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第三幕

現実にいる特定の誰かの死を願うとか、消え去ってほしいとかいうことに創作を使ってほしくないとは、強く思ってる。それは、創作を潰す行為だから

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『だからさ、『自分にとっては<ぎょく>じゃないから潰してしまえ』なんてのも、結局は、『自分の思う<正義>を振り回して他人を攻撃する行為』だよね?

私は、他の人の<表現>とかについてはケチ付けるつもりはないんだ。

ましてや創作物の中で行われてる、<現実じゃないこと>についてなんてさ。

それがたとえ、<悪逆非道な許されない行為>であってもね。子供が被害を受けるような、親の立場からしたら目を背けたくなるようなものであってもだよ。

だってそれは、ただの<創作>だから。現実じゃないから。<嘘>だから。

前にも言ったけど、<創作>っていうのはね、<現実では実現不可能なこと><現実で実行したら許されないこと>について描くことができるってのが、一番の<価値>だと思ってる。

必要なのは創作を規制することじゃなくて、現実に生きてる私達の方が、『現実とフィクションの区別をつける』ことだと思うし、私は親として悠里ユーリ安和アンナ椿つばきにちゃんと現実とフィクションの区別を付けられる人間に育てたいと思う。

特に自分の好みじゃない、見たくないような内容のものについては、自分で見ないようにしてるよ。そしたらさ、どんなエグい内容の創作物が作られてたって、ちゃんと住み分けできるじゃん。

必要なのはそういうことでしょ?

親として自分の子供にそういうのをちゃんと教えずに、それで創作の方を規制しようってのは、私はただの怠慢だと思ってる。

だけどその一方で、冷静に考えなきゃいけないとも思ってるんだ。

たとえば、創作物のフリをして、特定の誰かの死を願うような、現実の世界からの抹殺を願うようなのは、さすがにマズいとも感じてるのも正直なところ。

私も大概、あれこれ言ってるけどさ。でも私は決して、死んでほしいとかこの世からいなくなってほしいとか思って言ってるわけじゃないんだよ。ただ、『意図的に他人を攻撃するようなのは、自分で自分を不幸にするよ』ってだけだよ。

だけど、現実にいる特定の誰かの死を願うとか、消え去ってほしいとかいうことに創作を使ってほしくないとは、強く思ってる。

それは、創作を潰す行為だから。

現実にいる具体的な相手について現実にどうにかなってほしいというのは、現実の中で済ませてほしい。創作の中に持ち込まないで。

創作を潰すための口実を与えないで。『現実と創作は違う』っていうのが大前提なんだよ。現実にいる特定の誰かを抹殺するための道具に創作を使わないで。

ホント大迷惑だから。『他人に迷惑を掛けないで』って話だよ。

ダメなんでしょ? 他人に迷惑を掛けるのは。だったらそれを守ってよ』



そうだね。<言論の自由><表現の自由>を盾に他人を攻撃する人間は、自由というものを履き違えていると僕も思う。

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