あなたのことは一度だってお父さんだと思ったことなんてない

京衛武百十

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私は、ウルイの子が

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『いい加減、私から襲うぞ、もう……!』

女性であるイティラがそんな風に思ってしまうほど、ウルイはそういう部分では奥手すぎるくらいに奥手だった。

しかも、ウルイとしては気遣っているつもりなのだ。

『俺の立場で彼女を<女>と見做して接するのは、卑怯ではないのか……?』

幼い頃から彼女を<保護>してきた自分がその恩を盾に迫れば、イティラは拒めないだろう。それが分かるからこそ、そんなことはおくびにも出すまいと思っていた。

いたのだが、どうやら少々行き過ぎてしまったようだ。

イティラはもう、自分で自分のことが決められるまでになっていた。

ここでは、<就学>している子供の方が圧倒的に少ない。しかも社会の仕組み自体がそれほど複雑でもなくて、十二~三歳くらいにもなれば、基本的なこともほぼ分かってしまう。

だから十五くらいで十分に社会の一員として必要なことは身に付くのだ。

ゆえに、その辺りで実際に十分な能力が身に付いていると判断されれば<成人>として認められる。

二十どころか三十になっても、十分に大人になれた自覚も得られないことさえ珍しくないほどに複雑で覚えなければいけないあれこれが多すぎる社会とは、根本的に違うのだとも言えるだろう。

ましてや、獣ならほんの数年で<成体>となり子を生すことだってできてしまう。

むしろ人間の方が異様なくらい成長が遅いと言えるのではないか?

ただそれも、それぞれが生きる環境に応じて変わることの方が合理的とも言えるだろうから、

『人間も獣に合わせればいい』

という話では決してない。複雑な社会で責任を負えるようになるには時間が必要になるというのも事実だろう。

まあ、それは余談であるものの、今のイティラであれば成人と認めるのは決して非合理ではないと思われる。

彼女には、<大人として生きられる能力>がすでに備わっている。

その事実を認めないのは、逆に尊厳を蔑ろにしていることにもなりかねない。

彼女を傷付けまいとして、かえって傷付けてしまうことにもなるかもしれない。

もっとも、イティラ自身、そんなことで黙って傷付けられるほど、自分で自分のことも決められないわけじゃないが。

もう、彼女は自分自身に対して責任を負えるようになっているのだ。

ウルイと子を生しても、ちゃんと育てていく覚悟もある。子供とどう接すればいいのか、すでに分かってる。キトゥハやウルイにしてもらったようにすればいいのだと分かっている。

子供を、<自分とは別の人格を持った他者>として扱うこともできる自信もある。

その上で、

『私は、ウルイの子が産みたいんだ……!』

そうも思っているのだった。

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