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第二幕
人間同士の諍いなど、だいたいはこんなもの
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『やられっぱなしで泣き寝入りするバカはいない』
などと言う者がいる。
しかし、それを言った者がやり返した相手は、きっと、
『向こうが先にやった! 自分はやられたからやり返しただけだ!!』
と言うだろう。
人間同士の諍いなど、だいたいはこんなものだ。
『どっちが悪い』
の水掛け論を延々と行うことになる。
『自分は一方的な被害者だ!!』
と主張する者は、自身に都合の悪い情報は出さないことも多い。ゆえに、
<本当にまったく落ち度のない一方的な被害者>
なんてものは、たぶん、そんなに多くない。
なにしろ、親から一方的に虐待を受けていた子供に対してさえ、
『どうせ親の言うことを聞かないクソガキだったんだろ』
的なことを言う者さえいる。そんなことを言い出したら、それこそ<一方的な被害者>など、果たしてどれだけいるというのか。
本当の、
<やられっぱなし>
など、実はそれほど多くないのかもしれない。
だとすれば、『やられっぱなしで泣き寝入りするバカはいない』など、復讐を正当化する根拠とはなりえない。
こうやって、月城家も蒼井家も、復讐の正当性を否定する。否定することで、エンディミオンに、
『復讐を思いとどまらせる根拠』
を積み上げていく。
それは、一日二日でできることじゃない。以前にも言った通り、エンディミオンは、
『復讐をやめ続けなければいけない』
からだ。長ければ数百年に及ぶ今後の彼の人生の中で。
それには、
『復讐は何も生まない』
程度の理屈では到底足りない。エンディミオンは何かを生み出すために復讐をしていたわけじゃない。ただただ、
『憎い』
からだ。
憎悪に裏打ちされた自身の根源の部分から噴き出す衝動を抑え切れないからだ。
彼にはそれしかなかった。吸血鬼とそれに与する人間への憎悪だけが彼を形作っていた。
なのに今では、さくらが、洸が、恵莉花が、秋生がいる。
何もなかった彼に、
<守りたいもの>
ができたのだ。それを起点として、
『だから復讐は許されない』
という根拠を積み重ね、強固なものにしていかなければいけない。
復讐を続ければ何が起こるのかを、彼に知ってもらわなければならない。
彼が思いとどまれるように。復讐をやめ続けられるように。
現実に行われる<復讐>は、娯楽ではないのだ。無責任な誰かの憂さ晴らしのために供されるエンターテイメントではない。
フィクションの中でなら許されるそれも、現実では許されてはいけないのだ。
もしそれを許して、自分や自分の大切なものが、見ず知らずの誰かの復讐の巻き添えになったらどう思うだろうか? このことの理不尽さを理解するべきだろう。
などと言う者がいる。
しかし、それを言った者がやり返した相手は、きっと、
『向こうが先にやった! 自分はやられたからやり返しただけだ!!』
と言うだろう。
人間同士の諍いなど、だいたいはこんなものだ。
『どっちが悪い』
の水掛け論を延々と行うことになる。
『自分は一方的な被害者だ!!』
と主張する者は、自身に都合の悪い情報は出さないことも多い。ゆえに、
<本当にまったく落ち度のない一方的な被害者>
なんてものは、たぶん、そんなに多くない。
なにしろ、親から一方的に虐待を受けていた子供に対してさえ、
『どうせ親の言うことを聞かないクソガキだったんだろ』
的なことを言う者さえいる。そんなことを言い出したら、それこそ<一方的な被害者>など、果たしてどれだけいるというのか。
本当の、
<やられっぱなし>
など、実はそれほど多くないのかもしれない。
だとすれば、『やられっぱなしで泣き寝入りするバカはいない』など、復讐を正当化する根拠とはなりえない。
こうやって、月城家も蒼井家も、復讐の正当性を否定する。否定することで、エンディミオンに、
『復讐を思いとどまらせる根拠』
を積み上げていく。
それは、一日二日でできることじゃない。以前にも言った通り、エンディミオンは、
『復讐をやめ続けなければいけない』
からだ。長ければ数百年に及ぶ今後の彼の人生の中で。
それには、
『復讐は何も生まない』
程度の理屈では到底足りない。エンディミオンは何かを生み出すために復讐をしていたわけじゃない。ただただ、
『憎い』
からだ。
憎悪に裏打ちされた自身の根源の部分から噴き出す衝動を抑え切れないからだ。
彼にはそれしかなかった。吸血鬼とそれに与する人間への憎悪だけが彼を形作っていた。
なのに今では、さくらが、洸が、恵莉花が、秋生がいる。
何もなかった彼に、
<守りたいもの>
ができたのだ。それを起点として、
『だから復讐は許されない』
という根拠を積み重ね、強固なものにしていかなければいけない。
復讐を続ければ何が起こるのかを、彼に知ってもらわなければならない。
彼が思いとどまれるように。復讐をやめ続けられるように。
現実に行われる<復讐>は、娯楽ではないのだ。無責任な誰かの憂さ晴らしのために供されるエンターテイメントではない。
フィクションの中でなら許されるそれも、現実では許されてはいけないのだ。
もしそれを許して、自分や自分の大切なものが、見ず知らずの誰かの復讐の巻き添えになったらどう思うだろうか? このことの理不尽さを理解するべきだろう。
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