23 / 120
群れ
しおりを挟む
偽生症(Counterfeit Life Syndrome)=CLSという病気について現時点で分かっている特徴に、<ある程度以上の量量の脳を持つ生物以外では、感染しても発症しない>というものがある。具体的に上げるなら、<カラスは発症し死んだ状態で動き回るようになるが、ニワトリは発症しても死ぬだけで動き回ることはなく、また、スズメは感染しても発症しない>といった具合だ。
CLS患者を解剖し詳細に検査を行った結果、CLSウイルスは脳細胞と神経細胞に寄生し、それをエネルギーとして増殖、カビのコロニーのようなものを形成して脳細胞や神経細胞と入れ替わってしまうということが分かっている。
しかも、そうやって乗っ取った動物の体を操るにはある程度の大きさが必要で、ニワトリの脳の大きさでは体を操るには足りず、カラスの脳ほどの大きさが最低限必要らしいということだった。だからネズミ程度の大きさの小動物の多くは発症しない。
また、一度形成されたコロニー様の器官はその状態で機能が固定されるらしく、生物の脳と同じで大きく破壊されると再生はしないということが確認されていた。だから、頭を破壊するか切り離すと、もはや活動不能となり、ウイルスそのものは死滅しないが生物としては安らかな死を得られるという訳だ。
ちなみに、肉体の維持は、心臓に頼らない形で体液を循環させることで酸素や栄養素を供給して行われており、動きが緩慢なのは心臓を使わない為に一度に大量の体液を循環させられないことが一番の理由と推測されている。
と、アリョーナB10のメモリーには残されていた。これは、<アリスマリア・ハーガン・メルシュ>という科学者が発表した論文の一部がニュースとして報道された時のものである。
もっとも、CLSという病気についての諸々は、アリョーナB10は関心がなかったようだ。故に彼女は黙々と住宅の修理を行い、もう既に三軒の住宅の修繕を終えてしまっていた。
何をしているのかと呆れられてしまうだろうが、肝心のCLS患者が現れない以上は仕方ない一面もある。
そしてその日も、彼女はある住宅の屋根を修理していた。しかしそれは奇妙な家だった。やけに生活感がないのに一室だけ一般的ではない機器に埋め尽くされていたのだ。明らかに普通じゃないとは一目見て思ったが、彼女は敢えてそれを気にしないようにしていた。気にしても仕方ないからである。
やがて屋根の修理がひと段落ついて、ふと何気なく視線を向けた先に、彼女は異様なものを発見したのだった。
「…バイソン…?」
そう、それは、人間達が家畜として持ち込んだバイソンの群れだった。その数、二百頭以上。
CLSウイルスは、ある程度以上の重量の脳を持つ動物なら何にでも感染する。彼女は、人間のCLS患者には一人しか遭遇しなかったのに、CLSに感染したバイソンの群れを発見してしまったのだ。
本来は草食であるバイソンも、CLSを発症すると他の動物を捕食するようになる。そのバイソンの群れは、アリョーナB10を発見し、食う為にそこに集まったのだった。
CLS患者を解剖し詳細に検査を行った結果、CLSウイルスは脳細胞と神経細胞に寄生し、それをエネルギーとして増殖、カビのコロニーのようなものを形成して脳細胞や神経細胞と入れ替わってしまうということが分かっている。
しかも、そうやって乗っ取った動物の体を操るにはある程度の大きさが必要で、ニワトリの脳の大きさでは体を操るには足りず、カラスの脳ほどの大きさが最低限必要らしいということだった。だからネズミ程度の大きさの小動物の多くは発症しない。
また、一度形成されたコロニー様の器官はその状態で機能が固定されるらしく、生物の脳と同じで大きく破壊されると再生はしないということが確認されていた。だから、頭を破壊するか切り離すと、もはや活動不能となり、ウイルスそのものは死滅しないが生物としては安らかな死を得られるという訳だ。
ちなみに、肉体の維持は、心臓に頼らない形で体液を循環させることで酸素や栄養素を供給して行われており、動きが緩慢なのは心臓を使わない為に一度に大量の体液を循環させられないことが一番の理由と推測されている。
と、アリョーナB10のメモリーには残されていた。これは、<アリスマリア・ハーガン・メルシュ>という科学者が発表した論文の一部がニュースとして報道された時のものである。
もっとも、CLSという病気についての諸々は、アリョーナB10は関心がなかったようだ。故に彼女は黙々と住宅の修理を行い、もう既に三軒の住宅の修繕を終えてしまっていた。
何をしているのかと呆れられてしまうだろうが、肝心のCLS患者が現れない以上は仕方ない一面もある。
そしてその日も、彼女はある住宅の屋根を修理していた。しかしそれは奇妙な家だった。やけに生活感がないのに一室だけ一般的ではない機器に埋め尽くされていたのだ。明らかに普通じゃないとは一目見て思ったが、彼女は敢えてそれを気にしないようにしていた。気にしても仕方ないからである。
やがて屋根の修理がひと段落ついて、ふと何気なく視線を向けた先に、彼女は異様なものを発見したのだった。
「…バイソン…?」
そう、それは、人間達が家畜として持ち込んだバイソンの群れだった。その数、二百頭以上。
CLSウイルスは、ある程度以上の重量の脳を持つ動物なら何にでも感染する。彼女は、人間のCLS患者には一人しか遭遇しなかったのに、CLSに感染したバイソンの群れを発見してしまったのだ。
本来は草食であるバイソンも、CLSを発症すると他の動物を捕食するようになる。そのバイソンの群れは、アリョーナB10を発見し、食う為にそこに集まったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる