死の惑星に安らぎを

京衛武百十

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人間社会においては、ロボットはここまで露骨に対立することはない。自分達がそのような真似をすることで人間達に恐怖や不安を与えることを理解しているからだ。

しかしここには人間はおらず、恐怖や不安を与える心配もない。しかもこの場にいる一機については完全な違法改造を施された異常なロボットだ。そんな状況が、彼女らから<タガ>を奪っていた。

「命令を順守しないというのですか? あなたも壊れてますね! あなた方のように壊れた危険なロボットを見逃すわけにはいきません!」

そう言ってタリアP55SIは腰の刀を抜いた。それは、日本刀の太刀を模した超振動ブレードだった。

その太刀を正眼に構え、フィーナQ3-Ver.1911と正対する。この二体は、要人警護仕様のメイトギアとしては、双方共に最強と謳われたロボットである。戦闘力では拮抗しているだろう。どちらが勝ってもおかしくなかった。

互いにじりじりと間合いを詰め、若干、間合いで有利なフィーナQ3-Ver.1911が先に仕掛けた。両手に仕込まれた超振動ワイヤーを伸ばし、タリアP55SIの体を薙ぎ払う。

だがそれは、腰まである彼女の髪によって阻まれた。彼女の髪にも超振動ワイヤーが仕込まれていたのだ。ただしそれは攻撃用と言うよりも、フィーナQ3-Ver.1911が持つ超振動ワイヤーを防ぐ為の守りの意味が強いものだった。なにしろ彼女は、当時最強と言われたフィーナQ3-Ver.1911に対抗する為に作られたメイトギアだったのだから。

超振動ワイヤーの攻撃を自身の髪に仕込まれた超振動ワイヤーで防ぎつつ一撃を加える。それが彼女の戦い方だった。しかも今の彼女は超振動ブレードの太刀を装備している。明らかに彼女の方が有利であった。有利の筈だった。

初手を防がれたフィーナQ3-Ver.1911が次の攻撃に移る為に態勢を入れ替えようとしているところに真っすぐに切っ先を突き出したタリアP55SIの視界を、突然何かが遮った。

エレクシアYM10だった。エレクシアYM10が、タリアP55SIの顔に向けて自動小銃をフルオートで放ったのである。それ自体は彼女にダメージを与えるものではなかったが、多数の弾丸がチャフの役目もしてセンサーを阻害。その一瞬の隙が勝負を決したのだった。

後に残ったのは、フィーナQ3-Ver.1911の超振動ワイヤーによりバラバラに解体されたタリアP55SIの残骸だった。

「やはり、正しいものが勝つのですね」

ただの散らばった機械部品と化したタリアP55SIを見下ろしつつフィーナQ3-Ver.1911はそう笑ったが、一部始終を見ていたアンナTSLフラウヴェアとプリムラEL808は素直に喜ぶことができなかった。

フィーナQ3-Ver.1911が勝ったのは、彼女が正しいからではない。単に、二対一という戦力差による当然の帰結でしかない。それを、『自分が正しいから勝った』と言ってのける彼女の姿には、どこか薄ら寒いものすら感じられたのであった。

だがこうして、<リヴィアターネの住人>である彼女達の生活は、これからも続くことになったのである。

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