あなたのことは一度だってお父さんだと思ったことなんてない

京衛武百十

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思いがけぬ形

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人間も獣人も、感情が昂ぶってしまうと自分では抑えられなくなることがあるのは同じだった。

そういう時にどうすればいいのかは、ウルイもあまりよく分かっていなかった。

ただ、ウルイがキトゥハのところにいた頃、どういう理由だったかは分からないもののやはりメィニアが感情を昂ぶらせて、抑えが利かなくなってしまったことがあって、その時、キトゥハがメィニアを抱き締めて落ち着かせたことがあったのだ。

もっともそれは、あくまで、親子であったからというのが大きいだろう。ただ抱き締めれば上手くいくというものではない。

が、今回、ウルイは思わずその時のキトゥハの真似をしてしまった。

すると、

「え……!? え? えぇ……っ!?」

イティラの全身がカーッと熱を帯びていく。

それと比例するかのように、イティラの感情が収まっていく。いや、正確には、

『ショックでそれどころではなくなった』

という形だろうが。

見た目には、キトゥハがメィニアを抱き締めたのと同じようにも思えるが、実はそれがもたらす<効果>はまったく別のものだった。キトゥハのそれは、

『親として子の感情を受け止め、落ち着かせる』

ものだったのに対して、イティラにとってウルイのそれは、

『ショック療法と呼ばれるものに近い』

やり方だったに違いない。

けれど、思いがけぬ形だったとは言え、イティラにとっては望んでいたことでもあった。他の相手にそんなことをされたら、たとえそれがキトゥハであったとしても咄嗟にぶん殴ってしまっていたかもしれない。

でも……

「なんだよ、どうして急にこんなの……! ずるいよ……! ずるいよウルイ……!」

イティラ自身、頭が混乱してしまって上手く言葉にできなかった。

代わりに、ウルイの体に腕を回して、抱き締めた。決して大人の男としては特別大きいわけでもないはずなのに、それでもイティラよりはずっと大きくて彼女の腕だとやっと自分の指が辛うじて届くくらいの彼の存在感に、彼女は包まれていた。

『初めてウルイが抱き締めてくれたのに……なんでこんな……』

正直なところ、もっといい雰囲気の中でこうして抱き締めてほしかった。そうして甘い声で『愛してる』と囁いてほしかった。その意味では不満しかない。けれど、それでも、

『ああ……やっぱり私、ウルイのことが好きなんだ』

改めて実感させられる。

そんなイティラに、ウルイが言う。

「すまん……他にどうすればいいのか分からなかった……ただ、イティラにも分かってほしかったんだ。キトゥハが今の様子を見たらどう思うかってのを……

キトゥハは決して<お人よし>じゃない……そんな彼があんな風に言うのは、たぶん、本当に人間に打ち据えられた程度のことでああなったんじゃないってのを、キトゥハ自身が感じてるんだと思う……

なのにイティラが人間を憎んだりするのを、キトゥハが喜ぶはずがない……」

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