ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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第三幕

ここで言う<背景>とは、<力>であり、<力を制御する胆>であり、<胆を成す錬>なんだ

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<一意>のコツには、『力を抜くこと』以上に大事な点がある。

それは、

『相手を認める』

こと。相手の存在を認めることで、より同調が確実になるんだ。

逆に、

『相手のことを認めなければ上手くいかない』

と言ってもいい。

当然だよね。『同調する』ということは相手がいて、相手に合わせるということなんだから。相手をまず認めないと、同調もできないし。

相手を認める精神的余裕があれば、力の制御もしやすい。

自分の力の制御ができるということは、相手が振るう力についても制御ができるようになるということなんだ。

それらはすべて繋がっていて、関連し合い、影響し合ってるんだよ。

悠里ユーリも、<一意>に習熟できれば、人間を傷付けずに制圧することも容易になる。

南米でセルゲイがゲリラを制圧したのも、これの応用だった。セルゲイが体に触れた瞬間に、まるで人形のようにゲリラ達は地面に転がされていたな。

もちろん、必要もないのに制圧するのは容認できない。ただし、急迫不正の侵害行為に対処できなければ意味がない。

その辺りの判断をするにも、冷静さが求められる。そして冷静でいるには、冷静さを担保できる背景がないと難しい。

ここで言う<背景>とは、<力>であり、<力を制御する胆>であり、<胆を成す錬>なんだ。

この積み重ねが、力を持つ者には求められる。

「あ…はぁっ! う……ふぅ……!」

そろそろ悠里も限界で、もう腕も動かなくなってきたみたいだったから僕が<一意>を解くと、途端に、その場に座り込んでしまった。

見た目には三歳くらいの子相手だから、もし人間に見られたら虐待と思われるかもしれないね。

だから僕も気を付けないとと思う。これを強要してしまっては、確かに虐待と言われても仕方ない。

だけど、二人にとってこれは僕との<遊び>でもある。二人が望んでるものであることが大事だ。

遊びだから、

「じゃ、そろそろ帰る?」

すっかり呼吸を整えて涼しい顔になっていた安和が訊いてきた。

「ああ、今日はもう……無理、かな……」

笑顔だけど立ち上がることもままならない様子で、悠里が言った。

十分に発散できたのが見て取れる。

吸血鬼やダンピールは力が強すぎるからなかなか全力を発揮できる機会も少ない。

成長してくるとそんなに気にならなくなってくるけど、幼いうちは鬱憤もたまってしまう。それを発散するためにもこうして鍛錬を積むんだ。

抑え付けるだけじゃ制御はできない。時にはこうして開放しなくちゃね。

そして家に帰り、僕達は三人で一緒にお風呂に入った。安和と悠里はともかく僕は汗もかいてないけど、一応、ね。

これ自体が親子のスキンシップでもあるし。

見た目には、十一歳くらいの兄と、三歳くらいの双子の弟妹、という感じだけど。

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