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プロローグ ~惑星リヴィアターネの惨劇~
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人類が惑星間航行技術を確立させて既に二千年。その活動範囲を銀河系全体へと広げていた人類は、多くの惑星を開拓、開発し、人間が居住可能な環境へと作り変え、次々と移住を行っていた。
そんな中、<星歴>一九九六年に発見された惑星リヴィアターネは、人類に大きな衝撃を与えた。なにしろそれは、何も手を加えなくてもほぼ地球と同じ環境であったのみならず、明らかに人工物、いや、紛れもなく地球人類以外の手による住居跡が遺跡として残されていたのである。
文明レベルとしては精々西暦一〇〇〇年前後頃の地球程度と推測されたが、初めて明確な形で確認された地球人類以外の知的生命体の痕跡に、発見当時は大いに盛り上がりも見せたのだった。
綿密な調査が行われ、大規模な惑星改造の必要もなく即移住可能であることが改めて確認され、また遺跡がある意味では観光資源になるとも期待されたが故に移住希望者が殺到。かつてない規模での移住が開始されることとなった。
惑星リヴィアターネは急速に開発が進み各地に都市が形成され、まさに本当に意味での<第二の地球>ともてはやされたのだった。
<あれ>が発生するまでは……
それは、遺跡の調査の最中に起こった。それまでは何故か住居跡は発見されるのにも拘わらず人間と思しき生物の痕跡が発見されなかったことが謎とされていたのだが、その日遂に、遺跡の奥で人間の遺体らしきものが発見されたのである。しかしそれは、異様な遺体だった。明らかに何者かによって食われたかのような損傷が多数見られたのだ。しかも、同時に発見された複数の遺体全てに同じ特徴が確認された。子供と思われる小さな遺体にまでも。
研究者達はその異様さに恐れおののきながらもこれまで謎とされた文明の解明の大きな足掛かりを得たと興奮し、祝杯さえ挙げたのである。だがせっかくの世紀の大発見にも拘らずその事実はどこにも報告されることはなかった。何故か?。報告を行う者が誰もいなかったからである。
連絡が途絶えた調査隊の捜索の為に救助隊が編成され向かったが、今度はその救助隊からも連絡が途絶えてしまった。
さすがにここに来て事態の異様さを察し、行政府は完全防備のロボット部隊による捜索へと移行。事態の把握に乗り出した。それがこの後に起こる大惨事の引き金になるとも知らずに……
完全武装、BC兵器等による影響の心配もないロボット部隊による捜索で、遺跡の調査現場の異様さがようやく知られることになった。そこにいたのは、まるで映画さながらに<歩く死体>と化した調査隊や救助隊のメンバーの成れの果てが徘徊する、ゾンビの巣窟となっていたのである。
ロボットはまずおよそ生きた人間のそれとは思えない姿になった研究者の一人と思しき人物を確保し、そのバイタルサインを確認したが、僅かな体液の循環があるだけで脈も脳波も一切取れない、間違いなく人間としては既に<死んでいる>ことが確かめられただけであった。しかも、動きは緩慢ながら明確な攻撃性を見せ、外見上は戦闘服に身を包み武装した人間にも見えるロボットに襲い掛かり、手足などに噛み付いてきたりもしたのだ。
ロボットの視覚情報を通じある程度の状況を把握した行政府だったが、想定を上回る異常事態に混乱し、意思統一を図ることに手間取っている間に、生存者がいないことを確認したロボット部隊を、防疫措置が不十分なまま派遣した基地に戻してしまい、これがパンデミックの原因となってしまったのだった。
後の研究で分かったことだが、それは、ウイルスと細菌両方の特性を備えた未知の病原体で、感染力はそれまで人類が経験したどの病原体よりも強力かつ確実であり、人間なら数秒で即死する程の強い放射線を浴びせるか、摂氏三〇〇度以上の高熱で数十秒焼かない限り、いかなる薬品や化学物質でも死滅させることが出来ない、これまでの常識が全く通用しない恐ろしいものであった。
こうして、既に一億人以上の人間が移住していた惑星リヴィアターネは、僅か一年足らずで、たった数人の生存者を残し完全な死の星と化したのだった。
もちろん、脱出を図った者もいる。しかし、あまりに異常すぎる状況を危険視した総合政府は、惑星リヴィアターネを、重武装ロボット艦隊により厳重に封鎖。脱出を図る者がいれば大気圏を出る前に容赦なく撃墜し、さらに状況発生の十ヶ月後には上空百キロから地上を爆撃、主要な都市を全て焼き払った上に、爆撃を行ったロボット艦隊そのものを地上に投棄するという、徹底した封じ込めを行ったのであった。
無論、その過剰とも思える対応には批判も殺到したが、後の研究で判明することになった病原体の恐ろしさには誰もが口をつぐむしかなく、さらに数年後には惑星リヴィアターネの名を口にすることさえタブーとされる空気が形成されるに至ったのである。
しかも、極秘であったにも拘らずネット上に流出した、その病原体に感染した人間を遠隔操作のロボットを使い解剖した際の動画には、頭蓋を切り取り外したその中にある筈の脳は見当たらず、代わりに真っ白なカビのコロニーのようなものが詰まっているというあまりに恐ろしい事実が記されており、総合政府の対応はやむを得ないものだったという認識も広まっていたのだった。
それは、偽生症(Counterfeit Life Syndrome)と名付けられ、ワクチンも治療法もない恐怖の代名詞として人類の記憶に刻み込まれることとなった。
そして、人類にとって最大級のタブーとされた惑星リヴィアターネの惨事から十年。そこに一体のロボットが廃棄されたところからこの物語は始まるのである。
そんな中、<星歴>一九九六年に発見された惑星リヴィアターネは、人類に大きな衝撃を与えた。なにしろそれは、何も手を加えなくてもほぼ地球と同じ環境であったのみならず、明らかに人工物、いや、紛れもなく地球人類以外の手による住居跡が遺跡として残されていたのである。
文明レベルとしては精々西暦一〇〇〇年前後頃の地球程度と推測されたが、初めて明確な形で確認された地球人類以外の知的生命体の痕跡に、発見当時は大いに盛り上がりも見せたのだった。
綿密な調査が行われ、大規模な惑星改造の必要もなく即移住可能であることが改めて確認され、また遺跡がある意味では観光資源になるとも期待されたが故に移住希望者が殺到。かつてない規模での移住が開始されることとなった。
惑星リヴィアターネは急速に開発が進み各地に都市が形成され、まさに本当に意味での<第二の地球>ともてはやされたのだった。
<あれ>が発生するまでは……
それは、遺跡の調査の最中に起こった。それまでは何故か住居跡は発見されるのにも拘わらず人間と思しき生物の痕跡が発見されなかったことが謎とされていたのだが、その日遂に、遺跡の奥で人間の遺体らしきものが発見されたのである。しかしそれは、異様な遺体だった。明らかに何者かによって食われたかのような損傷が多数見られたのだ。しかも、同時に発見された複数の遺体全てに同じ特徴が確認された。子供と思われる小さな遺体にまでも。
研究者達はその異様さに恐れおののきながらもこれまで謎とされた文明の解明の大きな足掛かりを得たと興奮し、祝杯さえ挙げたのである。だがせっかくの世紀の大発見にも拘らずその事実はどこにも報告されることはなかった。何故か?。報告を行う者が誰もいなかったからである。
連絡が途絶えた調査隊の捜索の為に救助隊が編成され向かったが、今度はその救助隊からも連絡が途絶えてしまった。
さすがにここに来て事態の異様さを察し、行政府は完全防備のロボット部隊による捜索へと移行。事態の把握に乗り出した。それがこの後に起こる大惨事の引き金になるとも知らずに……
完全武装、BC兵器等による影響の心配もないロボット部隊による捜索で、遺跡の調査現場の異様さがようやく知られることになった。そこにいたのは、まるで映画さながらに<歩く死体>と化した調査隊や救助隊のメンバーの成れの果てが徘徊する、ゾンビの巣窟となっていたのである。
ロボットはまずおよそ生きた人間のそれとは思えない姿になった研究者の一人と思しき人物を確保し、そのバイタルサインを確認したが、僅かな体液の循環があるだけで脈も脳波も一切取れない、間違いなく人間としては既に<死んでいる>ことが確かめられただけであった。しかも、動きは緩慢ながら明確な攻撃性を見せ、外見上は戦闘服に身を包み武装した人間にも見えるロボットに襲い掛かり、手足などに噛み付いてきたりもしたのだ。
ロボットの視覚情報を通じある程度の状況を把握した行政府だったが、想定を上回る異常事態に混乱し、意思統一を図ることに手間取っている間に、生存者がいないことを確認したロボット部隊を、防疫措置が不十分なまま派遣した基地に戻してしまい、これがパンデミックの原因となってしまったのだった。
後の研究で分かったことだが、それは、ウイルスと細菌両方の特性を備えた未知の病原体で、感染力はそれまで人類が経験したどの病原体よりも強力かつ確実であり、人間なら数秒で即死する程の強い放射線を浴びせるか、摂氏三〇〇度以上の高熱で数十秒焼かない限り、いかなる薬品や化学物質でも死滅させることが出来ない、これまでの常識が全く通用しない恐ろしいものであった。
こうして、既に一億人以上の人間が移住していた惑星リヴィアターネは、僅か一年足らずで、たった数人の生存者を残し完全な死の星と化したのだった。
もちろん、脱出を図った者もいる。しかし、あまりに異常すぎる状況を危険視した総合政府は、惑星リヴィアターネを、重武装ロボット艦隊により厳重に封鎖。脱出を図る者がいれば大気圏を出る前に容赦なく撃墜し、さらに状況発生の十ヶ月後には上空百キロから地上を爆撃、主要な都市を全て焼き払った上に、爆撃を行ったロボット艦隊そのものを地上に投棄するという、徹底した封じ込めを行ったのであった。
無論、その過剰とも思える対応には批判も殺到したが、後の研究で判明することになった病原体の恐ろしさには誰もが口をつぐむしかなく、さらに数年後には惑星リヴィアターネの名を口にすることさえタブーとされる空気が形成されるに至ったのである。
しかも、極秘であったにも拘らずネット上に流出した、その病原体に感染した人間を遠隔操作のロボットを使い解剖した際の動画には、頭蓋を切り取り外したその中にある筈の脳は見当たらず、代わりに真っ白なカビのコロニーのようなものが詰まっているというあまりに恐ろしい事実が記されており、総合政府の対応はやむを得ないものだったという認識も広まっていたのだった。
それは、偽生症(Counterfeit Life Syndrome)と名付けられ、ワクチンも治療法もない恐怖の代名詞として人類の記憶に刻み込まれることとなった。
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