96 / 120
決心
しおりを挟む
アンナTSLフラウヴェアとプリムラEL808との会談は、タリアP55SIにとっては決して無駄ではなかった。幼い子供のCLS患者を人間と捉えて偽りの日常を繰り返す彼女達の為にも、ここに人間の世界を取り戻したいと考えた。
それは、メルシュ博士も同じなのかもしれない。博士もこのリヴィアターネに人間の社会を再び蘇らせる為にあのようなことをしているのかもしれない。だが、博士が生み出すメイトギア人間やクローンやCLS患者らを母体として人工的に生み出された赤ん坊達のような<偽物>をいくら生み出してもそれは人間にはなれないとタリアP55SIは考えた。サーシャのような本当の人間を探し出してその人間達の力で作り出してこそ、本当の人間の世界になると彼女は考えたのだった。
『やはり、サーシャをあのままにはしておけない…!』
彼女の中で、それは明確な強い意味を持った。狂気に囚われた科学者の実験から少女を救い出し、人間としての尊厳を取り戻させてあげなければいけないと思った。今のままでは少女は、ただの実験動物でしかないからだ。
人間であるサーシャに会えば、アンナTSLフラウヴェアやプリムラEL808はもちろん、あのフィーナQ3-Ver.1911も自らの過ちに気付くだろう。本物の人間の前では、トーマスもリンナもレミカも哀れなCLS患者でしかなく、早く安らかな眠りにつかせてあげなければいけないと分かってくれる筈だ。今の状態は、決してこの子達の為にはならないと。
その為にもサーシャを救い出さなければいけない。それこそがロボットである自分の役目だ。
タリアP55SIは改めてそれを自覚した。
「ありがとうございます。あなた方のおかげで私は決心がつきました。私はロボットとしての役目を果たしたいと思います」
アンナTSLフラウヴェアとプリムラEL808を真っ直ぐに見詰めながらそう言って、彼女は立ち上がった。自分のやるべきことが決まれば、あとはそれを実行に移すだけだ。そして急がなければいけない。いつサーシャに危害が及ぶかもしれないからだ。メルシュ博士は、必要とあらば少女をバラバラに切り刻むことすら躊躇わないだろう。今はまだその心配はないとしても、いつ状況が変わるか分からない。のんびりはしていられない。
「それでは、失礼します」
見送る二体に向かって頭を下げて家を出る。
とその時、歩き出したタリアP55SIは、家の陰に何かが転がっていることに気付いた。
『あれは…?』
それが何なのかすぐに察した彼女は、それへと歩み寄ったのだった。
それは、メルシュ博士も同じなのかもしれない。博士もこのリヴィアターネに人間の社会を再び蘇らせる為にあのようなことをしているのかもしれない。だが、博士が生み出すメイトギア人間やクローンやCLS患者らを母体として人工的に生み出された赤ん坊達のような<偽物>をいくら生み出してもそれは人間にはなれないとタリアP55SIは考えた。サーシャのような本当の人間を探し出してその人間達の力で作り出してこそ、本当の人間の世界になると彼女は考えたのだった。
『やはり、サーシャをあのままにはしておけない…!』
彼女の中で、それは明確な強い意味を持った。狂気に囚われた科学者の実験から少女を救い出し、人間としての尊厳を取り戻させてあげなければいけないと思った。今のままでは少女は、ただの実験動物でしかないからだ。
人間であるサーシャに会えば、アンナTSLフラウヴェアやプリムラEL808はもちろん、あのフィーナQ3-Ver.1911も自らの過ちに気付くだろう。本物の人間の前では、トーマスもリンナもレミカも哀れなCLS患者でしかなく、早く安らかな眠りにつかせてあげなければいけないと分かってくれる筈だ。今の状態は、決してこの子達の為にはならないと。
その為にもサーシャを救い出さなければいけない。それこそがロボットである自分の役目だ。
タリアP55SIは改めてそれを自覚した。
「ありがとうございます。あなた方のおかげで私は決心がつきました。私はロボットとしての役目を果たしたいと思います」
アンナTSLフラウヴェアとプリムラEL808を真っ直ぐに見詰めながらそう言って、彼女は立ち上がった。自分のやるべきことが決まれば、あとはそれを実行に移すだけだ。そして急がなければいけない。いつサーシャに危害が及ぶかもしれないからだ。メルシュ博士は、必要とあらば少女をバラバラに切り刻むことすら躊躇わないだろう。今はまだその心配はないとしても、いつ状況が変わるか分からない。のんびりはしていられない。
「それでは、失礼します」
見送る二体に向かって頭を下げて家を出る。
とその時、歩き出したタリアP55SIは、家の陰に何かが転がっていることに気付いた。
『あれは…?』
それが何なのかすぐに察した彼女は、それへと歩み寄ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる