あなたのことは一度だってお父さんだと思ったことなんてない

京衛武百十

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最後まで一緒だ

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正直なところ、現状を打開する決め手はまったくなかった。向こうの攻撃も凌げているものの、こちらの攻撃も届かない。となれば、時間が経つほどにこちらが不利になる。

何しろ、兵士達の動きが明らかに鈍ってきているのだ。

こういう時のために厳しい鍛錬を積んできてはいるものの、決して兵士としての力が不足しているわけではないものの、なにしろ相手が悪い。

そんなことを考えているクヴォルオ自身、体が悲鳴を上げ始めていた。

全身の筋肉が空気を求めて喘いでいるのが分かる。その状態からでもなお力を発揮できるように、狂気じみた鍛錬で自分を追い込んできたものの、それでも、

『まだ届かないのか……!?』

と思う。やはり、先の<殲滅戦>で討ち漏らしたことが悔やまれる。

<先の殲滅戦>

それは、キトゥハが言っていた、

『西の獣人の集落が人間の軍隊に壊滅させられた』

一件のことである。

国として万全の準備をし、『たとえどのような犠牲を出そうと』も、確実に王国に仇成す者達を一人残さず殲滅するはずだった。

それにより、この時点でのリーダーと目されていた獣人については討ち取ることができた。その部下とされる者達もろとも。

おそらく、その者達とは直接の面識もなく、そのような者達が匿われていたことさえ知らなかったであろう幼い獣人の子供達さえ何人も犠牲にしつつ。

いかに王国のためとは言え、<非道>との誹りを受けるなら甘んじて受ける覚悟もあった。にも拘らず、よりにもよって、リーダーの息子でありいずれは次のリーダーになるであろうと思われていたカシィフスを取り逃がしたことは、悔やんでも悔やみきれない。

だからその失態をここで購うと心に決めていた。

だが、やはり、万全の準備をして完全に包囲し、個の力ではどうにもできないほどの物量によって押し潰す形でなければ、このレベルの獣人を倒すことは適わないと、改めて思い知らされる。

しかし、泣き言を口にするわけにはいかない。

加えて、獣人といえど、ミスはする。こちらも粘りに粘ってカシィフスのミスを待つというのが、望みうる唯一の可能性か。

そして、自分達がもし倒されれば、王子はそれこそ容赦なく矢の雨を降らせるだろう。それで仕留められるかどうかは、分からないが……



クヴォルオがそうして悲壮な覚悟を決めていた一方、ウルイは、自分達が生き延びる方法を探っていた。探ってはいたが……

正直、この獣人の青年に挑んだことは失敗だったとも感じてはいたものの、しかし、あの時点で逃げようとしていれば、<仲間>と見做されて、崖上から矢を放たれていた可能性も高い。何しろイティラは確かに獣人なのだ。人間達とすれば<敵>と見做す方がリスクも少ないだろう。

たとえ違っていても、獣人の小娘一人の犠牲など、人間にとっては取るに足らないものだろうし。

『イティラ……すまない……! もう駄目かもしれないが、最後まで一緒だ……!』

ついそんなことを、頭によぎらせてしまっていたのだった。

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