死の惑星に安らぎを

京衛武百十

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群れ

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偽生症(Counterfeit Life Syndrome)=CLSという病気について現時点で分かっている特徴に、<ある程度以上の量量の脳を持つ生物以外では、感染しても発症しない>というものがある。具体的に上げるなら、<カラスは発症し死んだ状態で動き回るようになるが、ニワトリは発症しても死ぬだけで動き回ることはなく、また、スズメは感染しても発症しない>といった具合だ。

CLS患者を解剖し詳細に検査を行った結果、CLSウイルスは脳細胞と神経細胞に寄生し、それをエネルギーとして増殖、カビのコロニーのようなものを形成して脳細胞や神経細胞と入れ替わってしまうということが分かっている。

しかも、そうやって乗っ取った動物の体を操るにはある程度の大きさが必要で、ニワトリの脳の大きさでは体を操るには足りず、カラスの脳ほどの大きさが最低限必要らしいということだった。だからネズミ程度の大きさの小動物の多くは発症しない。

また、一度形成されたコロニー様の器官はその状態で機能が固定されるらしく、生物の脳と同じで大きく破壊されると再生はしないということが確認されていた。だから、頭を破壊するか切り離すと、もはや活動不能となり、ウイルスそのものは死滅しないが生物としては安らかな死を得られるという訳だ。

ちなみに、肉体の維持は、心臓に頼らない形で体液を循環させることで酸素や栄養素を供給して行われており、動きが緩慢なのは心臓を使わない為に一度に大量の体液を循環させられないことが一番の理由と推測されている。

と、アリョーナB10のメモリーには残されていた。これは、<アリスマリア・ハーガン・メルシュ>という科学者が発表した論文の一部がニュースとして報道された時のものである。

もっとも、CLSという病気についての諸々は、アリョーナB10は関心がなかったようだ。故に彼女は黙々と住宅の修理を行い、もう既に三軒の住宅の修繕を終えてしまっていた。

何をしているのかと呆れられてしまうだろうが、肝心のCLS患者が現れない以上は仕方ない一面もある。

そしてその日も、彼女はある住宅の屋根を修理していた。しかしそれは奇妙な家だった。やけに生活感がないのに一室だけ一般的ではない機器に埋め尽くされていたのだ。明らかに普通じゃないとは一目見て思ったが、彼女は敢えてそれを気にしないようにしていた。気にしても仕方ないからである。

やがて屋根の修理がひと段落ついて、ふと何気なく視線を向けた先に、彼女は異様なものを発見したのだった。

「…バイソン…?」

そう、それは、人間達が家畜として持ち込んだバイソンの群れだった。その数、二百頭以上。

CLSウイルスは、ある程度以上の重量の脳を持つ動物なら何にでも感染する。彼女は、人間のCLS患者には一人しか遭遇しなかったのに、CLSに感染したバイソンの群れを発見してしまったのだ。

本来は草食であるバイソンも、CLSを発症すると他の動物を捕食するようになる。そのバイソンの群れは、アリョーナB10を発見し、食う為にそこに集まったのだった。

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