読後感？ 知らんなそんなもの。アンボイナにでも食わせてしまえ

有難迷惑

『近々戦争に巻き込まれて住人の大半が犠牲になる』

なぜそんなことが分かるかって？

簡単だ。以前から緊張状態にあった近隣の豪族がお互いに戦争を画策しているのを見てきたからだ。で、この町を含んだ場所を戦場にすることを考えているのだ。

いや、すでに『考えてる』段階ではなく、そのための準備をしてるのか。なので戦争になるのは間違いない。

しかし、藍繪正真らんかいしょうまはもちろん、町の住人達でさえそれには全く気付かず呑気に毎日を過ごしている。

そんな中、宿を出た藍繪正真らんかいしょうまはただぶらぶらと町の中を歩いた。

ボロボロの服を着て剥き身のままの剣を杖のようにして歩くその姿はさすがに異様にも見えたようだが、およそその剣を振り回してどうにかできそうな印象がなかったからか、すれ違う者達は訝しげには見るもののさほど警戒はしていなかった。

ちなみに金は、デインが、

「あんた金もなくしたのか？　ならこれを使えよ」

と銀貨三十枚。銅貨百枚。粒銭五百枚が入った袋を置いて行ってくれていた。

日本円にすると、三十万ちょいといったところか。それだけの金をポンと渡してくれるなど気前が良すぎると思うだろうが、まあ、すべて私の力で作った金だからな。惜しくもない。

なお、価値としては銀貨一枚＝銅貨百枚＝粒銭千枚だ。

ただし、今はまだ貨幣価値を知らない藍繪正真らんかいしょうまにとっては、

『小銭ばかりじゃらじゃら貰っても……』

とむしろ有難迷惑になっていたがな。＜紙幣＞が存在すると思っていたのだ。なのでせいぜいが、

『当面のメシ代ってことか……』

くらい、一万円とかそこら程度にしか思っていなかった。

そんな訳で正直心許ないと思いつつ、町の様子を見て回る。

着いた時には『これのどこが＜町＞だよ！？』と感じたものの、中心部までくればそれなりに賑やかな印象にはなってきていた。

人が行き交い、商店も並んでいる。それでも藍繪正真らんかいしょうまがイメージする町としてはやはり貧相ではあるが。

と、また武器屋があることに気が付いた。その武器屋は、剥き身の剣を杖のようについている藍繪正真らんかいしょうまに気が付くと、

「兄さん兄さん、いい剣があるよ。そんなボロいのじゃ役に立たんだろ。こっちのなんかどうだい？　軽くて丈夫で使い易いよ」

そう言って、革製の鞘に納まった剣を少し抜いて見せてきた。なるほど確かに今持っている剣よりも細身で軽そうで、何より綺麗だった。だからつい、

「いくらだ……？」

と訊き返してしまう。すると武器屋の主人らしき初老の男は、

「さすがお目が高い！　今ならその剣と交換で銀貨二枚だ！　お得だよ！」

満面の笑みで言う。それに対して藍繪正真らんかいしょうまは、

『銀貨二枚…？　まあ、そのくらいなら…それにこいつ重いし……』

などと考えて、銀貨二枚と持っていた剣とで、新しい剣を手に入れたのだった。