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新世界の章
成長
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大人になってしまったリリア・ツヴァイを、私は受け入れることにした。
と言うか、受け入れるしかないんだけどさ。
それにあたって私は、リリア・ツヴァイが<成長>したのだと考えることにする。人間は元々<成長>する。人間の体を持つ彼女も、成長したのだと。
それにしたって、何となくの顔つきは近いもののやはり完全に別人なので、違和感はある。
しかも、以前は『データを別の体に移し替えたらそれはもう彼女じゃない』なんて思ってたけど、今のこの彼女を見てたら、姿は違ってても『彼女じゃない』なんて思えなかった。だって彼女の根源は、私と一緒にあるんだから。
姿が違うのも遠くないうちに慣れるんじゃないかな。
という訳でそれはもういいとして。
「リルフィーナにも迷惑掛けちゃったみたいだね。ありがとう」
部屋の隅で控えているリルフィーナに向かって声を掛ける。でも彼女は、
「いえ。これはマスターの指示でしたので、私はそれに従ったにすぎません」
と、相変わらず四角四面な返事だった。彼女は初期状態で割と生真面目なタイプだったから、この反応も当然なんだろうな。
それに彼女はロボットだから、三千キロ離れたところまでCLS患者を探しに行ったことについても本当に何の苦労も苦痛も感じてないのは分かる。彼女はただ博士に命じられたことを果たしただけに過ぎないし、それが彼女にとっては当然なんだ。
私もそうだったけどさ。
リルフィーナは私達に比べればずっと標準状態に近いコンディションを維持されたメイトギアだった。彼女は、通常のメイトギアの代表として敢えてそうされたんだ。私達との違いを検証する為に。
ある意味ではそれが羨ましくもある。だって彼女は、今の私のように胸が痛んだりすることもないから。リリア・ツヴァイが亡くなったと思ってしまった時に私が感じた苦しみや悲しみは彼女には無縁のものだから。
けれど、その状態に戻りたいかと言われれば、必ずしもそうじゃなかった。リリア・ツヴァイが亡くなったと思ったあとで元気な姿を見せてくれた時に私を包み込んだ安堵感は、ただのロボットだった頃の私にはなかったものだし、苦痛と喜びは表裏一体のものだということも分かるから、それを失うのも何だか違う気がする。
私達はこうなってしまった。その事実を受け入れていきたいと素直に思えた。
「これからどうするつもりかね?。もしまたここにいたいと言うのなら私は別に構わないが」
そう言ってくれた博士には、私は静かに首を横に振った。リリア・ツヴァイと一緒に。
彼女が言う。
「北には行ったから、今度は南だよ。まだまだ行ってないところがあるんだ」
その通りだった。私が言いたいことを彼女が言ってくれた。
「私も、彼女と同じ意見です」
そんな私達に、博士はまたあのニヤリとした笑みを浮かべた。
博士のことを知らない人が見たら何か悪いことでも企んでそうに見えるかもだけど、それはただの博士の<癖>で、特に意味はないんだよね。
と言うか、受け入れるしかないんだけどさ。
それにあたって私は、リリア・ツヴァイが<成長>したのだと考えることにする。人間は元々<成長>する。人間の体を持つ彼女も、成長したのだと。
それにしたって、何となくの顔つきは近いもののやはり完全に別人なので、違和感はある。
しかも、以前は『データを別の体に移し替えたらそれはもう彼女じゃない』なんて思ってたけど、今のこの彼女を見てたら、姿は違ってても『彼女じゃない』なんて思えなかった。だって彼女の根源は、私と一緒にあるんだから。
姿が違うのも遠くないうちに慣れるんじゃないかな。
という訳でそれはもういいとして。
「リルフィーナにも迷惑掛けちゃったみたいだね。ありがとう」
部屋の隅で控えているリルフィーナに向かって声を掛ける。でも彼女は、
「いえ。これはマスターの指示でしたので、私はそれに従ったにすぎません」
と、相変わらず四角四面な返事だった。彼女は初期状態で割と生真面目なタイプだったから、この反応も当然なんだろうな。
それに彼女はロボットだから、三千キロ離れたところまでCLS患者を探しに行ったことについても本当に何の苦労も苦痛も感じてないのは分かる。彼女はただ博士に命じられたことを果たしただけに過ぎないし、それが彼女にとっては当然なんだ。
私もそうだったけどさ。
リルフィーナは私達に比べればずっと標準状態に近いコンディションを維持されたメイトギアだった。彼女は、通常のメイトギアの代表として敢えてそうされたんだ。私達との違いを検証する為に。
ある意味ではそれが羨ましくもある。だって彼女は、今の私のように胸が痛んだりすることもないから。リリア・ツヴァイが亡くなったと思ってしまった時に私が感じた苦しみや悲しみは彼女には無縁のものだから。
けれど、その状態に戻りたいかと言われれば、必ずしもそうじゃなかった。リリア・ツヴァイが亡くなったと思ったあとで元気な姿を見せてくれた時に私を包み込んだ安堵感は、ただのロボットだった頃の私にはなかったものだし、苦痛と喜びは表裏一体のものだということも分かるから、それを失うのも何だか違う気がする。
私達はこうなってしまった。その事実を受け入れていきたいと素直に思えた。
「これからどうするつもりかね?。もしまたここにいたいと言うのなら私は別に構わないが」
そう言ってくれた博士には、私は静かに首を横に振った。リリア・ツヴァイと一緒に。
彼女が言う。
「北には行ったから、今度は南だよ。まだまだ行ってないところがあるんだ」
その通りだった。私が言いたいことを彼女が言ってくれた。
「私も、彼女と同じ意見です」
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