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必ずしも悪い気分でも
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向こうの地球の日本人の感覚なら、子供が野犬に食い散らかされた人骨を拾い集めて埋めるなどおよそピンとこない行為かもしれないが、死があまりにも日常に転がっているようなところだと、実はそれほど珍しいことでもない。当たり前すぎて忌避感が麻痺しているのだ。
このソレスも、住んでいた村が戦闘に巻き込まれ、見知った人間達が次々と殺される中、辛うじて家族と共に脱出したものの、逃げる間に家族も次々と喪うことでますます麻痺してしまったのだろうな。
そんなことにいちいちショックを受けていては生きていられない世界なのだ。
トレアはその中でもたまたま感受性が強い方だったにすぎん。
日本でも戦国時代の頃であればこんなものだったがな。
分かるか? <人間の命の重さ>など、その時々で変わるのだ。家族を殺された痛みや苦しみすら、それに比して変化する。常に一定ではない。
『命には命でもって贖う』
などという考え方は、そもそも成立せんのだ。命の重さは一定ではないのからな。
『目には目を、歯には歯を』で有名になったハムラビ法典が適用されていた時代でも、人間の命は平等などではなかった。
身分が下の者が上の者を殺せば罪が重くなり、逆に身分の上の者が下の者を殺せば免罪されることさえあった。そんな社会で運用されていた理屈が現代で使えると思うのか?
実に滑稽だな。
まあそれはさて置いて、ソレスとトリスの姉弟は、あの母子が死んだ小屋に実際に住み着いてしまった。
その上で、
「この辺で採れる野草を教えてよ」
とトレアに頼み込んでくる。
トレアにしてみると先の母子の一件があるので最初は少し躊躇っていたものの、
「ああ、これが食べられるやつだね。でも、こっちのは似てるけど毒のあるやつだ。畑で仕事してる時にも見たことあるよ」
「よく分かりますね」
「そりゃ、不作の時なんかには野草でしのいだこともあるからね。この辺りじゃ採れるのが違うだろうからそれが知りたかっただけだし」
ソレスが既に自分に近い年齢であることや、元の村では親を手伝って畑仕事などもしていたこともあり、植物の見分けはちゃんとついているのが分かって、安心した。先の母子のようなこともないだろう。
それにより、トレアとソレスは急速に親しくなっていった。元々同世代のようだしな。
正直、藍繪正真としては複雑な気持ちもあっただろう。このクソ生意気で図々しいガキが自分達の間に割り込んでくるのは業腹だっただろうしな。
それでも、
『いちいち追い払うのも面倒だしな……』
トレアがソレスと一緒に楽し気に野草を摘んだりしている姿を見ている分には、必ずしも悪い気分でもなかったのだった。
このソレスも、住んでいた村が戦闘に巻き込まれ、見知った人間達が次々と殺される中、辛うじて家族と共に脱出したものの、逃げる間に家族も次々と喪うことでますます麻痺してしまったのだろうな。
そんなことにいちいちショックを受けていては生きていられない世界なのだ。
トレアはその中でもたまたま感受性が強い方だったにすぎん。
日本でも戦国時代の頃であればこんなものだったがな。
分かるか? <人間の命の重さ>など、その時々で変わるのだ。家族を殺された痛みや苦しみすら、それに比して変化する。常に一定ではない。
『命には命でもって贖う』
などという考え方は、そもそも成立せんのだ。命の重さは一定ではないのからな。
『目には目を、歯には歯を』で有名になったハムラビ法典が適用されていた時代でも、人間の命は平等などではなかった。
身分が下の者が上の者を殺せば罪が重くなり、逆に身分の上の者が下の者を殺せば免罪されることさえあった。そんな社会で運用されていた理屈が現代で使えると思うのか?
実に滑稽だな。
まあそれはさて置いて、ソレスとトリスの姉弟は、あの母子が死んだ小屋に実際に住み着いてしまった。
その上で、
「この辺で採れる野草を教えてよ」
とトレアに頼み込んでくる。
トレアにしてみると先の母子の一件があるので最初は少し躊躇っていたものの、
「ああ、これが食べられるやつだね。でも、こっちのは似てるけど毒のあるやつだ。畑で仕事してる時にも見たことあるよ」
「よく分かりますね」
「そりゃ、不作の時なんかには野草でしのいだこともあるからね。この辺りじゃ採れるのが違うだろうからそれが知りたかっただけだし」
ソレスが既に自分に近い年齢であることや、元の村では親を手伝って畑仕事などもしていたこともあり、植物の見分けはちゃんとついているのが分かって、安心した。先の母子のようなこともないだろう。
それにより、トレアとソレスは急速に親しくなっていった。元々同世代のようだしな。
正直、藍繪正真としては複雑な気持ちもあっただろう。このクソ生意気で図々しいガキが自分達の間に割り込んでくるのは業腹だっただろうしな。
それでも、
『いちいち追い払うのも面倒だしな……』
トレアがソレスと一緒に楽し気に野草を摘んだりしている姿を見ている分には、必ずしも悪い気分でもなかったのだった。
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