悠里はもちろん安和も、刃物や火気に興味を持つ時期は完全に過ぎていた。好奇心が先に立って危険なことをしたりということもない。
だから二人に任せてミハエルは出掛けていたのだった。
<子供達だけで留守番>
ということを行ってこなかった。アオは家にいることが多いとはいえ、『彼女が寝ている時に子供達だけが起きている』というのも極力避けてきた。
しかしこれは決して、
<過保護>
だからではない。
『責任の所在を明確にする』
という、大人としての当然のことをしているだけだ。
管理監督者である大人が家にいない状態で何らかの<事故>が発生した時、果たして誰が責任を負うのか?
親が見ていないところで子供が拳銃で遊んで暴発し、本人や兄弟が亡くなるという事例は現に発生している。
拳銃とまではいかなくても、刃物で遊んだり火遊びをしたり水を張った浴槽で遊んで溺れたということが実際に起こっているのだ。
子供だけで留守番をさせていてそういう事故が起こった時、果たして誰が責任を負うのか?
子供か? 親か?
子供に責任を負わせてしまえるのなら、何のために<親>がいるのか。
ミハエルもアオもそう考えるからこそ、子供特有の<視野狭窄>が十分に解消されたことを確信できるまでは、子供達だけで留守番はさせなかった。
親として大人として、自分に責任があるということを明確にするために。
子供はどうしても、自分が興味のあることに意識が集中してしまい、それ以外のことについては疎かになる傾向がある。刃物や火といった扱いに注意が必要な危険なものであっても、
『触ってみたい! 使ってみたい! 遊んでみたい!』
と意識が集中してしまうと、それが危険なものであるという部分に考えが至らない、見えない、という状態になってしまうことがあるのだ。
これは、注意力が散漫とか真面目不真面目とかそういう問題ではない。
『子供の好奇心と集中力というのは元来そういうもの』
というだけの話なのだ。
それがあらかじめ分かっているのに親や大人の方がその事実を軽んじて疎かにして、結果、事故が起こる。
<子供というものに対する理解と具体的な対処を怠った大人の責任>
以外の何者でもない。
この事実から目を背けて自分の責任と向き合うことのできない親の姿を見て育った子供が、果たして、
<自分の責任と向き合える人間>
に育つだろうか?
『過保護だから子供に留守番をさせない』
のではない。
『大人として当たり前の責任と向き合っている』
からこそ、現実を見て対処してきただけだ。
それが今、アオは家にいるとはいえ就寝中で、事実上、十四歳の悠里と十三歳の安和の二人きりでの留守番。
けれど悠里はもちろん安和も、刃物や火気に興味を持つ時期は完全に過ぎていた。好奇心が先に立って危険なことをしたりということもない。
だから二人に任せてミハエルは出掛けていたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
最初から最強ぼっちの俺は英雄になります
総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる