1 / 120
プロローグ ~惑星リヴィアターネの惨劇~
しおりを挟む
人類が惑星間航行技術を確立させて既に二千年。その活動範囲を銀河系全体へと広げていた人類は、多くの惑星を開拓、開発し、人間が居住可能な環境へと作り変え、次々と移住を行っていた。
そんな中、<星歴>一九九六年に発見された惑星リヴィアターネは、人類に大きな衝撃を与えた。なにしろそれは、何も手を加えなくてもほぼ地球と同じ環境であったのみならず、明らかに人工物、いや、紛れもなく地球人類以外の手による住居跡が遺跡として残されていたのである。
文明レベルとしては精々西暦一〇〇〇年前後頃の地球程度と推測されたが、初めて明確な形で確認された地球人類以外の知的生命体の痕跡に、発見当時は大いに盛り上がりも見せたのだった。
綿密な調査が行われ、大規模な惑星改造の必要もなく即移住可能であることが改めて確認され、また遺跡がある意味では観光資源になるとも期待されたが故に移住希望者が殺到。かつてない規模での移住が開始されることとなった。
惑星リヴィアターネは急速に開発が進み各地に都市が形成され、まさに本当に意味での<第二の地球>ともてはやされたのだった。
<あれ>が発生するまでは……
それは、遺跡の調査の最中に起こった。それまでは何故か住居跡は発見されるのにも拘わらず人間と思しき生物の痕跡が発見されなかったことが謎とされていたのだが、その日遂に、遺跡の奥で人間の遺体らしきものが発見されたのである。しかしそれは、異様な遺体だった。明らかに何者かによって食われたかのような損傷が多数見られたのだ。しかも、同時に発見された複数の遺体全てに同じ特徴が確認された。子供と思われる小さな遺体にまでも。
研究者達はその異様さに恐れおののきながらもこれまで謎とされた文明の解明の大きな足掛かりを得たと興奮し、祝杯さえ挙げたのである。だがせっかくの世紀の大発見にも拘らずその事実はどこにも報告されることはなかった。何故か?。報告を行う者が誰もいなかったからである。
連絡が途絶えた調査隊の捜索の為に救助隊が編成され向かったが、今度はその救助隊からも連絡が途絶えてしまった。
さすがにここに来て事態の異様さを察し、行政府は完全防備のロボット部隊による捜索へと移行。事態の把握に乗り出した。それがこの後に起こる大惨事の引き金になるとも知らずに……
完全武装、BC兵器等による影響の心配もないロボット部隊による捜索で、遺跡の調査現場の異様さがようやく知られることになった。そこにいたのは、まるで映画さながらに<歩く死体>と化した調査隊や救助隊のメンバーの成れの果てが徘徊する、ゾンビの巣窟となっていたのである。
ロボットはまずおよそ生きた人間のそれとは思えない姿になった研究者の一人と思しき人物を確保し、そのバイタルサインを確認したが、僅かな体液の循環があるだけで脈も脳波も一切取れない、間違いなく人間としては既に<死んでいる>ことが確かめられただけであった。しかも、動きは緩慢ながら明確な攻撃性を見せ、外見上は戦闘服に身を包み武装した人間にも見えるロボットに襲い掛かり、手足などに噛み付いてきたりもしたのだ。
ロボットの視覚情報を通じある程度の状況を把握した行政府だったが、想定を上回る異常事態に混乱し、意思統一を図ることに手間取っている間に、生存者がいないことを確認したロボット部隊を、防疫措置が不十分なまま派遣した基地に戻してしまい、これがパンデミックの原因となってしまったのだった。
後の研究で分かったことだが、それは、ウイルスと細菌両方の特性を備えた未知の病原体で、感染力はそれまで人類が経験したどの病原体よりも強力かつ確実であり、人間なら数秒で即死する程の強い放射線を浴びせるか、摂氏三〇〇度以上の高熱で数十秒焼かない限り、いかなる薬品や化学物質でも死滅させることが出来ない、これまでの常識が全く通用しない恐ろしいものであった。
こうして、既に一億人以上の人間が移住していた惑星リヴィアターネは、僅か一年足らずで、たった数人の生存者を残し完全な死の星と化したのだった。
もちろん、脱出を図った者もいる。しかし、あまりに異常すぎる状況を危険視した総合政府は、惑星リヴィアターネを、重武装ロボット艦隊により厳重に封鎖。脱出を図る者がいれば大気圏を出る前に容赦なく撃墜し、さらに状況発生の十ヶ月後には上空百キロから地上を爆撃、主要な都市を全て焼き払った上に、爆撃を行ったロボット艦隊そのものを地上に投棄するという、徹底した封じ込めを行ったのであった。
無論、その過剰とも思える対応には批判も殺到したが、後の研究で判明することになった病原体の恐ろしさには誰もが口をつぐむしかなく、さらに数年後には惑星リヴィアターネの名を口にすることさえタブーとされる空気が形成されるに至ったのである。
しかも、極秘であったにも拘らずネット上に流出した、その病原体に感染した人間を遠隔操作のロボットを使い解剖した際の動画には、頭蓋を切り取り外したその中にある筈の脳は見当たらず、代わりに真っ白なカビのコロニーのようなものが詰まっているというあまりに恐ろしい事実が記されており、総合政府の対応はやむを得ないものだったという認識も広まっていたのだった。
それは、偽生症(Counterfeit Life Syndrome)と名付けられ、ワクチンも治療法もない恐怖の代名詞として人類の記憶に刻み込まれることとなった。
そして、人類にとって最大級のタブーとされた惑星リヴィアターネの惨事から十年。そこに一体のロボットが廃棄されたところからこの物語は始まるのである。
そんな中、<星歴>一九九六年に発見された惑星リヴィアターネは、人類に大きな衝撃を与えた。なにしろそれは、何も手を加えなくてもほぼ地球と同じ環境であったのみならず、明らかに人工物、いや、紛れもなく地球人類以外の手による住居跡が遺跡として残されていたのである。
文明レベルとしては精々西暦一〇〇〇年前後頃の地球程度と推測されたが、初めて明確な形で確認された地球人類以外の知的生命体の痕跡に、発見当時は大いに盛り上がりも見せたのだった。
綿密な調査が行われ、大規模な惑星改造の必要もなく即移住可能であることが改めて確認され、また遺跡がある意味では観光資源になるとも期待されたが故に移住希望者が殺到。かつてない規模での移住が開始されることとなった。
惑星リヴィアターネは急速に開発が進み各地に都市が形成され、まさに本当に意味での<第二の地球>ともてはやされたのだった。
<あれ>が発生するまでは……
それは、遺跡の調査の最中に起こった。それまでは何故か住居跡は発見されるのにも拘わらず人間と思しき生物の痕跡が発見されなかったことが謎とされていたのだが、その日遂に、遺跡の奥で人間の遺体らしきものが発見されたのである。しかしそれは、異様な遺体だった。明らかに何者かによって食われたかのような損傷が多数見られたのだ。しかも、同時に発見された複数の遺体全てに同じ特徴が確認された。子供と思われる小さな遺体にまでも。
研究者達はその異様さに恐れおののきながらもこれまで謎とされた文明の解明の大きな足掛かりを得たと興奮し、祝杯さえ挙げたのである。だがせっかくの世紀の大発見にも拘らずその事実はどこにも報告されることはなかった。何故か?。報告を行う者が誰もいなかったからである。
連絡が途絶えた調査隊の捜索の為に救助隊が編成され向かったが、今度はその救助隊からも連絡が途絶えてしまった。
さすがにここに来て事態の異様さを察し、行政府は完全防備のロボット部隊による捜索へと移行。事態の把握に乗り出した。それがこの後に起こる大惨事の引き金になるとも知らずに……
完全武装、BC兵器等による影響の心配もないロボット部隊による捜索で、遺跡の調査現場の異様さがようやく知られることになった。そこにいたのは、まるで映画さながらに<歩く死体>と化した調査隊や救助隊のメンバーの成れの果てが徘徊する、ゾンビの巣窟となっていたのである。
ロボットはまずおよそ生きた人間のそれとは思えない姿になった研究者の一人と思しき人物を確保し、そのバイタルサインを確認したが、僅かな体液の循環があるだけで脈も脳波も一切取れない、間違いなく人間としては既に<死んでいる>ことが確かめられただけであった。しかも、動きは緩慢ながら明確な攻撃性を見せ、外見上は戦闘服に身を包み武装した人間にも見えるロボットに襲い掛かり、手足などに噛み付いてきたりもしたのだ。
ロボットの視覚情報を通じある程度の状況を把握した行政府だったが、想定を上回る異常事態に混乱し、意思統一を図ることに手間取っている間に、生存者がいないことを確認したロボット部隊を、防疫措置が不十分なまま派遣した基地に戻してしまい、これがパンデミックの原因となってしまったのだった。
後の研究で分かったことだが、それは、ウイルスと細菌両方の特性を備えた未知の病原体で、感染力はそれまで人類が経験したどの病原体よりも強力かつ確実であり、人間なら数秒で即死する程の強い放射線を浴びせるか、摂氏三〇〇度以上の高熱で数十秒焼かない限り、いかなる薬品や化学物質でも死滅させることが出来ない、これまでの常識が全く通用しない恐ろしいものであった。
こうして、既に一億人以上の人間が移住していた惑星リヴィアターネは、僅か一年足らずで、たった数人の生存者を残し完全な死の星と化したのだった。
もちろん、脱出を図った者もいる。しかし、あまりに異常すぎる状況を危険視した総合政府は、惑星リヴィアターネを、重武装ロボット艦隊により厳重に封鎖。脱出を図る者がいれば大気圏を出る前に容赦なく撃墜し、さらに状況発生の十ヶ月後には上空百キロから地上を爆撃、主要な都市を全て焼き払った上に、爆撃を行ったロボット艦隊そのものを地上に投棄するという、徹底した封じ込めを行ったのであった。
無論、その過剰とも思える対応には批判も殺到したが、後の研究で判明することになった病原体の恐ろしさには誰もが口をつぐむしかなく、さらに数年後には惑星リヴィアターネの名を口にすることさえタブーとされる空気が形成されるに至ったのである。
しかも、極秘であったにも拘らずネット上に流出した、その病原体に感染した人間を遠隔操作のロボットを使い解剖した際の動画には、頭蓋を切り取り外したその中にある筈の脳は見当たらず、代わりに真っ白なカビのコロニーのようなものが詰まっているというあまりに恐ろしい事実が記されており、総合政府の対応はやむを得ないものだったという認識も広まっていたのだった。
それは、偽生症(Counterfeit Life Syndrome)と名付けられ、ワクチンも治療法もない恐怖の代名詞として人類の記憶に刻み込まれることとなった。
そして、人類にとって最大級のタブーとされた惑星リヴィアターネの惨事から十年。そこに一体のロボットが廃棄されたところからこの物語は始まるのである。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる