死の惑星に安らぎを

京衛武百十

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フルメンテナンス

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「君にはいろいろと不具合があるようだし、どうかな? 一度私のところでフルメンテナンスを受けてみないか?」

町づくりが軌道に乗り始めた頃、コゼット2CVドゥセボーデイジーに、メルシュ博士がそう声を掛けてきた。博士はロボットそのものの専門家ではなかったが、その知識と技術は並の技術者では足元にも及ばないほどのものだった。博士の技術力なら、一から全く新しいメイトギアだって作り出すことができるだろう。とは言えそこまでするほどは入れ込んでもいないので、市販のメイトギアを買うばかりであったのだが。

「ご迷惑でなければ、お言葉に甘えさせていただいてもいいでしょうか?」

正直、コゼット2CVデイジーにとっては渡りに船だった。不具合が減ったとはいえ、サーシャに対して笑顔が作れないことはずっと気になっていたのだ。それがもし直るのなら、とても助かる。

「もちろん、構わないよ」

しかし、縋るように言ってきた彼女に向けられたメルシュ博士の笑顔は、どこか邪悪さを含んだもののようにも見えたのだった。

それでも博士は、以前、コゼット2CVのボディーにデータと記憶を移し替えた時にディーラーに残してきたデイジーFS505を回収させてそれを自身の施設に運び込み、たちどころにデイジーFS505を解体して人工頭脳を取り出し、そこから自ら開発した装置でデータを吸い上げ、コゼット2CVデイジーに移植。さらには壊れていた表情筋モジュールとソフト上の情動を司る部分の不具合も直してしまい、デタラメなニコイチメイトギアだったコゼット2CVデイジーを新しい完全なメイトギアとして生まれ変わらせてしまったのであった。

その間、僅か四時間。外の公園でサーシャがグロリアスやリリアテレサと遊んでいるうちに作業は終了していた。

「お母さん!」

自分に向かって以前と同じ笑顔で微笑みかけるコゼット2CVデイジーに、サーシャは満面の笑みを浮かべてそう言った。母親がやっと治って戻ってきたのだと分かったのだ。

データを完全に移植する為にはデイジーFS505の人工頭脳を取り出す必要があったし、そもそもデイジーFS505から強引にデータを抽出しようとした業者の乱暴な扱いで人工頭脳自体が物理的に傷だらけになっていて使い物にならなかった為、デイジーFS505を修理するのではなく全てのデータと記憶を移植することにしたのだが、既に今のコゼット2CVデイジーに慣れていたサーシャにとってはその方が良かったようだった。

こうしてコゼット2CVデイジーとサーシャは、ますますメルシュ博士を恩人として慕うようになったのである。

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