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研究施設
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CLS患者を受領したリリアテレサが、リルフィーナの背後にいるグローネンKS6に視線を向けた。
「…そのロボットは…?」
やはり冷たい視線を向けてくるリリアテレサに対し、彼はぷいっと顔を背けた。
「なんですかこのロボット? 生意気ですね」
表情は変わらないが、その口調は明らかに不機嫌そうなものになっていた。
「軍用の戦闘ロボットなので、私のデータベースにも正確なものは登録されてませんが、恐らくグローネンシリーズと呼ばれるものだと思われます。戦闘モードが破損しており、危険はないと判断します」
リルフィーナはそう言ったが、リリアテレサは露骨に見下すように見て、
「あなたに用はありません。どこへなりと行きなさい」
右手を差出し、しっしっと追い払う仕草をしてみせた。だがそれに対してグローネンKS6は敢えて逆らうようにリリアテレサの横を通り過ぎ建物の方へと歩き出したのだった。
「こら! 勝手に立ち入らないでください。ここはアリスマリア・ハーガン・メルシュ博士の研究施設です。部外者の立ち入りを禁止します!」
そんなリリアテレサの警告に対し、グローネンKS6は頭を彼女に向けて、ぎろりと睨むような仕草をしてみせた。するとリリアテレサが、表情は変わらなかったが怯んだように半歩下がった。
無理もない。全く戦闘能力を持たないリリアJS605sと軍用の戦闘ロボットであるグローネンKS6では、本当の人間の子供と野生のトラ以上の戦闘能力の差がある。戦闘モードは壊れているとはいえ、露骨に敵対する者に対してはある程度の実力行使を行うことも不可能ではないのだから、リリアテレサでは全く勝てる要素のない相手だったのだ。
「危険がないって、どこが…?」
基本的に表情は変わっていない筈だが何故か不満そうにしてるのが分かってしまう顔で、リリアテレサは彼の後についていくようにして建物へと戻っていった。それは、彼女が言ったとおり、アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士という科学者が建てた研究施設であった。
アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士は、いくつもの発明で特許を持ち、その特許料収入だけでいかなる制約も受けず自由気ままに自らの研究を続ける稀代の天才科学者であり、現在の科学技術には欠かせない人間の一人と目されていた。
が、同時に、途方もない、人間社会に対してあまりにも危険すぎる、人類史上でも十本の指に入るであろうと誰もが噂する人格破綻者でもあった。人としての倫理観というものを全く持ち合わせず、これまでは辛うじて打算によってのみ人類社会と折り合いをつけてきたという、生粋のサイコパス科学者なのであった。
「…そのロボットは…?」
やはり冷たい視線を向けてくるリリアテレサに対し、彼はぷいっと顔を背けた。
「なんですかこのロボット? 生意気ですね」
表情は変わらないが、その口調は明らかに不機嫌そうなものになっていた。
「軍用の戦闘ロボットなので、私のデータベースにも正確なものは登録されてませんが、恐らくグローネンシリーズと呼ばれるものだと思われます。戦闘モードが破損しており、危険はないと判断します」
リルフィーナはそう言ったが、リリアテレサは露骨に見下すように見て、
「あなたに用はありません。どこへなりと行きなさい」
右手を差出し、しっしっと追い払う仕草をしてみせた。だがそれに対してグローネンKS6は敢えて逆らうようにリリアテレサの横を通り過ぎ建物の方へと歩き出したのだった。
「こら! 勝手に立ち入らないでください。ここはアリスマリア・ハーガン・メルシュ博士の研究施設です。部外者の立ち入りを禁止します!」
そんなリリアテレサの警告に対し、グローネンKS6は頭を彼女に向けて、ぎろりと睨むような仕草をしてみせた。するとリリアテレサが、表情は変わらなかったが怯んだように半歩下がった。
無理もない。全く戦闘能力を持たないリリアJS605sと軍用の戦闘ロボットであるグローネンKS6では、本当の人間の子供と野生のトラ以上の戦闘能力の差がある。戦闘モードは壊れているとはいえ、露骨に敵対する者に対してはある程度の実力行使を行うことも不可能ではないのだから、リリアテレサでは全く勝てる要素のない相手だったのだ。
「危険がないって、どこが…?」
基本的に表情は変わっていない筈だが何故か不満そうにしてるのが分かってしまう顔で、リリアテレサは彼の後についていくようにして建物へと戻っていった。それは、彼女が言ったとおり、アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士という科学者が建てた研究施設であった。
アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士は、いくつもの発明で特許を持ち、その特許料収入だけでいかなる制約も受けず自由気ままに自らの研究を続ける稀代の天才科学者であり、現在の科学技術には欠かせない人間の一人と目されていた。
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