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命を奪うもの
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鼠色の毛皮に覆われていはいてもそのシルエットは人間のそれだった少女が美しい真っ白な<虎>に変じたことは、クヴォルオも驚かされた。
しかし、彼はイティラとはこの場で出会ったばかり。彼女のことをよく知らなかったがゆえに、単に、<奥の手>を出してきたのだと捉えることもできた。
むしろ、
『半端者の獣人でしかない』
ことを知っていたカシィフスや、これまでずっと彼女と一緒に暮らしていてそのような変化を見せてこなかったことを知っているウルイの方が驚かされてしまっていただろう。
だが、だからこそ、この場で一番、クヴォルオが冷静だった。イティラが作ってくれた僅かな<隙>に、<好機>に、この時点で自らが出せる全てを放った。出し惜しみは一切しない。<次の機会>などあるとは思えなかったからだ。
彼の爪先から槍の切っ先まで、何一つ無駄なく一切合財の力が合わさり、空間そのものを穿つかのように突き出される。
そして、イティラとウルイが作った<好機>を<勝機>へと昇華した。
『届いた!!』
その手応えに、クヴォルオの全身が震える。あれほどまで遥かな高みにあった<敵>に、彼の槍が届いたのだ、
「ガッ!? ガァッハ……! ギャァアアアァァァアアァーッッ!!!」
それは、まさに魂さえ引き裂くかのような絶叫だった。命そのものが破裂し、そこに秘められていたエネルギーの全てが弾け飛ぶ<音>であったのだろう。
イティラが喰らい付いていたところから、ほんの指一本分もない僅かに逸れたところから、カシィフスの肉にもぐりこみ、心臓を貫き、脊椎を絶ち、背中から血塗れの槍の切っ先が覗いていた。
「ゲッ! ゲアッッ! ッガァアアァァァァ……!」
<赤狼>に変化したカシィフスの口から漏れるそれは、もう、意味のあるものではなかった。何とか生き延びようと、命を繋ごうと、肉体が必死で空気を求める際に喉が出したものでしかなかった。
いかに獣人といえど、心臓や脊髄を破壊されては生きられない。ここに生きる獣人はあくまでそういう生き物であり種であって、
<伝説上の不死の怪物>
ではないのだ。
人間の軍による<殲滅戦>を生き延び、その姿勢ややり方には難があったかもしれないものの、獣人として自らの種を第一と考えてそのための世界を作り上げようと本気で自らの命を燃やしたカシィフスの体が、<赤い獣>の体が、ビクビクと痙攣を始める。
もう、意味のある動きをできないのだ。
脳から送られてくるデタラメな信号に反応しているだけでしかない。
それでも、イティラは牙を離さなかった。油断はしなかった。カシィフスの体から力が抜けて牙が食い込んでいくままに、渾身の力を振り絞ってとどめを刺す。
彼の命の終わりを、確実なものとするために。
命の終わりを、見届けるために。
それが、<命を奪うもの>としての責任と務めなのだから。
しかし、彼はイティラとはこの場で出会ったばかり。彼女のことをよく知らなかったがゆえに、単に、<奥の手>を出してきたのだと捉えることもできた。
むしろ、
『半端者の獣人でしかない』
ことを知っていたカシィフスや、これまでずっと彼女と一緒に暮らしていてそのような変化を見せてこなかったことを知っているウルイの方が驚かされてしまっていただろう。
だが、だからこそ、この場で一番、クヴォルオが冷静だった。イティラが作ってくれた僅かな<隙>に、<好機>に、この時点で自らが出せる全てを放った。出し惜しみは一切しない。<次の機会>などあるとは思えなかったからだ。
彼の爪先から槍の切っ先まで、何一つ無駄なく一切合財の力が合わさり、空間そのものを穿つかのように突き出される。
そして、イティラとウルイが作った<好機>を<勝機>へと昇華した。
『届いた!!』
その手応えに、クヴォルオの全身が震える。あれほどまで遥かな高みにあった<敵>に、彼の槍が届いたのだ、
「ガッ!? ガァッハ……! ギャァアアアァァァアアァーッッ!!!」
それは、まさに魂さえ引き裂くかのような絶叫だった。命そのものが破裂し、そこに秘められていたエネルギーの全てが弾け飛ぶ<音>であったのだろう。
イティラが喰らい付いていたところから、ほんの指一本分もない僅かに逸れたところから、カシィフスの肉にもぐりこみ、心臓を貫き、脊椎を絶ち、背中から血塗れの槍の切っ先が覗いていた。
「ゲッ! ゲアッッ! ッガァアアァァァァ……!」
<赤狼>に変化したカシィフスの口から漏れるそれは、もう、意味のあるものではなかった。何とか生き延びようと、命を繋ごうと、肉体が必死で空気を求める際に喉が出したものでしかなかった。
いかに獣人といえど、心臓や脊髄を破壊されては生きられない。ここに生きる獣人はあくまでそういう生き物であり種であって、
<伝説上の不死の怪物>
ではないのだ。
人間の軍による<殲滅戦>を生き延び、その姿勢ややり方には難があったかもしれないものの、獣人として自らの種を第一と考えてそのための世界を作り上げようと本気で自らの命を燃やしたカシィフスの体が、<赤い獣>の体が、ビクビクと痙攣を始める。
もう、意味のある動きをできないのだ。
脳から送られてくるデタラメな信号に反応しているだけでしかない。
それでも、イティラは牙を離さなかった。油断はしなかった。カシィフスの体から力が抜けて牙が食い込んでいくままに、渾身の力を振り絞ってとどめを刺す。
彼の命の終わりを、確実なものとするために。
命の終わりを、見届けるために。
それが、<命を奪うもの>としての責任と務めなのだから。
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